令和元年度 一級建築士設計製図試験(12月8日実施) 合格速報
令和2年2月5日(水)に、令和元年度 一級建築士 設計製図の試験(12月8日実施)の合格発表がありました。概要は下記の通りです。
設計製図の試験
(令和元年12月8日に試験を実施した23都道府県全国27会場の結果) |
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実受験者数 | 5,937人 |
合格者数 | 2,030人 |
合格率 | 34.2% |
採点結果の区分 | ○採点結果については、ランクI、II、III、IVの4段階区分とする。
○採点結果における「ランクI」を合格とする。 ランクI (34.2%):「知識及び技能」※を有するもの ランクII (5.3%):「知識及び技能」が不足しているもの ランクIII (31.9%):「知識及び技能」が著しく不足しているもの ランクIV (28.6%):設計条件及び要求図書に対する重大な不適合に該当するもの
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<令和元年度 1級建築士 設計製図の試験 総計>
設計製図の試験 | |||
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本試験 令和元年10月13日(日) |
再試験 令和元年12月8日(日) |
全国 (本試験+再試験) |
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試験会場 |
29道府県 全国29会場 |
23都道府県 全国27会場 |
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実受験者数 | 4,214人 | 5,937人 | 10,151人 |
合格者数 | 1,541人 | 2,030人 | 3,571人 |
合格率 | 36.6% | 34.2% | 35.2% |
合格発表を受けて
令和2年2月5日に、令和元年度1級建築士設計製図試験(令和元年12月8日実施)の合格発表がありました。
今回発表されたのは、台風の影響を受けて、令和元年12月8日に再試験を実施した23都道府県27会場の試験結果です。実受験者数5,937人、合格者数2,030人、合格率34.2%でした。
令和元年10月13日に実施された試験の合格率は36.6%と、近年でもっとも低い結果でしたが、12月8日に実施された試験の合格率は、さらに2.4%低下しました。
令和元年10月13日に実施された試験の結果と合算した、令和元年度1級建築士設計製図試験の最終結果は、実受験者数10,151人、合格者数3,571人、合格率35.2%となりました。
平成30年度と比較すると、受験者数は増加したものの、合格者数は減少しており、合格率は6.2%低下しました。
実受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
令和元年度 | 10,151人 (+900人) |
3,571人 (−256人) |
35.2% (−6.2%) |
平成30年度 | 9,251人 | 3,827人 | 41.4% |
採点結果の区分の割合について
12月8日に実施された試験の採点結果の区分については、ランクI:34.2%、ランクII:5.3%、ランクIII:31.9%、ランクIV:28.6%となりました。 10月13日に実施された試験と同様に、近年の結果と比較してランクIIの割合が極端に低くなっており、ランクIII、ランクIVの割合は上昇し、あわせて6割を超えています。
● 採点結果の区分割合の推移
ランクI | ランクII | ランクIII | ランクIV | |
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令和元年 (12月8日実施) |
34.2% | 5.3% | 31.9% | 28.6% |
令和元年 (10月13日実施) |
36.6% | 3.0% | 29.2% | 31.3% |
平成30年 | 41.4% | 16.3% | 16.5% | 25.9% |
平成29年 | 37.7% | 21.2% | 29.9% | 11.2% |
平成28年 | 42.4% | 27.1% | 20.7% | 9.7% |
平成27年 | 40.5% | 25.2% | 23.3% | 11.0% |
・ランクI:「知識及び技能」※を有するもの
・ランクII:「知識及び技能」が不足しているもの
・ランクIII:「知識及び技能」が著しく不足しているもの
・ランクIV:設計条件及び要求図書に対する重大な不適合に該当するもの
※「知識及び技能」とは、一級建築士として備えるべき「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」をいう。
このように、ランクI(合格者)とそれ以外がはっきりとわけられる結果となったことから、建築士として求められる知識・技能の水準が、より厳格なものとなったことがうかがえます。令和元年度に実施された2回の試験で同様の傾向が見られたため、この傾向は来年度以降も続くと考えられます。
『受験者の答案の解答状況』に見る今回の試験の特徴
今回の試験において、「ランクIII」「ランクIV」に該当した答案の具体例として、以下の内容が発表されました。
