広島8大学卒業設計展2013

名称

広島8大学卒業設計展2013

日程 展示:2013年3月2日(土)〜3月4日(月)
審査会:2013年3月4日(月)
審査員 長谷川逸子氏(長谷川逸子建築計画工房)
川辺直哉氏(川辺直哉建築設計事務所)
原田真宏氏(MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO)
司会・進行 家成俊勝氏(dot architects)
会場 旧日本銀行広島支店
主催 広島8大学卒業設計展実行委員会 arc-kids
特別協賛 株式会社 総合資格

例年の8大学に招待校5校を加えた、中国地方最大の卒業設計展

 3月2日(土)〜4日(月)の3日間にかけて、「広島8大学卒業設計展」が開催されました。「広島8大学卒業設計展」は、中国地方の8大学(広島大学、広島工業大学、近畿大学工学部、広島国際大学、広島女学院大学、福山大学、安田女子大学、山口大学)が中心となり、毎年この時期に開催されている卒業設計展です。今年はさらに招待校として5校(穴吹デザイン専門学校、呉工業高等専門学校、米子工業高等専門学校、岡山理科大学、鳥取環境大学)が加わり、合計13校、総出展数89作品という一大規模の展示会となりました。まさに中国地方最大の卒業設計展といえるでしょう。
 会場は例年と同様、「旧日本銀行広島支店」。現存する被爆建築物の一つであり、広島市指定の重要文化財。原爆の痕跡をとどめる遺構として、通常は一般公開されている建築物です。作品の展示は1階のロビーに加え、地下の資料室や金庫室なども利用されるなど、作品を鑑賞しながら、この建築物全体も鑑賞できるような構成となっていました。

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3人の審査員による巡回審査で上位10作品を選出

 今回、審査員として招かれたのは、長谷川逸子氏、川辺直哉氏、原田真宏氏の3人。12時からはじまった巡回審査で、まず3人の採点により上位10作品を選出。3人の審査員とも、作品の審査もさることながら、普段あまり見ることのない、地下の金庫室の光景をしげしげと見つめていたのが印象的でした。

 一次審査の結果、以下の10作品が選出されました。

No. 名前 学校名 作品名
003 山本拓哉さん 近畿大学 「砂丘の境界 鳥取砂丘の再計画」
010 牧佑育さん 近畿大学 「一つの意識 ―所属という意識の共有―」
014 河野祐樹さん 近畿大学 「ごみ美術館 ―見えなかったものを見る―」
020 前田基貴さん 広島工業大学 「歴史・町・人をつなぐ小さな森の駅」
021 川口祥茄さん 広島工業大学 「遊びの場と学びの場」
034 山城信晴さん 広島国際大学 「Camping in the City ―人口減少時代における生活スタイルの提案―」
037 権藤昴子さん 広島女学院大学 「この街の空の下で」
072 中純一さん 山口大学 「線路を辿れば 〜キャンパスをつなぐ〜」
073 藤吉幸平さん 山口大学 「家具のまちの共創住宅」
長谷川逸子氏
川辺直哉氏
原田真宏氏
司会を務めた家成俊勝氏

上位10人によるプレゼンテーションでは中国地方を舞台にした作品が相次ぐ

 14時より、本格的な審査会となる二次審査がスタート。
 冒頭、この設計展の発起人である広島大学准教授の岡河貢氏より、開会の挨拶がありました。一回目は4つの大学による小規模な合同設計展だったものが、これほどの規模にまで成長したこと、さらに今年参加してくれた審査員の方々へのお礼の言葉、また毎年作品集を制作している総合資格学院への感謝の言葉などが語られました。
 挨拶に引き続き、選出された10人全員によるプレゼンテーションがスタート。中国地方の設計展らしく、敷地として広島をはじめ、山口、鳥取など、近隣県を舞台に設定している作品が大部分で、地域色が強く打ち出された、中国地方ならではのプレゼンテーションが繰り広げられました。

長時間に及ぶ議論の末に、ついに優勝者が決定!!

