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Monthly FACE 〜極める人々〜

浅野孝已さん(ギタリスト)

Profile

1951年生まれ、東京都出身。「ガンダーラ」「モンキー・マジック」「銀河鉄道999」などのヒット曲で知られるゴダイゴのほかにも、複数のバンドに参加。還暦を迎えた現在も精力的な活動をしており、7月3日は「TAGC TOKYO」、13日は「the M」、15日は「Forever50」として、それぞれ都内でライブを開く。詳細は下記HPにて。

Asano Guitar House

還暦を迎え……、活動の原動力

「モンキー・マジック」「銀河鉄道999」などのヒット曲で知られるゴダイゴのギタリスト、浅野孝已さん。高校生だった16歳当時にプロデビューを果たし、20代前半には「ゴダイゴ」に加入するなど、当時から屈指のギタリストとして活躍しています。昨年には還暦を迎えましたが、7月3日は「TAGC TOKYO」、13日は「the M」、15日は「Forever50」としてライブを開くなど、現在も精力的に活動中。その原動力について、次のように話します。

イメージ 「僕がギターを弾き始めて、今年で50年。『ゴダイゴ』としての活動のほかにも、さまざまなミュージシャンと異なるジャンルの楽曲を演奏することで、たくさんの表現を楽しんでいます。お客さまにいろいろな自分を見てほしいですし、自分自身もそれを楽しんでいるんです。 音楽活動は、生きていくことと似ています。若い頃はとにかく肉ばかり食べていた人が年を取るのとともに野菜を好きになっていくように、自分が年を重ねていくことで好きな曲もジャンルも変わりますし、それによって弾き方や出てくる音というのが変わっていくんです。こうじゃないといけない、というものはないので、自分がその時々にいいと思える音を表現していきたいと考えています」

“いろいろな自分”を体現するように、いくつものバンドに参加している浅野さん。この記事が公開される7月にも複数のライブがありますが、特に注目なのは、伝説のバンドとして日本ロック界にその名を残す「the M」のライブ。ゴダイゴに加入する前に浅野さんが在籍していたバンドで、昨年約40年ぶりにオリジナルメンバーによる再結成を果たしました。

「20代の頃に活動していたメンバーと、この歳になって再び音楽を楽しめるというのは感慨深いものがあります。13日に原宿クロコダイルで開くライブの入場者には、今年の3月に行った『the M』のライブCDをリリースに先駆けて先行プレゼントするのですが、CDのジャケットではメンバーの20代の頃の写真と現在の写真を見比べられるようになっているので、是非注目してみてください」

「練習は嘘をつかない」

イメージ 浅野さんがギターを弾き始めたのは、11歳の頃。日本に「ロック」と呼ばれる音楽が入ってきた頃で、日本の音楽業界がどんどん活性化していった時代でした。

「ラジオから流れてきた『ビートルズ』『ローリングストーンズ』『ベンチャーズ』……、衝撃的でした。当時はロカビリーや映画音楽しかなかったのですが、いまいちピンとこなかったんです。そこに、エレキギターやドラムの『ガンっ!』とくる迫力の音楽がやってきて、一気に心を奪われました。『これしかない』と思ったんです。それからはもう、練習の日々ですね。 12歳の時にはギター教室の一年コースに通ったんですが、半年もしない内にテキストの内容を全部終わらせるほどにハマってしまって。まあ、その分、学校の勉強はやらなかったんですけどね。とにかく、ギターを弾くのが楽しかった。ビートルズの曲に合わせて、一日4・5時間は弾いていました。ただ、それを職業にしよう、という意識はなく、音楽やバンド活動が好きで、ステージに立ちたい一心で一生懸命練習していただけなんです。それで、気付いた時にはプロになっていました」

それからは、学校から通学バッグとギターを片手に電車を乗り継ぎ、クラブやディスコで演奏する毎日。上達したい一心で、とにかくがむしゃらに演奏していた浅野さんを支えていたのは「練習は嘘をつかない」という信念。その後の活躍は、だれもが知る通りです。

新しい”活動の形”と”挑戦”

華々しいステージで活躍する浅野さんですが、近年はその距離を身近に感じられる形での活動も行っています。その一つは、浅野さんが住む小平市内での「コミュニティーライブ」。

「花小金井にある『cafe TooL Box』というお店とご縁があり、年4回のペースでライブを開いています。地元のミュージシャンと演奏をしているのですが、自分の住む町で音楽を楽しめるのはうれしいことです。」

イメージ そして、もう一つは北九州市にある「山崎リゾートクリニック」が運営する、デイケアサービスセンターでの「音楽クリニック」。同院長と浅野さんが“親父バンド”を組んでいる縁から始めたもので、今年で3年目を迎えるのですが、その活動の中で“音楽の力”を実感したと話します。

「70代〜100歳くらいの方の前で僕が演奏をするのですが、昔の曲を弾くと涙を流す方がいて。その曲を聴いていた当時の記憶が、曲によって甦るそうなんです。身体的なものですと、手足が動きにくくなってしまった方が手拍子や足踏みをすることで、徐々に症状が良くなるケースもあると聞いています。『毎月のイベントが楽しみ』と生活の糧にしてくださっている人もいて、音楽を通じてたくさんの人たちと触れ合うことができるのだと、改めて実感しました。皆さんと一緒に歌を歌わせていただいたり、僕が誕生日の月にはハッピーバースデーの曲をプレゼントしていただいたり……、うれしいですね。たくさんの気持ちのお返しをいただいています」

ギタリストとしての長い道のりの中で見つけた、さまざまな音楽活動の形。それを実現できているのは、音楽という一つの道を追い続けたからこそ。一つのことを諦めずに続けていく大切さを語ります。

「自分の目指すものを絶対に諦めないでいれば、輝く時は絶対にやってくるんです。でも、そこに行くまでに諦めてやめてしまう人が多い。早咲きの人もいれば、遅咲きの人もいる。そこが本当に諦める時なのか、まずは疑ってみてください。そして、常に何かに挑戦し続けることが大切です。できることが多くなればなるほど、楽しみは増えていきますから。僕も最近、演歌の作曲にトライしてみたんですよ。日々挑戦ですね」

年齢を重ね、挑戦する姿勢を絶やさぬことで進化し続けていく浅野さん。これからもたくさんの楽曲をその指先から生み出し、音楽の力で人々を魅了していきます。

(取材・文/石川裕二)


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