「デザイン女子bP決定戦 2013 NAGOYA」
「デザイン女子bP決定戦 2013 NAGOYA」
名称 |
「デザイン女子bP決定戦 2013 NAGOYA」 |
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開催日 | 展覧会:展示 2013年3月13日(水)〜3月14日(木) |
会場 |
サーウィンストンホテル 2階 メゾン・ド・オペラ |
審査員・司会 |
審査委員
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主催 |
デザイン女子No.1決定戦実行委員会 |
特別協賛 |
株式会社 総合資格 |
3月13日(水)・14日(木)の二日間、名古屋のサーウィンストンホテルを舞台に、 「デザイン女子bP決定戦 2013 NAGOYA」が開催された。
本卒業設計・制作展は、その名が示す通り建築・デザインを学ぶ女子学生を対象としており、2年目となる今年は全国から82点がエントリーされ、昨年よりも大きくスケールアップした。
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- 実行委員会の学生もすべて女子学生
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- 会場の内装も華やかだ
このイベントの仕掛け人は、椙山女学園大学で教鞭を執る村上心教授だ。
女子学生だけの建築・デザイン系イベントと言うだけで話題性は十分にあるが、建築系女子の教育に長らく携わっている村上教授の視界の先にあるのは、学生が卒業後に向き合うことになる「社会」。それと学生がどう関わって行けるのかに向けられている。
つまり、大学時代に学び身につけた知識やスキルを武器として、女子学生が社会に飛び出して行けるよう、地力を養成する場がこのイベントなのである。
この考えに呼応するかのように、本年度も完成度の高い作品が数多く出展された。
ファイナルとなる14日の公開審査に先立ち一次審査が行われ、82点から選抜された45点の作品が会場であるホテル内のメゾン・ド・オペラに展示された。
- 赤松 佳珠子氏(審査委員長/Catパートナー)
- 神谷 利徳氏(審査委員/神谷デザイン事務所)
- 大西 麻貴氏(審査委員/o+h)
- 村上 心氏(審査委員/椙山女学園大学/大学院 教授)
公開審査当日は、まず午前中に審査委員による巡回審査が行われ、ここからファイナルに進出する8作品が選ばれる。出展者は自分の作品の傍らに立ち審査員が巡回してくるのを待っている。その顔には緊張の色が見え隠れする。審査員の質問に対して、初めは不安げに答える学生も見られたが、皆一様に最後にはしっかりとクリティークを見据え、自分の言葉で考えを伝えようとしていた。時間にすると数分間の出来事だが、この変化からも分かるように、彼女たちにとっては何事にも代え難い大きな経験だったに違いない。
- 巡回審査に臨む村上教授
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- 学生間での積極的な意見交換
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- 審査委員を務めた神谷氏
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- プロダクトの出展もあるのがこのイベントの大きな特徴 写真(2)〜(3)も
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- (2)
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- (3)
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- 模型にも随所に女性ならではの感性が光る 写真(4)〜(5)も
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- (4)
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- (5)
巡回審査後には審査委員によりファイナル進出作品の選定が行われたが、甲乙つけ難い力作揃いに審査は難航した。その結果、ファイナルに選出された作品は以下の通り。
No. | 名前 | 学校名 | 作品名 |
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015 | ![]() |
慶應義塾大学 | 「永安里的変化(えいあんりてきへんか)」 |
016 | 森香織さん | 芝浦工業大学 | 「床下の小宇宙〜地域に根ざした通学路の設計〜」 |
042 | 野口この実 | 神奈川大学 | 「紡ぐ」 |
044 | 加藤千恵 | 名古屋芸術大学 | 「森を、想う。」 |
047 | 西川令花さん | 椙山女学園大学 | 「どたばた!!ひがしやま」 |
059 | 大園咲子さん | 九州大学 | 「つかず、はなれず。」 |
067 | 白鳥恵理さん | 慶応義塾大学 | 「過疎ノ手―フローティングユニットによる沿岸部過疎地域への物流支援、活性化―」 |
064 | 植村洋美さん | 武庫川女子大学 | 「炭坑の唱歌(ヤマのウタ)―去来する筑豊の姿―」 |
ファイナルは公開審査形式で行われた。ファイナリストそれぞれがプレゼンテーションを行い、その後に質疑を行う流れで進行していく。通常の卒業設計展と異なり、建築のみならずプロダクトデザインの出展も行われるのが本イベントの大きな特徴であるが、ファイナルのプレゼンテーションを通じて、それぞれの特徴がより明確になっていく。マーケットを意識するという点では、プロダクト系の方がよりユーザーの視点を意識している傾向があり、すぐに商品化できそうな展示も見られた。一方、コンセプトメイキングやリサーチの面で見ると、建築系の方がよりロジカルに構成されている傾向にあり、見る側に対して説得力がある作品が多い。それらに加えて、出展作品群全体では、女性ならではの視点や感性が随所に感じられる。これだけでも、本イベントが如何にオリジナリティに溢れ、希有な存在であるかお判りいただけよう。
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- 昨年に続き審査委員長を務めた赤松氏
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- 質問をする大西氏
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- 審査委員と出展者の距離が近いのも本イベントの特長
