一級建築士学科試験 総評

1級建築士学科試験「解答・解説会」ダイジェスト動画

総合資格学院では、令和3年度 1級建築士学科試験の特徴やポイントがよくわかる『令和3年度 1級建築士 学科試験 「解答・解説会」』を無料開催!
こちらでは、その「解答・解説会」のダイジェストをご覧いただけます!

総論

令和3年度の1級建築士学科試験は、難度の高かった令和2年度の試験と比較して、さらに難しくなりました。

特に、学科T(計画)は、初出題が増え、過去問の学習だけでは対応できない内容でした。また、学科X(施工)についても、初出題が若干増え、昨年度と比較して難度が高くなりました。一方、令和2年度の試験で特に難しかった学科U(環境・設備)は例年並みの難易度となり、学科V(法規)や学科W(構造)も同様に例年通りの難易度でした。

初出題としては、法改正や新技術に関する内容のほか、近年の社会情勢を反映して、省エネルギーや環境負荷低減、災害対策に関する内容が見られました。今後の試験については、過去に出題された内容の正誤を正しく判断できることはもちろん、こうした新傾向の出題についても、ポイントをおさえた学習を行うことが重要です。

[正答肢が初出題の問題数]

  学科T
(計画)
学科U
(環境・
設備)
学科V
(法規)
学科W
(構造)
学科X
(施工)
合計
令和
3年度
14問
/20問中
8問
/20問中
9問
/30問中
6問
/30問中
13問
/25問中
50問
/125問中
令和
2年度
8問
/20問中
10問
/20問中
5問
/30問中
7問
/30問中
11問
/25問中
41問
/125問中

【学科T(計画)】

建築士・建築作品・都市事例を含む問題が計7問出題

建築計画10問(うち、数値に関する問題3問)、都市計画2問(うち、「海外の都市の事例」1問、「都市開発やまちづくりの事例」1問)、建築士・作品5問、設計・監理業務等1問、マネジメント用語1問、建築積算1問が出題されました。
令和3年度の「計画」では、新しいキーワードも多く、社会情勢が色濃く反映された出題構成でした。

官民連携型事業に関する問題が出題

No.10では、施設を計画・運営する際の官民連携等に関する用語の問題が出題され、制度や組織体制など、近年の官民連携事業についての知識が必要でした。

自然災害と建築計画に関する問題が出題

No.13では「自然災害からの復興支援」に関する問題、No.12-4では「日本の伝統的な水防のための集落形態」に関する問題が出題されました。近年の自然災害を強く意識した出題といえます。

歴史的文化価値や伝統技術の継承に関する問題が出題

No.17では「歴史的建築物の改修や保存の事例」について出題され、No.1-4では「重要伝統的建造物群保存地区における修景事業」について出題されました。歴史的文化価値や伝統技術の継承について知識が求められた出題でした。

<初出題の主なキーワード>

No.1-1 SDGs、No.1-2 QOL、No.1-4 修景事業、No.2-1 カンピドリオ広場、No.2-2 ミレトス、No.4-1 インクルーシブ教育システム、No.5-3 現し仕上げ、No.6-1 エドワード・ホール、No.6-2 ロバート・ソマー、テリトリー(なわばり)、No.6-3H.メルテンス、No.6-4 オスカー・ニューマン、ディフェンシブルスペース、No.10-1 指定管理者制度、No.10-2 街なみ環境整備事業、No.10-3 TMO、No.10-4 サウンディング型市場調査、No.11-4 家守事業者、No.12-1 卯建、No.12-2 築地塀、No.12-4 輪中、No.13-1 防災集団移転促進事業、No.13-2 みなし仮設住宅、No.13-3 陸前高田のみんなの家、No.13-4 グループハウス尼崎、災害公営住宅、No.14-1 TIME’S T・U、No.14-2 アオーレ長岡、No.14-3 太田市美術館・図書館、No.15-1 福岡市立博多小学校、No.15-2 立命館大学大阪いばらきキャンパス、No.15-3 石巻市庁舎、No.15-4 大田区役所本庁舎、No.16-2 小規模多機能型居宅介護施設、No.16-3 個室ユニットケア型特別養護老人ホーム、共同生活室、No.17-3 千葉市美術館、No.17-4 ロームシアター京都、No.19-1 業務経費、No.19-1 特別経費、No.20-1 コンセッション方式、No.20-3 フロントローディング

今後の学習対策

■図を用いて細部や寸法を覚える

令和3年度は、図を用いた問題が2問出題されました。No.2では日本の歴史的な建築物の細部の理解、No.9では傾斜路のバリアフリー基準寸法の理解が求められました。図やイラストを用いて学習を進めることも重要です。

■近年の社会情勢を意識して学習をすすめる

国の施策、近年の気候変動や災害とその対策などの情報を、意識して収集することが重要なポイントです。

【学科U(環境・設備)】

各分野の出題数は環境工学が増加

環境工学11問、建築設備8問、環境・設備融合問題1問が出題されました。

機械換気設備の換気量の数値問題

No.13は「各施設の機械換気設備の換気量」について、簡単な計算を要する数値問題が出題されました。昨今の感染症対策に関する必要換気量を意識して、厚生労働省の指標としての「1人当たり30m³/h」を用いても判断できる問題でした。