- ・設計条件に関する基礎的な不適合:「要求されている室の欠落」や「要求されている主要な室等の床面積の不適合」
- ・法令への重大な不適合:「延焼のおそれのある部分の位置(延焼ライン)と防火設備の設置」、「防火区画(特に吹抜け部の1階部分の区画)」や「直通階段に至る重複区間の長さ」等
- ・その他建築計画に基本的な問題があるもの:「吹抜けの計画(吹抜けとなっていないもの)」等
今回の試験では、平成30年度の試験で主な不合格要因として発表された『法令への重大な不適合』に加え、10月13日実施の試験同様、『その他建築計画に基本的な問題があるもの』という内容が挙げられました。
試験において、法令を遵守することは当たり前としたうえで、「建築計画」についても高い知識・技能が求められていると考えられます。
『採点のポイント』に見る本年度試験の特徴
今回の試験の採点のポイントとして、以下の内容が発表されました。
(1)空間構成
@建築物の配置計画、Aゾーニング・動線計画、B要求室等の計画、C建築物の立体構成等
(2)建築計画
@自然光の取入れ方や自然換気の工夫、A日射負荷の抑制、B要求室の機能性等、C図面、計画の要点等の表現・伝達
(3)構造計画
@耐震性・経済性を考慮して計画された建築物全体の構造種別・架構形式・基礎形式・スパン割り等、A多目的ホールの構造計画、B屋上庭園の構造計画
(4)設備計画
@多目的ホールの設備計画
(5)設計条件・要求図面等に対する重大な不適合
@「要求図面のうち1面以上欠けるもの」、「計画の要点等が完成されていないもの」又は「面積表が完成されていないもの」
A地上3階建てでないもの
B図面相互の重大な不整合(上下階の不整合、階段の欠落等)
C建築面積が 921.6 uを超えているもの
D床面積の合計が 1,800 u以上、2,200 u以下でないもの
E次の要求室・施設等のいずれかが計画されていないもの
多目的ホール、ホワイエ、展示室A、展示室B、展示室C、市民アトリエ、アトリエA、アトリエB、アトリエC、アトリエD、吹抜け、エントランスホール、カフェ、多機能トイレ、便所、事務室、荷解き室、PS・DS・EPS、屋上庭園、分館出口前のオープンスペース
F法令の重大な不適合等、その他設計条件を著しく逸脱しているもの
例年発表される、「欠落(=失格)」となる要求室群に、10月13日実施の試験同様、『PS・DS・EPS』が含まれていました。わずか1〜2u程度の小さな設備シャフトスペースの図面表現欠落が失格要件に挙がったことや、設備計画の設問でイメージ図の描画が必須となったことから、単なる情報としての知識ではなく、実務で『活かせる知識』が求められていることがうかがえます。
『標準解答例』に見る今回の試験の特徴
(1)アプローチについて(主要な出入口)
発表された「標準解答例@・A」では、どちらも主出入口またはサブの出入り口が、本館のある北側に計画されていました。「美術館の分館」という今年の課題に対し、「北側の本館との来館者の動線に配慮する」ために、アプローチ(主要な出入口)を適切に計画する建築士としてあるべき実務レベルの力が求められたと言えます。
(2)大空間の立体構成について
「多目的ホール」について、発表された「標準解答例@」では3階に、「標準解答例A」では1階に計画されていました。今回の課題では、留意事項として問われた「展示関連諸室とアトリエ関連諸室の利用形態に応じたゾーニング」を意識した計画がポイントとなったと考えられます。特に、計画に大きな影響を与える大空間である「多目的展示室」をゾーニング決定のプロセスの中でどの階に計画するかは、多くの受験生にとって難しいポイントであったと考えられます。
(3)バリアフリー法対応について
発表された「標準解答例@・A」では、どちらも車椅子使用者用駐車場から建物出入口までの経路が明示されており、課題条件で出題された「建物移動等円滑化基準」についての考え方が示されました。東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えた「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」の閣議決定なども踏まえると、今後の試験対策としてバリアフリーの重要性が高まってくることが予想されます。
(4)道路斜線制限について
発表された「標準解答例@」では、断面図に道路斜線が図示された他、別欄には斜線制限の計算式が明示され、課題発表時に公表された建築基準法令の内、初めて具体的な数値(斜線勾配1.25)を伴って出題された「高さ制限」の考え方が示されました。明示された考え方は、実務(建築確認申請)そのものの内容であり、今後の試験でも法令遵守について厳しく評価されることが予想されます。
令和2年度合格に向けて
12月8日に実施された1級建築士設計製図試験では、10月13日に実施された試験同様、1級建築士として求められる知識や技能の水準がより厳格化していることを示唆する傾向がいくつも見られました。今後の試験においては、こうした明らかな採点のポイントの変化を、正しく理解したうえで、対応していく必要があります。
また、令和2年度は、建築士法改正後初の試験となります。 これまで受験要件とされていた実務経験が免許登録要件になるなど、受験資格の緩和によって受験者数が増えることが見込まれます。
この様な状況からも、来年度1級建築士設計製図試験の合格をめざす方は、より早期から対策を進める必要があると考えられます。
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