第15回 JIA関東甲信越支部 大学院修士設計展2017

第15回 JIA関東甲信越支部 大学院修士設計展2017

名称

第15回 JIA関東甲信越支部 大学院修士設計展2017

日程

作品展示:
2017年3月21日(火)〜3月23日(木)

公開審査・講評会:
2017年3月22日(水)

会場 芝浦工業大学 芝浦キャンパス8階
審査員 長谷川 逸子(長谷川逸子・建築計画工房)
実行委員

実行委員長
佐藤 光彦(日本大学教授)

実行委員
谷口 大造(芝浦工業大学教授)
赤松 佳珠子(法政大学准教授)
今村 創平(千葉工業大学准教授)
佐藤 誠司(バハティ一級建築士事務所)
鈴木 弘樹(千葉大学准教授)
安原 幹(東京理科大学准教授)

主催

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 大学院修士設計展実行委員会

協賛

株式会社総合資格/総合資格学院

ハイレベルな作品が揃う大学院修士設計展

日本建築家協会 関東甲信越支部が主催する「JIA関東甲信越支部 大学院修士設計展2017」が3月21日から3月23日の3日間、芝浦工業大学(芝浦キャンパス)にて開催されました。関東甲信越エリアの各大学院から選抜された作品が出展される本設計展。綿密なリサーチに基づいた計画や高い完成度の模型など、濃密な修士課程を過ごしたことが推し量れる42作品が会場に並びました。

長谷川 逸子氏の巡回審査・出展者全員によるプレゼンテーション

22日(水)に行われた審査会は、審査員の長谷川氏が一次審査の前に会場入りし、全作品を巡回審査しました。一つひとつのポートフォリオや模型に注視しながら、時には実行委員と所感を述べ合い、慎重に審査されている様子でした。また、高名な建築家の審査に立ち会えるとあって、観覧者も審査員たちと共に巡回する光景が印象的でした。
審査員:長谷川 逸子氏
午後からは一次審査が開始、出展者全員によるプレゼンテーションが行われました。持ち時間の2分間という限られた時間の中で、計画の特色が伝わるよう工夫した発表が続きました。
実行委員長:佐藤 光彦氏
プレゼンテーション後、別室で一次審査通過作品を選定しました。
二次審査に進んだ作品は以下の通り。
■二次審査進出作品
  • No.09 東京芸術大学大学院 岩本 早代さん
    Terrain Vague Network-都市のリダンダンシーと建築のふるまいについて-
  • No.10 早稲田大学大学院 内田 久美子さん
    大地を編む
  • No.17 前橋工科大学大学院 佐藤 春花さん
    空間における闇の演出手法に関する提案 −ロラン・バルト『表徴の帝国』と谷崎潤一郎『陰翳礼讃』を通しての空間試行−
  • No.25 明治大学大学院 陳 樂豐さん
    Reincarnation in Retrogressive Architecture
  • No.32 関東学院大学大学院 長尾 将孝さん
    『組木』を用いた新たな木質建築の提案-横浜市中区黄金町を対象として-
  • No.33 東京工業大学大学院 新居 壮真さん
    風のマンダラ都市-ジャイプルの伝統的建築を参照した立体マンダラ建築の考案
  • No.34 武蔵野美術大学大学院 野口 友里恵さん
    穴を綴る-生業と風土の関係性からまちを再考する-
  • No.36 法政大学大学院 藤田 涼さん
    神田を結わく建築-異化作用を用いた中小ビル連結の試案-
  • No.37 早稲田大学大学院 藤原 麻実さん
    五十年の継ぎ手-相馬野馬追を通じた集団帰省の提案-

