福岡デザインレビュー

福岡デザインレビュー

合縁奇縁建築縁

会場となった福岡アイランドシティ中央公園の「ぐりんぐりん」

 グランプリを決めることに重きをおくのではなく、レビュー(批評)を重視し、審査員、出展者、そして来場者までが同じフロアで議論を交わす − それが3月17日(土)・18日(日)に開催された福岡デザインレビューのコンセプトだ。17回目となる今年のテーマは、「合縁気縁建築縁」。人と人、思想と思想の縁結びとなる社交場を目指す、という意味が込められている。

 会場は、埋立地の福岡アイランドシティの中央公園に建つ「ぐりんぐりん」。伊東豊雄氏が設計しており、天井にはいくつもの天窓がとられている。陽の差し込む会場には、応募378作品の中から、事前審査で選ばれた130作品が並び、初日から多くの来場者で賑わった。

1日目:ポスターセッション −展示会場が議論の場に

初日は、ポスターセッションが行われた。ポスターセッションは、審査員が展示会場の作品を見て回る、いわゆる巡回審査に当るわけだが、本設計展は通常の巡回審査とはひと味違う。作品の前には学生が待ちうけ、やって来たクリティーク(審査員)にプレゼンテーションをし、議論を交わすのだ。通常の設計展では、ファイナリストとなったひと握りの人にしかプレゼンや質疑応答の機会は与えられないが、本設計展では予選を通過したすべての人にその機会が与えられる。

 さらにクリティークだけでなく、来場者も出展者のプレゼンを聞き、議論を交わすことができる。それが、レビューを重視する本設計展の醍醐味。会場のあちこちで審査員と学生、または来場者と学生が模型を前に議論し合う姿が見られた。

 クリティークは、横浜国立大学大学院Y-GSA教授で、熊本県の宇土市立宇土小学校を手がけた小嶋一浩氏。東京大学副学長をつとめ、「海の博物館」で日本建築学会賞や吉田五十八賞を受賞した内藤廣氏。東京のアトリエに加えて福岡にもアトリエをもち、環境をテーマにした作品を手がける末光弘和氏。「なわけんジム」を主宰し、意匠、構造、金属加工、石材加工、建築写真の専門家が共同で仕事を行なう「すわ製作所」で構造を担当する名和研二氏。「超線形設計プロセス論」という独自の手法で「BUILDING K」などの作品を手がけている藤村龍至氏。本設計展でクリティークは、単に作品を選出するだけでなく、活発な議論をおこすという役目を担うが、それにふさわしい5人だ。
1回めのポスターセッションにより、次の審査へ進む25作品が選ばれた。また、1日めの審査のみの参加となる内藤氏による、内藤廣賞が選ばれた。受賞者は、ID147「変わるものと変わらないもの‐セルフビルドによる新しい集落の在り方‐」。内藤氏は、総評として「もう一歩踏み込んで考えてほしい」とコメント。一見、否定的な意見ではあるが、学生と1対1の議論を交わし、その考えを理解し得たからこそ、出てきたエールと言える。

学生のプレゼンを聞きながらメモをとる末光氏
 
小嶋氏は、精力的に展示会場をまわり、学生と議論を交わしていた
自己紹介のプレゼンテーションをする藤村氏
 
唯一構造家のクリティークである名和氏
 
1日目のポスターセッションを終えて感想を話す内藤廣氏
学生同士が話し込む姿も多く見られた
 
天窓から差し込む日差しにより、明るさが変化する会場
1日目の夜は、懇親会が行なわれ、クリティークと学生が、建築談義を行なっていた

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2日目 トーナメント − 街の地価に計画したゴミ処理発電所が最優秀賞

 2日めは、午前中に1日めの審査に選ばれた25作品のポスターセッションが行なわれ、次へ進む12人が選ばれた。

 2次審査はトーナメント形式となっている。選ばれた12人が3人ずつの4グループに分かれ1回戦を行い、各グループから1人が勝ち抜く。そして、決勝で4人が議論の場に登り、最優秀賞1人が選ばれる。

1回戦(第1グループ)

No. 名前 作品名
ID175 田中茉吏 「からだのつつぎ」
ID294 中馬賢次 「木匠工房」
ID12 小島衆太 「タテに建築、ヨコに土木」

2回戦(第2グループ)

