「赤レンガ卒業設計展2013」
「赤レンガ卒業設計展2013」
名称 |
「赤レンガ卒業設計展2013」 |
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開催日 |
展示:2013年3月27日(水)〜3月31日(日) 講評審査会:2013年3月31日(日) |
会場 |
横浜赤レンガ倉庫1号館 |
審査員 |
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主催 |
赤レンガ卒業設計展2013実行委員会 |
特別協賛 |
株式会社総合資格 |
今年も横浜赤レンガ倉庫に関東12大学の卒業設計作品が集結!!
関東の主要大学による合同卒業設計展「赤レンガ卒業設計展2013」が、3月27日(水)から3月31日(日)の5日間にかけて開催されました。今年は12大学から、合計200以上の作品が参加。会場はおなじみの「横浜赤レンガ倉庫」。山下公園やみなとみらいなどと隣接する、横浜を代表する観光スポットだけに、今年も会場には大勢の観光客がつめかけ、大変な賑わいとなりました。
今年のテーマは「▽GL+1」。GLとは建築用語で地盤面(Ground Line)のこと。今回はこのGLという言葉を「Graduation Line」と解釈し、「自らの地盤となる卒業設計作品」という意味となっています。さらにGLに「+1」することで、卒業後の飛躍の意味が込められています。卒業後、様々な進路に進んでいく参加者たちの、思いの詰まった大会となりました。
●参加大学
神奈川大学/共立女子大学/首都大学東京/東京工業大学/東京電機大学/東京都市大学/東京理科大学/日本大学/日本女子大学/法政大学/前橋工科大学/横浜国立大学
5人の審査員による巡回審査で上位10作品を選出
3月31日(日)には今年の最優秀作品を決める講評審査会が開催され、朝の10時から一次審査が行われました。5人の審査員が全200以上の作品を巡回し、上位10作品を選出します。当日は日曜日ということもあり来場者が多く、出展者の友人・知人、大学関係者、たまたま訪れた観光客などで大混雑。賑わう会場のなかでの審査となりました。
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- 難波和彦氏
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- 古谷誠章氏
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- 赤松佳珠子氏
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- 竹内昌義氏
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- 中村竜治氏
一次審査の結果、以下の10作品が選出されました。
●10選
名前 | 学校名 | 作品名 |
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藤枝拓弥さん | 日本大学 | 「木材乾燥の世界で」 |
堀裕平さん | 日本大学 | 「舞台巡礼」 |
阿部駿也さん | 法政大学 | 「街とよりそう」 |
佐脇礼二郎さん | 東京理科大学 | 「LANDSCAPE」 |
佐道千沙都さん | 東京工業大学 | 「島を辿る」 |
草薙薫さん | 共立女子大学 | 「生き延びる建築」 |
杉山由香さん | 東京電機大学 | 「春を待つ橋の下」 |
酒井結希さん | 東京電機大学 | 「カルカッタの空の下」 |
野口この実さん | 神奈川大学 | 「紡ぐ」 |
石川真吾さん | 東京都市大学 | 「島に刻む記憶」 |
白熱した議論の末に
佐道さん(東京工業大学)の作品が最優秀賞に!!