二次審査通過9作品によるプレゼンテーション

二次審査は、8分の出展者によるプレゼンテーションと、4分の審査員・実行委員からの質疑応答で進行。地域や社会の問題と自身の体験を交え見出した課題の提示、膨大なリサーチに基づき作成された計画案など、修士学生ならではのハイレベルな研究発表が続きました。また、計画の着眼点や必要性、利用者のベネフィットなどプロ目線の質問も投げかけられる中、自信を持って回答する姿が多く見受けられました。
すべての発表が終わり、審査員による審議が行われ、各賞が決定。長谷川氏は、最優秀賞1作品、優秀賞2作品、奨励賞1作品を選出し、同フロアのホワイエにて各賞を発表しました。
見事、最優秀賞を勝ち取ったのは、「大地を編む」内田 久美子さん(早稲田大学)の作品。長谷川氏は、「生活に結び付けるように、空気・水・風など組み込みながら手法を産み出すことは、建築的な行為だと思います。単にコンクリートの崖にしてしまわないで、耕地や建物に結びつけ周辺一帯を計画した方向性に斬新さを感じ評価しました」と述べました。
他結果は以下の通りです。
最優秀賞
  • 内田 久美子さん (早稲田大学大学院)
    大地を編む

計画地は東京都の西日暮里駅付近。豊かな生活圏を生成するために、道具のように用いることができる柔軟な土木(水抜きや耕地になる擁壁、武蔵野台地を支える道など)と、周辺に住宅やランドスケープセンターなどを計画。擁壁でのガーデニングや散策する「所作」を通じて、人間と大地に新たな接点を生み出そうとした作品。

内田 久美子さん

内田 久美子さん

大地を編む
大地を編む
優秀賞
  • 岩本 早代さん(東京芸術大学大学院)
    Terrain Vague Network-都市のリダンダンシーと建築のふるまいについて-

空地や建物の間など空虚でありながらも不思議な魅力を持った空間-Terrain Vague-。このTerrain Vagueを保持しつつ、小さな建築(空地を結ぶ橋)や敷地計画などに建築家が介在することで、都市に豊かさをもたらすことができるのではないかという提案。計画地は東京23区内で複数設定。

岩本 早代さん

岩本 早代さん

Terrain Vague Network-都市のリダンダンシーと建築のふるまいについて-
Terrain Vague Network-都市のリダンダンシーと建築のふるまいについて-
優秀賞
  • 藤田 涼さん(法政大学大学院)
    神田を結わく建築-異化作用を用いた中小ビル連結の試案-

敷地は下町として親しまれてきた東京都千代田区神田。中小ビルが密集するこの土地では、現在住民同士の関係性が希薄となっているとともに、空室問題が深刻化している。本計画において、隣り合うビルを連結し、生活する人々のつながりを生み出し、各々のビルそのものに新たな価値と魅力を創出する。

藤田 涼さん

藤田 涼さん

神田を結わく建築-異化作用を用いた中小ビル連結の試案-
神田を結わく建築-異化作用を用いた中小ビル連結の試案-
奨励賞
  • 藤原 麻実さん(早稲田大学大学院)
    五十年の継ぎ手-相馬野馬追を通じた集団帰省の提案-
藤原 麻実さん

藤原 麻実さん

五十年の継ぎ手-相馬野馬追を通じた集団帰省の提案-
五十年の継ぎ手-相馬野馬追を通じた集団帰省の提案-

大学院修士設計展2017総評

長谷川氏は、総評として「各大学から推奨されて出展されている作品だけあって、レベルの高い作品が多く、それらに賞をつけるということは大変だったというのが率直な感想です。そんな中、最優秀賞に『大地を編む』を選ばせてもらいました。建築家が土木分野に立ち入って、さらに都市計画に携わることの難しさは重々承知ですが、その新しい姿勢も含め評価させてもらいました」と述べました。また、「海外の建築展に参加させてもらうことも多いのですが、日本の建築家の『模型』は器用に作られており、本当にレベルが高いと毎回感じます。今回の修士設計展でもその片鱗を見させてもらいました。『模型』は一例ですが、何か一つ秀でた才能を持っていると将来きっと役に立つはずです、今後も精進してください」と声援を送られました。

続いて、総合資格学院 営業部部長の安島 才雄は「修士設計展はレベルの高く、プレゼンテーションからも高い志が伝わってきました。ここにいる皆さんがこれからの建築業界を支えられていくことと実感しています。また、そういった皆さんを今後も総合資格学院が支えてまいります」と会場の出展者全員に向けて所信を述べました。