照明率に関する問題が1問出題

No.17はすべて「照明率」に関する選択肢で、かなり細かい内容まで出題されました。室指数、器具効率、配光、室内反射率と照明率の関係についての理解が問われた問題でした。

非常用電源やBCPなど災害対策に関連した内容が出題

No.16の「発電設備等」に関する問題の非常用電源としての発電設備や、No.20-3の「企業のBCP」におけるライフラインの確保など、災害対策を意識した社会的な出題が見られました。また、法令や基準の数値を問う選択肢が多く出題されました。

<初出題の主なキーワード>

No.3-1 静止型の全熱交換器、No.5-2 階段を下りる速度、No.5-4 居室内避難における歩行距離、No.7-2 CIE標準曇天空、No.13-1 一般的な事務室の換気量、No.13-2 喫茶店の客席の換気量、No.13-3 劇場の客席の換気量、No.13-4 自走式屋内地下駐車場の換気量、No.14-1 修景用水、No.15-2 公共下水道へ排水する排水温度、No.15-4 即時排水型ビルピット設備、No.16-1 非常電源専用受電設備、No.18-1 パッケージ型自動消火設備、No.19-1 非常用エレベーターの機械室の床面積、No.20-2 「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」に基づく新築住宅の省エネルギー基準

今後の学習対策

■環境工学は用語や現象の正しい理解が重要

令和3年度の環境工学の出題では、基本的な原理・原則を理解していれば解答できる問題が多く見られました。しかし、過去に出題された際と言い回しを変えたり、切り口を変えたりして出題されているため、過去問を丸暗記する学習では対応できない問題も見られました。どんな出題のされ方をしても対応できるように、用語や現象を学習する際には本質をとらえた正しい理解が必要になります。

■建築設備は初出題用語の対策も必要

令和3年度は、昨今の社会的背景をもとに、省エネルギー基準、感染症対策や災害対策などの初出題用語が見られました。今後の試験でも、こうした初出題用語への対策はポイントとなります。また、過去に出題されたことがある内容でも、言いまわしを変えて出題されても正誤の判断ができるように、設備のシステム構成を正確に理解しておく必要があります。

【学科V(法規)】

各分野の出題数:建築基準法21問、関係法令9問

令和2年度はNo.1〜No.20とNo.27が建築基準法、No.21〜No.26とNo.28〜No.30で関係法令が出題されましたが、令和3年度はNo.1〜No.21で建築基準法、No.22〜No.30で関係法令が出題されました。
令和2年度に出題されなかった「地区計画・建築協定」は、選択肢として出題されました。
また、「建築士法」は単独問題として3問、建築基準法・建築士法として1問の計4問が出題されました。

直近の法改正に関する出題

  • ・No.5「一般構造」から、「長屋又は共同住宅の各戸の界壁の適用除外規定」が出題されました。
  • ・No.19「防火地域・準防火地域」では、配置図をもとに、それぞれの地域にまたがる建築物の扱いについて出題されました。
  • ・16-3、No.20-1 近年新設された「田園住居地域」に関する出題がNo.16「用途地域」、No.20「雑則・融合問題」で出題されました。

出題のされ方に特徴があった問題

・No.12「構造強度」
平成29年度、平成30年度、令和元年度に、2級建築士学科試験と同様に出題されていた「木造軸組計算」が1年あけて令和3年度は出題されました。
・No.14「建築基準法融合問題」
「与条件列記式」で「窓その他の開口部を有しない居室の規定」に関して出題されました。
・No.29「建築基準法又は建築士法」
令和2年度に引き続き、「与条件列記式」での建築基準法と建築士法の融合問題が出題されました。

<初出題の主なキーワード>

No.2-2 宅配ボックス設置部分、No.16-2 水素ステーション、No.16-4 産業廃棄物処理施設、No.28-2 請負型規格住宅

今後の学習対策

■基礎力を身につける

条文に出てくる「用語の意味」や「条文の目的」を理解することが法規の学習の基礎となります。法令集を引きながら、この基礎力を身につけましょう。条文の目的・内容をきちんと理解しておくことで、設問の正誤に正しくたどり着くことができます。

■判断力を強化する

条文の規定をそのまま照らし合わせるだけでなく、具体的な手続きや建築物に適合するかしないかの判断力を問う出題が増えています。近年の出題傾向を踏まえた学習対策は今後も必要です。

■文章を読み解く力を養う

過去問、または過去問に近い問題は、言いまわしや数値を変更するなど、出題に工夫が見られます。文章を読み解く力を養うことも基本的、かつ、重要な対策となります。

【学科W(構造)】

各分野における出題数は、ほぼ例年通り

構造力学7問、各種構造20問、建築材料3問が出題されました。

構造力学

10年以上出題がなかった問題が多く出題されました。また、No.6(座屈)やNo.7(振動)が文章問題で出題され、座屈長さや変位応答スペクトルを図で描いて判断できるかがポイントとなりました。

