トウキョウ建築コレクション2012

2月28日(火)から3月4日(日)にかけて、代官山ヒルサイドテラスにて「トウキョウ建築コレクション2012」が開催されました。3月3日(土)には、このイベントの目玉となる「全国修士設計展 公開審査会」を実施。全国からよりすぐられた修士設計19作品の中からグランプリを選ぶという、まさに大学院生の頂点を決める大会だけに、会場には朝から多くの学生が詰めかけました。
今回の全国修士設計展のサブテーマは「創作の発見」。東日本大震災から1年が経過した今、より広い分野・観点からディスカッションおよびクリティークを行うことで、これからの建築のあり方を模索していこうということがテーマとなりました。全国の修士設計の中から厳選された作品が集結しただけに、随所にレベルの高さがうかがえる大会となりました。
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会場となった代官山ヒルサイドテラスは、建築家・槇文彦氏の代表的な作品。まさに「トウキョウ建築コレクション」の名にふさわしい会場。
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席を求め、朝から多くの学生が詰めかけ、行列を作りました。
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立ち見が出るほどの盛況ぶりで、広い会場が手狭に感じられるほど。
例年、公開審査会の会場となっているヒルサイドプラザですが、今年は手狭さを感じるほど多くの学生が詰めかけ、午前中にもかかわらず、立ち見が出るほどの盛況となりました。
最終的な審査に先立ち、まずは19人全員によるプレゼンテーションが行われました。短い制限時間内に、自分の作品のテーマ、調査・研究のプロセス、さらに思索の結果たどりついた作品自体の解説を行っていきます。修士の発表だけに、大学生の発表と比較して、用いられる資料の量や、その詳細な分析など、様々な点でクォリティの高い研究の過程をうかがい知ることができ、また作品の解説ではCGも多用されるなど、完成度の高いプレゼンテーションが繰り広げられました。
修士の発表らしく、様々な資料やCGによる完成予想図などがプロジェクターで映し出され、非常に質の高いプレゼンテーションが行われました。
午後からはヒルサイドフォーラムに場所を移し、完成模型を前にしての巡回審査が行われました。各審査員たちとの直接的な質疑応答のため、参加者たちも緊張の面持ち。審査員たちから矢継ぎ早に質問が投げかけられる中、自らの作品をアピールするために、熱心なやりとりが繰り広げられました。
巡回審査を経て、再び会場はヒルサイドプラザへ。すべての作品に対する講評が、審査員たちから述べられた後、グランプリを決める公開討論会へ。最終的に、山中浩太郎さん(神奈川大学大学院)、高島春樹さん(東京藝術大学大学院)、栄家志保さん(東京藝術大学大学院)の3作品にしぼられましたが、「建具」という、普段あまり着目されない素材をテーマにした研究の独創性から、山中浩太郎さん(神奈川大学大学院)がグランプリに輝きました。

■グランプリ | |
作品名: | 「A butterfly in Brazil -リンク機構を用いた建具の研究-」 |
受賞者: | 山中浩太郎さん (神奈川大学大学院) |
建築の構成要素の中でも、数少ない動く部分である「建具」に着目したという山中さん。建築工学の「リンク機構」と呼ばれる機構を建具に取り込むことにより、一箇所を動かすだけで、他の部分も連動して動く新しい建具を考案。山中さんが提案する建築は、この建具を設計の主軸に据えることにより、プログラムの変化に対応してダイナミックにその状態を変容させる。従来の建具という概念を越え、建築空間そのものを大きく変容させようとする独創的なアイデアが高く評価されました。



■新居千秋賞 | |
作品名: | 「旅するサヴォア邸」 |
受賞者: | 高島春樹さん (東京藝術大学大学院) |
ル・コルビジェの「サヴォア邸」をベースに、世界各地に点在するヴァナキュラー(土着の)建築との交配を試みたという高島さん。土着的に伝わる原初的な環境技術を、サヴォア邸という近代を代表する建築物と融合させることにより、新しい時代の建築設計の可能性を探ろうとした作品。

■工藤和美賞 | |
作品名: | 「居くずし」 |
受賞者: | 栄家志保さん (東京藝術大学大学院) |
トルコでの留学経験から、トルコという土地が持つ、人を受け入れて馴染ませる「空間の力」を認識したという栄家さん。現地における路上空間と人々の行為の分析から、人々が空間の型を崩しながら自身や他者に馴染ませていく行為を、「着くずし」になぞらえ、「居くずし」と定義。さらに、現実的に人と都市が直につながる空間を形成する方法を追究した作品。

■千葉学賞 | |
作品名: | 「敷地境界から建築へ」 |
受賞者: | 西島要さん (東京電機大学大学院) |
都市空間の中で、「公と私」または「私と私」の中間にあり、両者どちらにも属する両義的な存在である「敷地境界」。この敷地境界に着目し、都市と建築との中間に生成しうる新たなコミュニティの可能性を内包した、新しい都市空間のモデルを創造しようとしたプロジェクト。

■タルディッツ・マニュエル賞 | |
作品名: | 「流動と磁場 -地方型コワーキングスペースの提案-」 |
受賞者: | 浜田晶則さん (東京大学大学院) |
独立した事業者やフリーランスの人々が、事務所スペースや会議室などを共有する「コワーキングスペース」というシェアオフィスの形態が、現在、都市部で発展しつつあるが、これを地方都市の再生に応用しようとするプロジェクト。人々が分散しがちな地方都市に、新しい人の流れを生み出し、集積させることにより、地方再生の可能性を検討する。

■山梨知彦賞 | |
作品名: | 「Record of a Living Being」 |
受賞者: | 棚橋玄さん (東京藝術大学大学院) |
棚橋さんの提案は、外気の変化を素材自体が感知し、自律的に呼吸するように開閉するという、温度変化に対して自律的に動作する「外壁」のモデル。人力や機械力に頼らない、自然力による生物的な変化を取り入れた点が高く評価されました。
「トウキョウ建築コレクション2012」概要
名称 | トウキョウ建築コレクション2012 全国修士設計展 |
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日程 |
展示 2012年2月28日(火)〜3月4日(日) 公開審査会 2012年3月3日(土) |
会場 |
展示 代官山ヒルサイドテラス・ヒルサイドフォーラム 公開審査会 代官山ヒルサイドテラス・ヒルサイドプラザ |
審査員 |
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主催 | トウキョウ建築コレクション2012実行委員会 |
特別協賛 | 株式会社総合資格 |
後援 |
(社)東京建築士会 |
Webサイト |