NAGOYA Archi Fes 2014 中部卒業設計展

NAGOYA Archi Fes 2014 中部卒業設計展

名称

NAGOYA Archi Fes 2014 中部卒業設計展

日程 作品展示 2014年3月18日(火)〜3月19日(水)
審査会 2014年3月18日(火)
会場 作品展示 吹上ホール 9階展望ホール
審査会 吹上ホール 7階メインホール
一次
審査員
  • 鵜飼昭年氏(AUAU建築研究所)
  • 恒川和久氏(恒川和久建築研究所/名古屋大学准教授)
  • 佐々木勝敏氏(佐々木勝敏建築設計事務所)
  • 生田京子氏(名城大学准教授)
  • 辻琢磨氏(403architecture [dajiba])
  • 富岡義人氏(建築デザイン研究所/三重大学教授)
  • 武藤隆氏(武藤隆建築研究所/大同大学教授)
  • 米澤隆氏(米澤隆建築設計事務所)
二次
審査員
  • 五十嵐太郎氏(東北大学大学院教授)
  • 西沢立衛氏(SANAA/西沢立衛建築設計事務所/横浜国立大学大学院Y-GSA教授)
  • 城戸崎和佐氏(城戸崎和佐建築設計事務所)
  • 谷尻誠氏(Suppose design office)
  • 藤村龍至氏(藤村龍至建築設計事務所)
主催

NAGOYA Archi Fes 2014 中部卒業設計展実行委員会

共催

株式会社総合資格

想像を超える規模で今年からスタートした
中部地方最大の卒業設計展

3月18日(火)〜19日(水)の2日間にかけて、「NAGOYA Archi Fes 2014 中部卒業設計展」が開催されました。中部地方の卒業設計展は、かつての「東海地区卒業設計展」にはじまり、「dipcolle」へと受け継がれてきましたが、今年からさらに規模を拡大し、名称も新たに、「NAGOYA Archi Fes(名古屋アーキフェス)」として生まれ変わりました。この設計展は、中部地方の8県(愛知、岐阜、三重、静岡、長野、富山、石川、福井)を対象地域とし、一般公募で集まった作品の中から、優勝者を決定するというもの。今年が初めての開催であるにもかかわらず、中部地方の16の大学・高専から、総勢94作品が集結しました。
記念すべき第1回目となる今回のテーマは「はじまりの瞬間を見逃すな」。今まさに、この場所で生まれようとしている、中部地方の新たな建築のムーブメントを見逃さないでほしいという意味が込められています。名古屋の建築学生を中心とする合計100名を超える実行委員会のメンバーにより、企画・運営された本設計展。会場となった吹上ホールには、当初の予想以上に大勢の観客が詰めかけ、大変な盛り上がりを見せました。

早朝に行われた実行委員会のメンバーたちによる集合写真撮影。名古屋の建築学生を中心に、100名を超えるメンバーがこの大会の運営に参加した。

会場となった吹上ホール。
大勢の来場者でにぎわう展示会場。
ポスターセッションの様子。
学生の方には当学院より無料で書籍プレゼント。

一次審査のポスターセッションはスマホ連動のリアルタイム集計

一次審査はポスターセッション。8名の一次審査員が、事前資料の中から詳しく話を聞きたい作品を数点ピックアップし、出展者からの説明を受けます。このとき、それぞれの出展者の持ち時間は6分間。使い方は自由で、制限時間内であれば、どのようなアピールも許されます。
一次審査員はそれぞれ24点の持ち点を持ち、気に入った作品に自由に得点を配分していきます。配点方法は、スマホに搭載したアプリから、投じたい点数をその場で入力していくというもの。得点の状況は、会場内に設置されたプロジェクターで放映され、リアルタイムに参加者に知らされます。この一次審査で、点数順に上位8名を選出。またそれ以外にも、二次審査員が特に推薦したい作品があれば、特別枠として選出されます。当日の会場では、二次審査への進出をめぐり、壮絶なデッドヒートが繰り広げられていました。

