住宅課題賞 2015
住宅課題賞 2015
名称 |
第15回 住宅課題賞 2015 |
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日程 | 開催日:2015年10月19日(月)〜11月6日(金)10:00〜18:00 公開審査:10月24日(土) |
審査員 |
審査委員長
審査委員
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司会進行 |
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主催 |
東京建築士会 |
特別協賛 |
株式会社 総合資格/総合資格学院 |
女性出展者が約7割を占めた2015年度大会
2015年10月24日(土)、竹中工務店東京本店において、「住宅課題賞 2015」の公開審査が行われた。今年で15回目を迎える本設計展は、首都圏の大学の授業で課された住宅課題を対象としている。各大学学科から優秀作品が1作品出展され、今年は昨年から3作品増え、48作品が出展された(37大学48学科参加)。この48作品は各大学での審査を経ているので、出展された時点で入賞となる。公開審査ではその中からさらに優秀賞1等〜3等、審査員賞が選出される。
なお、住宅の課題は1年時、2年時に出されることが多く、出展者は2年生、3年生が多い。そのため本設計展が、学内の枠を超えた初めての他流試合という出展者が多く、それが本設計展の持つ意義の一つと言える。また、キッチンやインテリアなどと関係が深い住宅が本設計展のテーマだからなのか、毎年女性の出展者が多い。特に今年は48作品中33作品が女性であった。
4世帯30人の大家族用集合住宅が1等に
審査は昨年に引き続いて、審査委員長を編集者・建築評論家の植田実氏が、司会進行を木下庸子氏(工学院大学教授)が、務めた。その他、石田敏明氏(前橋工科大学教授)、木島千嘉氏(木島千嘉建築設計事務所)、濱野裕司氏(竹中工務店)、吉松秀樹氏(東海大学教授)が今年の審査員として招待された。
- 審査委員長・植田実氏
- 審査員・石田敏明氏
- 審査員・木島千嘉氏
- 審査員・濱野裕司氏
- 審査員・吉松秀樹氏
- 司会進行・木下庸子氏
公開審査当日は、まず事前審査としてポスターセッションが行われた。ポスターセッションは、審査員が巡回しながら作品の前に立つ出展者からプレゼンを聞いたり、質疑応答をする審査方式。展示会場である「ギャラリーエークワッド」は、慣れないながらも審査員に真剣にプレゼンテーションをする学生の姿が見られた。
- 展示会場は多くの学生で賑わった。作品の他、各大学の課題も展示してある(写真左)
- 巡回審査で審査員の吉松氏にプレゼンをする学生
午後は会場をホールに移して、公開審査会が行われた。審査会の前半では、植田実審査委員長以外の審査員4人が各自12作品ずつ担当し、担当作品に対して簡単な講評を行った。出展者は2年生や3年生が多い。彼らは学外の教員や建築家からの講評を受けた経験が少なく、今回の講評は貴重な経験となったであろう。
出展者全員への講評の後、審査は1次投票に移り各審査員1人7票ずつ投票を行い、結果20作品に票が入った。その20作品の中でも、2票以下の作品について順番に審査員による応援演説と議論がなされたが、その中でも東京藝術大学・川口ほたるさんの「元三段ベッド」で議論が白熱した。川口さんの作品は、4人家族の家において、ベッドを中心に各部屋をずらしながら配置した住宅。あたかも2段ベッドが住宅に成長したような形態で、文学的な意味合いからも興味深い、という評価を得た。
審査員による講評が済むと休憩を挟み、最終投票が行われた。各審査員1点・3点・5点の重み付けで3作品に投票。結果、15点を集めた法政大学・野間知英さんの作品「IDOBATAMARI 〜釜川沿いの集合住宅〜」が優秀作品1等となった。斉藤さんの作品は、4世帯30人という大家族の住宅。色で各年代のスペースを分けたり、部屋のレベル差で家族のスペースを分けたりしている点が評価された。その他、2等、3等、審査員賞は別表の通り。出展者は女性が多かったが、受賞者も女性が多くなり、8人中7人が女性で男性は1人であった。次回は男性のがんばりに期待したい。
- 優秀賞1等の法政大学・間野知英さん
- 優秀賞1等の間野さんの作品「IDOBATAMARI 〜釜川沿いの集合住宅〜」
住宅を根本から考えて欲しい
審査会の後は会場1Fのエントランスホールに移り、出展者、審査員、特別協賛である当学院との交流会が行われた。出展者には、宇都宮大学や前橋工科大学など東京から遠い大学もあり、そういった大学の学生は普段はあまり他大学との交流が少ないため「とてもいい機会」と話していた。大学で取り組んだ課題をもとに競い合う本設計展は、各大学の情報共有と交流を促すことが目的のひとつ。今後も学生のみならず、教員も含めた情報共有・交流の場となることを期待したい。
- 授賞式では、当学院の安島才雄部長より、副賞として『建築模型で学ぶ! 木造軸組構法の基本』ほか書籍が贈られた
懇親会の締めの挨拶で、司会進行の木下氏から審査委員長の植田実氏のコメントが報告された。コメントは木下氏の「今年は受賞作品に集合住宅が偏ってしまったのではないか?」という疑問に対する植田氏の答えであったが、植田氏は「集合住宅はその性格上、計画から見直している作品が多かったが、戸建て住宅の作品は各室の機能などがもう決まったものとして、根本から見直す案が少なかった」と答えたという。「若い学生にとっては、建築を根本から考える訓練のいい機会なので、ぜひ今後も継続して考え抜いて欲しい」と木下氏は締めくくった。
奥が審査員で手前が受賞者。受賞者のうち男性は1人
審査員と出展者48人
- 立食形式で行われた交流会。各大学間の交流も進んだ
- 学院のスタッフも参加。出展者と和やかなひと時を過ごした
■ 受賞者リスト
賞 | 学校 | 名前 | 課題 | タイトル |
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優秀賞1等 | 法政大学デザイン工学部建築学科 | 間野知英 | 大きな家 | IDOBATAMARI 〜釜川沿いの集合住宅〜 |
優秀賞2等 | 明治大学理工学部建築学科 | 牧戸倫子 | 目黒川沿いの集合住宅 | 小さくて大きなくらし |
優秀賞3等 | 日本大学生産工学部建築工学科建築デザインコース | 伊藤優太 | 大久保通りを元気にする集合住宅 ― 多様性を取り込んだ集合住宅 | 壁生まれる表裏 |
植田実賞 | 東京藝術大学美術学部建築科 | 川口ほたる | 住宅U | 元三段ベッド |
石田敏明賞 | 芝浦工業大学工学部建築学科 | 斉藤有生 | 様々に変化する生活シーンを考えた住宅 | すその家 |
木島千嘉賞 | 日本大学理工学部建築学科 | 伊勢萌乃 | 住宅 | 機能と余白の家 |
濱野裕司賞 | 武蔵野大学環境学部都市環境専攻 | 岩田舞子 | 働きながら住む10世帯の空間 | 土地に架かる 〜働きながら住む10世帯の空間〜 |
吉松秀樹賞 | 東京理科大学工学部第一部建築学科 | 御園御美久 | 神楽坂に住む | Teahouse Garden |