10人のプレゼンテーションが終わり、一回目の採点へ。ここで得点を集めたのは、河野さん(近畿大学)、権藤さん(広島女学院大学)、川口さん(広島工業大学)、山本さん(近畿大学)、山城さん(広島国際大学)の5人。ここから3人の審査員による議論へと移りましたが、一貫して評価が高かったのは、河野さん(近畿大学)が提案した「ごみ美術館」。ごみ問題という社会的な問題提起に加え、それに対する建築的な解答、さらにデザインを含めた全体的な構成まで、審査員全員の評価を集め、最優秀賞に輝きました。その後、各賞の選考過程で議論が戦わされた末に、結果として、各賞が以下のように決定しました。

広島平和祈念卒業設計賞(最優秀賞) 「ごみ美術館 ―見えなかったものを見る―」

世界有数のごみ大国である日本。なかなか解決策が見いだせない根本的な原因は、人々の関心不足にあると考えた河野さん。ほとんどの処分場は人里離れた山奥にあり、人々の目に触れないような形で処理される。ごみ問題の解決のためには、ごみ問題を可視化する必要があると考えた河野さんは、広島市南区の港湾地帯にごみの埋立地をつくり、そこを敷地とした「ごみ美術館」を計画。土地の造成、および建物の建材には、ごみを粉砕して樹脂を混ぜて固めた独自の再生材料を使用することで、環境に対する負荷の低減にも配慮。ごみとは一見わからないブロック状の物体だが、表面にザラザラとした凹凸をつけることで、かつてごみであったことを想起させる形状とする。さらに美術館の各室には、世界中から集めたジャンクアート(ごみを再利用した美術品)を展示。美術館の南面には広々とした開口部を設け、圧倒的なごみの空間から瀬戸内の美しい海を眺められるようにする。

河野祐樹さん (近畿大学)

2位(優秀賞) 「この街の空の下で」

「食育」に関する研究は数々あれど、食べる「場所」について触れられたものは見たことがないと考えた権藤さんは、正しい食育のための「場所」を提案する。広島市中心部の「本通り」のアーケード部分をリフォーム。アーケードを2層とし、スロープ状にして、屋上まで徒歩で渡れる構造とする。アーケードの随所に起伏をつくり、机になったり、椅子になったりと、自由な「食」を楽しめる空間を演出する。本通り沿いに並び、向かい合っている、商店街が入ったビル群。それらをつなぐ「2層アーケード」という独特の形状が高く評価された作品。

権藤昴子さん(広島女学院大学)

3位(優秀賞) 「遊びの場と学びの場」

子供たちの遊び場が次第に消えつつあることを憂慮した川口さんは、子供たちの遊び場を十分に確保すると同時に、地域に対して開かれた小学校を提案。各学年ごとにフロアレベルを変えることにより、教室の下部に自由に遊び回れるアスレチック的な空間をつくる。女性らしいきめ細やかな建築であり、視角の抜けや、フレームの軽さなど、デザイン的な部分が特に高く評価された作品。

川口祥茄さん(広島工業大学)
4位(優秀賞) 「砂丘の境界 鳥取砂丘の再計画」

鳥取県最大の観光地「鳥取砂丘」。砂丘の周囲には「防砂林」が植林されれているが、近年、この防砂林が砂丘を侵食し、砂丘の面積が徐々に減っているという。山本さんの提案は、鳥取砂丘の保護プロジェクト。砂丘と防砂林の間に、チューブ状の建築を配置し、人のいる「境界」を作ることにより、林の拡大を食い止め、建築そのものも風景に溶け込ませる。ファサードはガラス製とし、建築の内部から砂丘の動的な変化を鑑賞することができる。「人、砂、緑が混じりあった混沌とした新しい建築が生まれる可能性がある」と、長谷川氏から高く評価された作品。

山本拓哉さん(近畿大学)

その他の各賞

長谷川逸子賞  
河野祐樹さん(近畿大学) 「ごみ美術館 ―見えなかったものを見る―」
川辺直哉賞  
権藤昴子さん(広島女学院大学) 「この街の空の下で」
原田真宏賞  
山城信晴さん(広島国際大学) 「Camping in the City ―人口減少時代における生活スタイルの提案―」
市民賞  
中純一さん(山口大学) 「線路を辿れば 〜キャンパスをつなぐ〜」

集合写真

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