No. 名前 作品名
ID98 松川真友子 「海上の煙突島」
ID239 早川真介 「街角大学建築学科」
ID216 荻野克眞 「路地の家」

3回戦(第3グループ)

No. 名前 作品名
ID54 穴井健一 「簡略的な建築について」
ID121 中川洋輔 「Looseness network 〜ネットワーク的社会に向けた新たな国会議事堂〜」
ID9 劉棟 「『栖』−石庫門から考える中国現代都市の住処−」

4回戦(第4グループ)

No. 名前 作品名
ID167 根本大輔 「有造無造 〜柱空間らせんによる建築の思考〜」
ID343 西倉美祝 「明日の世界企業」
ID17 中土居宏紀 「やわらかたまり」
トーナメント表。3回戦は、2人が勝ち抜いた

 1回戦の選出方法は、1人3分間のプレゼンテーションを行い、その後、質疑応答を含めた議論をし、勝ち抜く1作品を選出する。3作品の中から1作品を選ばなくてはならない難しい選考。特に、3回戦は土木でよく使用されるシートパイルと土を使って、震災などが起こったさいにスピーディーに対応できる仮設を提案したID54「簡略的な建築について」と中国の伝統的な建築、石庫門建築を現代の超高層ビルに組み入れたID9「『栖』−石庫門から考える中国現代都市の住処−」に票が分かれ、議論が白熱。クリティークは、どちらの作品にするか決め切ることができず、両作品を決勝に進めることになった。

 決勝は、先の2作品に加えて、ID175 田中茉吏「からだのつつぎ」、ID98 松川真友子「海上の煙突島」、ID343 西倉美祝「明日の世界企業」の5作品。決勝進出者たちは、議論がスタートすると、ここぞと手を挙げ自分の作品をアピール。審査員たちと熱いレビューを行なった。

 決勝でクリティークの議論が集中したのは、ID98松川さんの「海上の煙突島」。社会から隔離されているゴミ処理場を地下の発電施設にして、その上に住居を計画した作品。クリティークからは評価する意見が多かったが、藤村氏が「工場を誘致できない地方の町が発電所などを歓迎して誘致してきたのが今の日本の姿。この問題を本人は認識しているのか」と疑問を呈する。それに対し、松川さんは「隠して、見えなくしているものを、見える形で身近なものとし、それについて考えてもらいたいという意図がある。決して単なるユートピアを意識しているわけではない」と反論。末光氏も「全てをまかなうゴミ処理場ではなく、その住居から出たゴミのみを扱う中間スケールの発電所を想定すれば、新しい形になりえる」と援護。結果、村松さんの作品が最優秀賞に選ばれた。

 その他、優秀賞、各クリティーク賞は下記のとおり。

No. 名前 作品名
最優秀賞 ID98 松川真友子 「海上の煙突島」
優秀賞 ID54 穴井健一 「簡略的な建築について」
優秀賞 ID9 劉棟 「『栖』−石庫門から考える中国現代都市の住処−」
藤村龍至賞 ID294 中馬賢次 「木匠工房」
小嶋一浩賞 ID175 田中茉吏 「からだのつつぎ」
名和研二賞 ID167 根本大輔 「有造無造 〜柱空間らせんによる建築の思考〜」
末光和宏賞 ID343 西倉美祝 「明日の世界企業」

 「レビュー」という本設計展のコンセプトとおり、今年も2日間にわたって、建築に関する熱い議論が行なわれた。内藤氏が「一歩踏み込んで考えてほしい」とコメントしたが、その一歩は、他者との対話により踏み出せることもある。きっと本設計展が、参加した学生たちの考えを深めるきっかけになったに違いない。

最優秀賞に輝いた松川さん。決勝で真摯に作品について説明する姿が、印象的だった
最優秀賞の松川さんの模型。地下にゴミ処理発電所がある
左から優秀賞の劉棟さん、最優秀賞の松川さん、優秀賞の穴井さん
小嶋一浩賞を受賞した田中さんと小嶋氏。作品である持ち運ぶ家の中に一緒に入っている
「福岡デザインレビュー2012」の面々

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「福岡デザインレビュー」概要

名称 福岡デザインレビュー
日程 2012年3月17日(土)〜18日(日)
会場 アイランドシティ中央公園 ぐりんぐりん
主催 学生デザインレビュー2011福岡実行委員会+日本建築家協会九州支部
共催 アイランドシティ中央公園管理事務所 福岡デザイン倶楽部
Webサイト

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