鵜飼昭年氏
恒川和久氏
佐々木勝敏氏
生田京子氏
辻琢磨氏
富岡義人氏
武藤隆氏
米澤隆氏
一次審査員は、持ち点の中から自由に配点が可能。入力はスマホに搭載したアプリから。
得点の状況は会場内に設置されたプロジェクターで、リアルタイムに放映。

二次審査は会場をメインホールに移動し、大勢の観衆が見守る中での公開審査会

二次審査は、会場をメインホールに移動しての公開審査会。一次審査での上位8作品に加え、二次審査員による特別枠4作品を合わせた、合計12作品によるプレゼンテーションが繰り広げられました。プレゼンの持ち時間は1人あたり5分間。その後、5分程度の質疑応答時間。一次審査のときには伝えきれなかったことも含めて、作品全体の魅力を、この時間内にアピールできるかが勝負となります。
本設計展に賛同し、初回から快く審査員を引き受けてくれた審査員の方々ですが、厳しいコメントが発せられることもしばしば。参加者はみな一様に緊張した面持ちながらも、自らの作品の意図するところをさかんにアピールし、熱のこもったプレゼンテーションが繰り広げられました。

■二次審査進出作品

名前 学校名 作品名
佐野智哉さん 名古屋工業大学 「加子母大学」
藤江眞美さん 愛知工業大学 「伽藍の跡 都市化する6つの寺の編集」
澤崎綾香さん 信州大学 「コワレカタノツクリカタ」
平翔さん 名古屋工業大学 「交錯する在処 − gelande = museum」
大矢知良さん 名古屋工業大学 「ナゴヤターミナル −2027年、インフラ快楽主義時代の到来−」
杉浦舞さん 名古屋大学 「変容する皮膚、群体の意志」
安藤彰悟さん 愛知工業大学 「新輪中ノ都 -序- 」
宮地智史さん 金沢工業大学 「都棚のひきだし」
橋本亜子さん 名古屋工業大学 「ハレノモリ」
日野達真さん 名城大学 「園」
山本将太さん 名城大学 「記憶の祝祭」
平野遥香さん 名城大学 「まちのケイショウ 形象/継承」

■二次審査員

五十嵐太郎氏
西沢立衛氏
城戸崎和佐氏
谷尻誠氏
藤村龍至氏

白熱した激論の末、栄冠を手にしたのは
名古屋大学の杉浦さんの作品

審査員たちの議論も二転三転し、審議は長時間に及びました。結局、最終的に栄冠を手にしたのは、昆虫の外骨格を建築に応用するという異色なコンセプトが際立った、名古屋大学の杉浦さんの作品となりました。2位には信州大学の澤崎さん、3位には名古屋工業大学の佐野さんと続きました。
今年が初めての開催ということもあり、現場では多少の混乱も見られましたが、実行委員会の熱い思いはしっかりと伝わった大会となりました。本設計展の実行委員会は1〜3年生が主体で、4年生は雑事にとらわれずに作品に打ち込めるという構成。世代間のつながりを重視した運営が印象的な設計展でした。3年生のみなさんは、今回の大会で学んだことを活かし、来年、さらに素晴らしい作品を出展してほしいと思います。

1位(最優秀賞) 「変容する皮膚、群体の意志」

都市が昆虫の群れへと変容するイメージから導かれたという本作。杉浦さんの提案は、食料不足から100年以内に昆虫食が一般化することを見越し、その残滓となる昆虫の外骨格に含まれる「キチン質」を利用した、新建材による建築物。長期間におよぶ耐久性を持つ建築ではなく、個体の死のサイクルに近い、短期サイクルの建築の提案。3Dプリンターの利用により、またたくまに新たな建築が生み出され、都市自体が常に変容し、進化し続ける。作品のコンセプトにインパクトを付加するため、杉浦さんのプレゼンテーションの前半は、都市が昆虫に覆い尽くされるSFホラー仕立てのムービーとなっており、観客を驚かせた。審査員の西沢氏からは「彼女は頭がよく、たくましく、勝つために、したたかに作戦を練って臨んできた」、城戸崎氏からは「彼女自身から、未来を自分で作るんだという力強い意志が感じられ、その力強さに対して票を投じた」と評されるなど、プレゼンの力量が高く評価された作品。