午後からは3Fの大ホールに場所を移し、二次審査となる講評審査会が開催されました。冒頭、総合資格学院の学院長 岸より開会の挨拶があり、「明日から社会人となられる方々、大学院に進まれる方々、その進路は様々ですが、この設計展こそ将来に向けての『はじまり』の大会になると思います。この機会を通じ、より良い建築物を世に送り出していってください」と、参加者たちに激励の言葉が送られました。
引き続き、一次審査を通過した10人によるプレゼンテーションへ。各自の持ち時間は3分間。その後、審査員による質疑応答へと続きます。質疑応答では、審査員から鋭い質問が次々と投げかけられ、参加者たちが言葉に詰まる場面もしばしば。
長時間に及ぶ議論の末に、見事、最優秀賞の栄冠に輝いたのは、東日本大震災により大きな被害を受けた宮城県の「桂島」の復興計画を扱った、東京工業大学の佐道千沙都さんの作品となりました。
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- 開会の挨拶を述べる学院長 岸
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- 難波氏より最優秀賞を授与される佐道さん
最優秀賞 | 「島を辿る」 東日本大震災により大きな被害を受けたにもかかわらず、島民全員が津波の被害を逃れ、一人の犠牲者も出すことがなかったという、宮城県の松島沖に浮かぶ「桂島」。島を巡り、実踏調査を重ねた結果、この奇跡をもたらしたのが、島独自のコミュニティの強さにあると判断した佐道さんは、このコミュニティを保存しつつ、破壊された島を新たに再生させるための復興案を計画。漁業再生のためのフェリーターミナル、島の女性たちが農作物を調理するためのパブリックキッチン、さらに外部の人を受け入れ、島の生活を体験してもらうための入居スペースなど、島の伝統を更新し、未来へと繋ぐための公共建築モデルを提案する。 |
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佐道千沙都さん |
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難波和彦賞 | 「島に刻む記憶」 「赤レンガ卒業設計展2013」の実行委員長も務めた石川さんが、見事に難波和彦賞を受賞。香川県の大島は、高松港から程近い場所に浮かぶ小島であり、国立ハンセン病療養所・大島青松園がある。かつては不治の伝染病とされ、隔離政策がとられてきたハンセン病だが、現在は治療法が確立し、その歴史も風化しつつある。かつてこの島に隔離され、今もそこに暮らす人々はすでに高齢となり、あと10〜20年もすると誰もいない無人の島となる。石川さんの提案は、かつてこの島で行われてきた悲惨な出来事を風化させないための、歴史を刻むための資料館の計画。「断種」「失明」「祈り」など、ハンセン病患者の苦しみを室のデザインに昇華させた力量が、難波氏から高く評価された作品。 |
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石川真吾さん |
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古谷誠章賞&赤松佳珠子賞 | 「カルカッタの空の下」 バックパックを背負い、20ヶ国以上を旅した経験を持つという酒井さんは、インドのカルカッタを敷地とした集合住宅を計画。近年、高層住宅が建ち並ぶようになり、伝統的なインド式建築の開放感が失われつつあることを危惧した酒井さん。屋外でのアクティビティが高いインド人の生活スタイルを考慮し、路地空間と生活空間が完全につながるような、徹底して開放的な集合住宅のデザインを考案。ドアも窓もないこの建築は、壁の構成を変えることで抜けやたまりの空間が連続し、スラブはレベルを変えながらリズムを作り、人々の視線や関係をつなぐ。古谷氏と赤松氏から、建築家としての情熱と、それが社会に与えうる影響力という点で、高い評価を受けた作品。 |
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酒井結希さん |
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竹内昌義賞 | 「春を待つ橋の下」 「貧困」を建築の力で克服すると決意した杉山さんは、東京の山谷地区や、横浜の寿町などに暮らすホームレスの実態を調査。その結果、調べれば調べるほど、彼らの実際の暮らしと、周囲の問題意識の低さに断絶を感じたという。杉山さんの作品は、浅草隅田公園を敷地とした、ホームレスのための簡易宿泊施設。公園に集う華やかな観光客たちの姿と、ホームレスたちとの間の隔たりを、谷の形状で表現し、それをつなぐ「橋」にわずかな希望をかける。杉山さんの社会的な問題提起と、思想が空間構成としてまとまっている点が、竹内氏から高い評価を受けた作品。 |
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杉山由香さん |
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中村竜治賞 | 「紡ぐ」 かつては織物の街として栄えていた群馬県桐生市。野口さんは、数多くの文化財、史跡などが建ち並ぶこの地域を舞台に、織物工場の跡地を敷地とし、人と人とのやりとりを紡ぐ、ものつくりの場を計画。人の動きで表情を変える建具で建築を作り、敷地の隙間には染色用の植物を栽培。刻一刻と変化する動きを建具の建築が紡ぎ、桐生の風景を織り成していく。 |
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野口この実さん |
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