各種構造

例年必ず出題される、木質構造、鉄筋コンクリート構造、鉄骨構造、基礎構造といった構造種別のほかに、「プレストレストコンクリート構造」「壁式鉄筋コンクリート構造」「鉄骨鉄筋コンクリート構造」「免震構造」「制振構造」といった構造種別や「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断・耐震改修」からも出題され、出題範囲は多岐にわたりました。また、No.26「構造計画」やNo.30「非構造部材等の設計用地震力」では、構造設計の実務的な内容や建築設備に関する専門性の高い内容が問われました。

建築材料

過去問を正しく理解していれば正答できる内容でしたが、No.29「鋼材」は強度などについての傾向や規定について、正しく理解した上で、正確に正誤を判断できるかが問われました。

<初出題の主なキーワード>

No.7-3 二次固有周期、No.12-2 機械式定着具、No.22-2 フルプレストレッシングの設計(T種) 、 No.22-3 スターラップ状の曲げ拘束筋、ワイヤーメッシュ、No.23-4 フルウェブ、No.26-1 剛床仮定としない場合の耐力壁の応力分担、No.26-2 P-⊿効果、No.26-4 ピロティ階の独立柱の層崩壊、No.30-1 補強CB造の塀の地震力、No.30-2・No.30-3 水槽・設備機器の地震力、設計用水平震度、No.30-4 エスカレーターの設計用地震力

今後の学習対策

■構造力学:構造力学の基本的な計算手順と公式を確実に習得する

構造力学では、基本的な計算の手順や覚えるべき公式をおさえることが重要です。また、見慣れない形式であっても正解に結びつけられる応用力も身につける必要があります。

■文章問題:過去出題内容を確実に得点するために根拠やイメージをセットにして学習する

例年、必ず出題されている構造種別は、過去出題内容を取りこぼさず、確実に得点する必要があります。過去に出題された内容については、日頃から、丸暗記に頼るのではなく、正答の根拠やイメージをセットにして理解することが必要です。
その他、多岐に及ぶ出題範囲に対応するために、幅広い構造種別の内容を学習しておく必要があります。

【学科X(施工)】

各分野の出題数は例年通り

例年通り、施工計画他・工事管理で4問、各部工事で20問、請負工事で1問が出題されました。

正答肢のうち4割が数値関連

数値関連の正答肢が10問と4割を占めていたため、曖昧な記憶では得点できず、正確な知識をもとに正誤を判断する必要がありました。

過去出題から内容を変えて出題

過去に出題された内容の論点を変えたり、適当な記述として出題された問題を不適当な記述として出題したりと、過去問に変更を加えて出題される例が多く見られました。No.8鉄筋工事の図、No.10コンクリートの計画調合の表は、過去問から見せ方や論点を変えた出題でした。No.11-4棒形振動機の挿入間隔、No.15-2通し柱と胴差との仕口の形状、No.17-1床コンクリートの仕上がりの平坦さの標準値、No.20-2蒸気給気管の勾配は、過去に適当な記述として出題された問題を不適当な記述に変えて出題されました。

図を用いた問題

令和元年度以降から、鉄筋工事は図を用いて出題されています。初めて目にする図に惑わされず、今まで学習してきた知識をもとに冷静に計算できるか否かがポイントでした。

<初出題の主なキーワード>

No.2-3 監理技術者補佐、No.3-1 既製コンクリート杭の仮置き、No.5-4 最小離隔距離、No.6-1 スリット形ストレーナー管、No.7-2 杭の代替の手法、No.10-2 AE減水剤の使用量、No.12-1 工事現場に仮設の製造設備、No.13-2 サブマージアーク溶接、No.14-4 原本相当規格品証明書、No.15-1 ホールダウン専用アンカーボルト、No.16-3 押出法ポリスチレンフォーム断熱材3種bA、No.18-2 野縁及び野縁受けの種類、No.19-3 複層仕上塗材仕上げ(ゆず肌状)、No.19-4 押出成形セメント板の目地幅、No.20-1 PF管の梁の横断、No.22-4 締付け方式のアンカー、No.23-3 かぶせ工法の小ねじの間隔、No.24-1 歩掛り

今後の学習対策

■施工の原則(手順と役割)を理解

学科X(施工)は、まず施工の流れを理解することが重要です。さらに、各施工段階における施工上のポイントの理解も必要となります。細部の学習をする前に、工事の流れを大きく捉えて各段階のポイントをおさえるようにしましょう。

■専門用語の理解 

学科X(施工)には専門用語が多くあり、その用語を知らないと解答できない問題も出題されます。専門用語は、関連する図・写真・現場映像などと結びつけて学習することが重要です。また、近年の試験では多様な範囲からの出題が増えているため、周辺関連も意識した学習を行いましょう。

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