赤レンガ卒業設計展

『 Diploma×KYOTO '12』

参加大学の特色が出た設計展

 横浜みなとみらいに建つ赤レンガ倉庫。港町横浜のシンボルとして知られるこの歴史的建物で、参加13大学と関東では最大規模の卒業設計展「赤レンガ卒業設計展 2012」が3月23日(金)〜27日(火)に開催された。
本設計展の今年度のテーマは「Re:」。昨年は東日本大震災があり延期となったが、震災後という意味も含め、建築学生が卒業設計を社会に対する提案や回答として発信していくという意味が込められている。

 展示会場は、赤レンガ倉庫1号館の2階で、細長い会場に160作品が並ぶ。展示は、大学ごとにまとまっており、それが赤レンガ設計展の特徴でもある。模型の大きい東京都市大学、敷地、プログラム、機能がしっかりと設定されている日本大学工学部、模型がカラフルで細かく、身体的なものをテーマにした作品の多い日本女子大学など、展示会場をまわると、それぞれの作品だけでなく、各大学のカラーが見えてくる。
講評会の25日(日)は、建築学生をはじめ、ぶらりと立ちよった観光客など、多くの来場者で賑わった。

会場の赤レンガ倉庫1号館
作品は参加大学ごとに分けられている
今年は、来場者の設計展に関する感想を会場の廊下に貼り付けるという企画がなされた

 講評会は、午前中に巡回審査が行なわれ、午後に公開審査となる。審査員は、仙台メディアテークを設計し、帰心の会の活動などにより復興支援に力を注ぐ伊東豊雄氏。上州富岡駅舎コンペで最優秀賞を獲得した武井誠氏。手塚貴晴氏や藤村龍至氏のプロジェクトの構造設計を担当した大野博史氏、大西麻貴+百田有希/o+h を共同主宰し、現在、横浜国立大学Y-GSA設計助手でもある大西麻貴氏の4人。巡回審査では審査員4人とも、真剣な眼差しで作品を覗き込んでいた。

 巡回審査により選ばれたファイナリストは、下記の10作品。

審査員長を務めた伊東氏
プレゼンターに質問を投げかける審査員の武井氏
真剣な眼差しで巡回審査を行なう審査員の大野氏
巡回審査で、パネルを読み込む審査員の大西氏
グランプリに輝いた楠本侑子さんは、この日が卒業式だった
No. 名前 作品名
C-07 宇山達彦(東京理科大学) 柩の風景
M-07 山口結花(横浜国立大学) ぽっかり漁港と子供たち
O-03 新川智也(東京都市大学) crossing strtums  ― 桜島との対話。伸びゆく建築―
I-04 楠本侑子(神奈川大学) 織込橋のつくる風景
J-03 戸井田哲郎(東京工業大学) 風景に棲まう
C-04 土屋秀正(東京理科大学) 輝けない都市
J-04 村部塁(東京工業大学) 呼吸する居城 − 山谷地域展開計画 −
B-13 田中達朗(東京理科大学) 認識の怪路
O-05 辻慎太郎(東京都市大学) 自然の輪郭地図の再考から見える神話の道と場の建築
L-17 街鳥絢子(法政大学) 赤坂震災集落

 公開審査は、ファイナリストによるプレゼンテーションと質疑応答が行なわれ、その後、審査員が3票を気に入った作品に投じた。結果、M07の山口さん、O03の新川さん、C04の土屋さん、I04の楠本さん、J04の村部さんに票が入った。その中でも票が集まったのは、楠本さん(4票)と、山口さん(3票)。楠本さんは、愛知県今治市の中心商店街の再生案。商店街に沿って流れる川と商店街を橋でつなぐことで新たな潤いと活気をもたらせようと意図した。一方の山口さんの作品は、小田原の元々田んぼであった土地を四角に掘り込んで作った漁港に、不登校の子供たちが通うフリースクールを建てる計画。かまぼこ工場のそばに、かまぼこ教室を建てるなど、既存の建物に合った教室を徐々に建てていき、街に溶け込むようにフリースクールを広げていく。どちらの案も、スケールは大きくないが、敷地をしっかりと調査したうえで、その土地に合った提案をしている。

 審査員の票は割れたが、楠本さんは、「橋を足がかりにして、商店街を結ぶことに主眼がおかれているところがいいと思った」「スケッチにそういうふうになって欲しいという思いが滲み出ている」と後半の議論でも審査員から評価を得て、最後に伊東氏が「山口さんのプロジェクトは単純に幸せそうで、少し楠本さんの方が苦しそうなことをやっている」と楠本さんを推し、結果、グランプリは楠本さんに決まった。

 また、個人賞を含めた結果は、下記の通り。

名前 作品名
グランプリ 楠本侑子(神奈川大学) 織込橋のつくる風景
伊東豊雄賞 街鳥絢子(法政大学) 赤坂震災集落
武井誠賞 土屋秀正(東京理科大学) 輝けない都市
大野博史賞 山口結花(横浜国立大学) ぽっかり漁港と子供たち
大西麻貴賞 村部塁(東京工業大学) 呼吸する居城−山谷地域展開計画−
グランプリを獲得した楠本さんの模型
作品について語る山口さん。最後までグランプリを競い合った
山口さんの模型。四角の漁港にフリースクールを計画
赤レンガ設計展実行委員の面々

 公開審査後は、審査員を務めた武井氏、大野氏、大西氏の3人でシンポジウムが行なわれた。テーマは、「震災より1年経って建築家の先生方の考えや価値観の変化について」「震災が建築家の先生方のプロジェクトには影響を与えたか」「先生方が思い描く、建築やプロジェクトについて」の3点。東日本大震災や自分自身の卒業設計について、建築家、構造家、また教育者の立場からそれぞれが話し合った。シンポジウムの後半には、会場の学生からも質問が出て、25日のプログラムは盛況のうちに幕を閉じた。

 大野氏が総評で「これからは耳を傾けることのできる建築家像が求められるのでは」と、また伊東氏が「人と話をしながら作る」「設計のなかに他者がいるか」と話したように、今後はより社会の要望と結びついた建築をつくっていくことが求められていることを感じさせた設計展であった。設計展のテーマ「Re:」の後の空欄は設計展参加者それぞれの提案が続くよう余白になっている。彼らが他者や社会とどのように向き合っていくのか、そしてこれからどのような提案を行なっていくのか ― 。新たな建築の動きを感じさせる設計展であった。

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「赤レンガ卒業設計展」概要

名称 赤レンガ卒業設計展
日程 2012年3月22日(木)〜27日(火)
会場 横浜赤レンガ倉庫
主催 赤レンガ卒業設計展実行委員会
特別協賛 株式会社総合資格
Webサイト

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