令和元年度 一級建築士設計製図試験(12/8実施) 総評

1級建築士設計製図の課題

令和元年度(12月8日実施) 設計製図試験のポイントを映像で解説

本映像では、12/8(日)に行われた令和元年度 1級建築士設計製図試験(課題名:「美術館の分館」)を当学院がいち早く分析し、試験の特徴や採点のポイントとなる部分についてわかりやすく解説いたします。

1.令和元年度課題(12月8日実施試験分)の概要

2.12月8日実施試験の出題傾向

12月8日に実施された設計製図試験は、10月13日に実施された試験で問われた要素を踏襲しつつ、さらに難度の上がった試験でした。

10月13日の試験で特徴としてあげられた、課題条件の一部(計画の要点等の設問)が課題文の左半分に収まりきらず右半分に記載されていた点や、要点記述におけるイメージ図の記入が「必須」とされていた点は、12月8日の試験においても同様でした。

課題文の文章量は、10月13日の試験と比べ、さらに増加しており、課題条件もより複雑になっていたため、受験生は課題の読み取りからエスキスまでに多くの時間を費やすことになったと推察されます。

3.出題の特徴(3つのポイント)

12月8日実施試験の課題を攻略するポイントとして、10月13日実施試験から大きく条件変更された下記の3点があげられます。

  • 【1.周辺環境に配慮した計画】分館と本館との来館者の動線を適切に計画
  • 【2.利用形態に応じたゾーニング】教育・普及部門の展示関連諸室とアトリエ関連諸室
  • 【3.建築基準法令遵守の計画】道路斜線、延焼のおそれのある部分、防火区画

(1)周辺環境に配慮した計画

  10月13日実施試験 12月8日実施試験
本館との位置関係 分館敷地の長辺が隣接 分館敷地の短辺が隣接
接道条件 分館敷地の短辺が一面接道 分館敷地の長辺が一面接道
地上の広場等
(テラス除く)
なし 分館出口と本館敷地までの経路に分館出口前のオープンスペース(分館の敷地内は30m2以上)
計画の要点等 分館と本館との来館者の動線について考慮したこと 分館出口前のオープンスペースについて、設計条件を踏まえて工夫したこと

上の表にあげた要素は、計画の際に本館との関係性を考慮するうえで、10月13日実施試験から変更された主な条件です。 10月13日実施試験では、分館の北側に道路があり、東側に本館という位置関係でしたが、今回の試験では分館の北側が本館、東側に道路という関係になり、敷地の長辺が一面接道となりました。
接道面が敷地の長辺側になると、駐車場やトラックヤードなどの外部施設により、建物は奥行きが浅く、間口が広い細長い形状になりやすく、これがエスキスの難度を大きく上げる要因の一つとなりました。

また、本年度試験の最重要テーマともいえる『本館との関係性』は、10月13日実施試験では、明確な条件として提示されませんでした。しかし、12月8日実施試験では『分館出口と本館の敷地までの経路に彫刻やベンチ等を設置し来館者がくつろげる語らいの場となる屋外空間(「分館出口前のオープンスペース」)を設ける。』と指定されたうえ、「分館出口前のオープンスペース」について、設計条件を踏まえて工夫したことが計画の要点等の設問として問われました。また、『くつろげる語らいの場』といった空間設計(快適性を考慮した位置や広さなど)の要素が加えられたことにより、アプローチ計画において、本館と分館の行き来の動線のみを問われた10月13日実施試験よりも、さらに深い検討が必要でした。

(2)利用形態に応じたゾーニング

  10月13日実施試験 12月8日実施試験
床面積の合計 2,000m2以上、2,400m2以下 1,800m2以上、2,200m2以下
大空間 多目的展示室
展示のほか講演会等に使用
多目的ホール
講演のほか展示等に使用
前室(チケットの確認等) 多目的展示室+展示室A〜C 展示室A〜Cのみ
ホワイエ 展示関連諸室用 多目的ホール専用
屋上庭園 3階の床レベル
(2階の屋上)
2階の床レベル
(1階の屋上)
計画の要点等 展示関連諸室とアトリエ関連諸室のゾーニングについて 多目的ホールを多くの者が利用する場合があることを踏まえた空間構成について

10月13日実施試験と比較して、床面積の上限が2,200u以下と200uも引き下げられました。作図量だけで考えれば減少していますが、敷地の大きさや建蔽率の上限も変わらず、要求室においても大きな条件変更がない中で、最大ボリュームが減少したため、作図の負担が軽減されたこと以上に、エスキスの負担が増したという受験生が多かったと考えられます。

12月8日実施試験でも、全体の部門構成は10月13日実施試験と同様でした。また、『教育・普及部門』が「展示関連諸室」と「アトリエ関連諸室」の2つに区分されており、留意事項で『教育・普及部門の展示関連諸室とアトリエ関連諸室を利用形態に応じ、適切に計画する。』と要求されていた点も同様でした。 ただし、屋上庭園の設置階が3階から2階に変更されたことで、建物内部の立体構成は10月13日実施試験とはまったく異なる構成で対応する必要がありました。

一方、アトリエ関連諸室については、市民アトリエに屋上庭園との隣接条件があったことに加え、全体のボリュームを考えても、2階にまとめやすい条件となっていました。しかし、2階のアトリエ関連諸室を挟んで、展示関連諸室が1階と3階に分かれるゾーニングとなってしまうことに自信が持てず、難しいと感じた受験生も多かったようです。

また、プランニングにおいては、多くの受験生が多目的ホールを1階で計画したと考えられますが、この構成を選択すると、2階のアトリエ関連諸室のフロアゾーニングの難度が上がるため、エスキスに多くの時間を費やしたのではないかと推察されます。

(3)建築基準法令遵守の計画

【課題文から抜粋】

敷地及び周辺条件

敷地は、第一種住居地域(道路高さ制限及び隣地高さ制限における斜線勾配はそれぞれ1.25とする。)及び準防火地域に指定されている。

要求図書

切断位置は、東西方向とし、多目的ホールを含み、立体構成がわかる断面とする。

事前告知にあった建築基準法関連要素(建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設等)のうち、10月13日実施試験で明確に出題されなかった要素の一つである「高さの制限」が、12月8日実施試験では出題されました。

高さ制限の出題は、道路斜線及び隣地斜線の2つについてでしたが、20m以上の部分から斜線が発生する隣地斜線については、20mを超える可能性が極めて少ない今回の試験では考慮不要の要素でした。しかし、隣地斜線になじみのない受験生にとっては、意図が読み取れずに戸惑う要素になったと考えられます。

一方、道路斜線については、計画によっては抵触する可能性も出てくるため、東側道路に対し、十分なセットバック距離を確保した計画を行う必要がありました。
加えて、断面図では、東西方向、かつ、建築物の最高高さに影響の大きい多目的ホールを含んだ位置で切断する要求があったことからも、道路斜線への抵触が大きな減点となることが想定されます。

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