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- 熱の入った質疑が行われた
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- プレゼンをする044.加藤さん
さて、話は戻ってファイナルの審査。それぞれの熱のこもったプレゼンテーション終了後、審査委員により推薦する3作品への投票が行われた。その結果、4人の審査委員すべてから票を得た作品が2点。
044. 加藤千恵さん(名古屋芸術大学)「森を、想う。」と067.白鳥恵理さん(慶応義塾大学)「過疎ノ手―フローティングユニットによる沿岸部過疎地域への物流支援、活性化―」だ。
加藤千恵さん (名古屋芸術大学) |
「森を、想う。」
加藤さんの作品は、間伐材を利用したスツールの提案。銘木の産地に隣接する地域の木材が、品質が高いにもかかわらず、ブランドを持たないだけで格下とされていることや、木が間引かれることによって発生する間伐材の有効活用の可能性に着目した。これらを、社会に対して、言葉ではなく目に見える形で伝えたいというのが加藤さんの根底にある考えだ。社会的・経済的なリサーチとそれに対する提案がしっかり構築されている点や、作品そのもののフォルムや素材を活かした美しさなど、そのまま商品化できそうな、総合的な完成度が高く評価された。 |
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白鳥恵理さん (慶応義塾大学) |
「過疎ノ手 - フローティングユニットによる沿岸部過疎地域への物流支援、活性化 - 」
白鳥さんの作品は、社会全体の問題となっている高齢化による過疎や限界集落に着目した作品。特に、沿岸部の過疎地域に対する提案であり、六角形のフローティングユニット(浮島のようなもの)の組み合わせで形態や機能をフレキシブルに変化させることができる提案だ。建築の舞台を地上ではなく海上に求めることによって、敷地(海上であるが)の選択肢が飛躍的に拡大すると共に、周辺環境に対する制約も大きく軽減され、移動がしやすくなるなどの利点がある。一見、突飛に見えるが実によく練られた提案であると、こちらも高い評価を得た。 |
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- 決選投票の結果は…
この2点からデザイン女子bPとbQが選出されることになり、決選投票が行われた。
その結果、2013デザイン女子bPの栄冠に輝いたのは044. 加藤千恵さん(名古屋芸術大学)「森を、想う。」。前述の通り、卒業設計としての評価だけでなく、プロダクトとしても高く評価されたことが決め手となった。
その他、各賞は以下の通りとなった。
デザイン女子No.1 | |||
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044 | 加藤千恵さん | 名古屋芸術大学 | 「森を、想う。」 |
デザイン女子No.2 | |||
067 | 白鳥恵理さん | 慶応義塾大学 | 「過疎ノ手―フローティングユニットによる沿岸部過疎地域への物流支援、活性化―」 |
デザイン女子No.3 | |||
064 | 植村洋美さん | 武庫川女子大学 | 「炭坑の唱歌(ヤマのウタ)―去来する筑豊の姿―」 |
特別賞 | |||
015 | ![]() |
慶應義塾大学 | 「永安里的変化(えいあんりてきへんか)」 |
016 | 森香織さん | 芝浦工業大学 | 「床下の小宇宙〜地域に根ざした通学路の設計〜」 |
042 | 野口この実さん | 神奈川大学 | 「紡ぐ」 |
047 | 西川令花さん | 椙山女学園大学 | 「どたばた!!ひがしやま」 |
059 | 大園咲子さん | 九州大学 | 「つかず、はなれず。」 |
オーディエンス賞(来場者による選出賞) | |||
002 | 杉崎奈緒子さん | 慶應義塾大学 | 「ヒダ - 多様性が混在する集住 - 」 |
公開審査後に行われた表彰式もデザイン女子bPらしさに溢れていた。
bPに輝いた加藤さんには賞金や英会話無料券の他に、bPの証としてオリジナルのプルミエール・ケープが贈られ、プロの手によるメイクアップが施された。この賞金や副賞、メイクアップはすべて本イベントの企画趣旨に賛同した協賛企業から提供された。また、協賛企業には女性が起業した会社が多いのも特徴の一つである。
このことも、本イベントが本気で女性と社会の向き合い方を考えサポートしていることを表している。
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- 左からbQの白鳥さん、bPの加藤さん、bRの植村さん
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- 副賞を手渡す総合資格学院 学院長 岸
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- 加藤さんには副賞のケープが贈られた
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- 入賞者と審査委員、実行委員
本イベントの仕掛け人である村上心教授からは、以下のコメントが寄せられた。
「デザイン女子No.1 2013には、北は東北から南は沖縄までの各地より御応募をいただきました。審査員も多くの力作に心打たれ、No.1を選ぶ決定過程も非常に難しいものでした。No.1に輝いた加藤千恵さんの作品「森を、想う。」は、深い思考とデザインプロセスに裏付けられた極めて完成度の高いプロダクト作品でした。デザイン女子No.1は、建築のみならず、インテリアやプロダクトを含む幅広い分野を対象としています。分野間で、プロダクトの高い完成度、建築の哲学的説明、インテリアの一分の一のディテールなどの特長に刺激を受け合う機会となっていると実感しました。
デザイン女子No.1 2013にご応募いただいた学生の皆様、ご協力いただいた協賛企業の皆様、学生実行委員として支えていただいた皆様に、実行委員会を代表して心より感謝致します。」
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- 懇親会での総合資格学院 学院長 岸の挨拶
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- 本イベントの成功を陰から支えた椙山女学園大学の面々
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- 実行委員の藤田氏による乾杯。オフィシャルサイトの制作などPRの面からイベントを支えた
出展数も大きく増加し、盛況のうちに幕を下ろした「デザイン女子bP決定戦 2013 NAGOYA」。 そこには、女性の華やかさと共に、社会と正面から向き合おうという決意が溢れていた。