杉浦舞さん
(名古屋大学)

2位(優秀賞) 「コワレカタノツクリカタ」

澤崎さんの故郷、松本市のシンボル松本城では、現在、市が中心となり、外堀の復元計画が進められている。しかし、大正元年に埋め立てられた外堀の跡地は、現在は民有地となっており、多くの民家が立ち並んでいる。松本市は立ち退きに関し、納得して立ち退いてくれるまでいつまででも待つというスタンスであり、最終的な完成はいつになるか予想できない。澤崎さんの提案は、完成までの間、都市活動に空白期間をつくらないため、虫食い状に空いた土地に、民家の廃材を再利用して建てる資料館の計画。外堀の復元作業をひとつの壮大な文化活動として、市民全員が関われるプロジェクトとすることをめざす。西沢氏からは「全体的なスケールの大きさ、時間感覚の雄大さが素晴らしい」と高く評価されるなど、最後まで1位と競いあった作品。

澤崎綾香さん
(信州大学)

3位(優秀賞) 「加子母大学」

佐野さんが敷地に選んだのは、岐阜県中津川市の山間にある旧加子母村。以前、この村を訪れた際に聞いた、一人の住民からの「大学を作りたい」という発言をヒントに、この村全体をキャンパスとした大学の建設を考えた佐野さん。地域住民の中から教えたい人を募り、学びたい人が集まり、本来の意味での学び舎を形成する。山の斜面に沿うように施設を配置し、田んぼ、畑、森などをオープンスペースとして利用し、維持・管理は地域住民と学生たちが共同で行う。元々、卒業論文の制作のためにこの村のリサーチを行っていたという佐野さん。圧倒的なリサーチ量が高く評価された作品。

佐野智哉さん
(名古屋工業大学)

五十嵐太郎賞 「まちのケイショウ 形象/継承」

どのような場所にも堆積されている歴史的記憶。そうした場所の記憶を読み取り、さらに建築を介して空間的な骨格として体現し、その記憶を継承していくことをめざしたという平野さん。敷地は名古屋市昭和区の「川名公園」。現在、防災公園として存在するこの広場は、かつては「川名村」として人々が普通に暮らす土地だった。現在の広々とした公園の中から川名村の痕跡を読み取り、さらに100年後にも継承していくことをめざした本作。審査員の五十嵐氏は、自らが取り組んでいる震災復興のプロジェクトと照らし合わせながら、「一般的にはどうでもいいと思われるような風景の中に、記憶の痕跡をとどめる作業は、被災地の問題に取り組んでいる自分と、個人的に通じるものがある」と評した。

平野遥香さん
(名城大学)

藤村龍至賞 「ナゴヤターミナル −2027年、インフラ快楽主義時代の到来−」

2027年に開通予定のリニア中央新幹線。開通にあたり、名古屋駅では東西1km・地下30mにおよぶ開発が決定している。しかし、従来の地下と地上を分断するような開発では「インフラと建築の乖離」が生じてしまうことを危惧したという大矢知さん。本作では、インフラと建築を「快楽的」に一体化させることにより、地下と地上が相互連携した未来型のターミナルを提案している。地下のインフラの力強さを顕在化させたいという思いから、本作に取り組んだという大矢知さん。審査員の藤村氏から、「建築的なモニュメントの少ない名古屋の新しいシンボルに」と評された作品。

大矢知良さん
(名古屋工業大学)

  • ※西沢立衛賞、城戸崎和佐賞、谷尻誠賞は該当作品なし。

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