第4回 アジア建築新人戦

『大座会』〜其ノ十〜

名称

『大座会』〜其ノ十〜

日程 2016年12月10日(土)
会場 総合資格学院 新宿校
ゲスト 手塚貴晴氏・手塚由比氏
後援 大成建設 設計本部、総合資格学院(開催協力)

2016年12月10日(土)、総合資格学院 新宿校にて、前田紀貞建築塾主催のトークライブ『大座会』〜其ノ十〜が開催されました。
 四半期に一度、同塾塾長である前田紀貞氏のもと、前田紀貞アトリエ経営のバー「典座(TENZO)」に、著名建築家をゲストに招いて行われる即興トークライブ「座会」の10回目。今回の「大座会」は、その出張拡大版で、手塚貴晴氏と手塚由比氏をゲストに招いて行われました。世界中でプロジェクトを手掛ける気鋭の建築家である両氏だけに、事前募集も早々に打ち切られるほどの人気で、当日も開場から数分で観覧席は埋め尽くされました。

総合資格学院 新宿校の一教室をバーに見立て、間接照明のみのムーディな雰囲気を演出。「手塚貴晴さん・由比さん、どうやって建築家になりましたか?」をテーマに、暗がりの中、グラスを傾けながら前田氏はゲストと小気味のよいトークを繰り広げました。

前田紀貞氏
手塚貴晴氏(左)・由比氏(右)
あの代表作の裏話など他では聞くことのできないトークが展開された

それぞれの生い立ちから、奇しくも建築とともに歩んできたこれまでの半生や、誰もが知っているあの代表作の裏話など、普通の講演会では決して聞くことのできないトークが、観客を交えたカタチで展開されました。
本稿では、観覧席から感嘆や驚きの声が挙がった、両氏の人生を大きく左右した、逸話の一部を抜粋してお届けします。

婚姻届けは代筆!?

【貴晴氏】由比と2人で海外のいろんなところに行っていました。あるとき私の親父に「(由比氏と)結婚もしていないのに2人で海外をふらつき歩いて、不謹慎だ。これからどうするんだ?」と言われまして、私は「結婚するんだろうなぁ」とか応えていたんですけど、うちの親父はとにかく手の早いやつで、由比の家に行って「娘さんをお嫁にください」とか言って。そしたら由比の親父さんも「いいんじゃないですか」とか言ってね。そんなこんなで結婚が決まったわけですが、ある日、当時の事務所(リチャード・ロジャース・パートナーシップ・ロンドン)にFAXが送られてきたんだけど、それが婚姻届なんです。うちの親父が私の代わりになぜか婚姻届にサインをしちゃってましたよ、私に何の断りもなしに(笑)。事務所の同僚は「日本は進んでいるな。FAXで結婚できるのか」と驚いていたね。

【由比氏】そのとき実は私はまだ在学中で、学生結婚なわけですよ。それこそ卒業設計で徹夜で泊り込みをしている、目の下クマだらけの状況で、ウェディングドレスの仮縫いとか、私は何をやっているんだろうと思ってました。なので3月に卒業して、5月に結婚していました。手塚はロンドン勤務で、私もそっちに行くんだろうなぁと。で、ロン・ヘロンの下で学びたかったのでロンドン大学に行くことにしました。

パーソナルカラーの謎

【由比氏】こどもの頃からよく赤を着ていて、好きな色でした。イギリスの建築家は青いシャツを結構着ていて、手塚も青を着ていました。今の事務所をつくった時に名刺をつくることになって、その色で決めちゃおっかって、ノリで決めて今にいたるわけです。ちなみにはじめに買ったクルマは黄色の2CV(シトロエン)だったので、共有物の色はその後黄色となりました。

【貴晴氏】リチャードはピンクを着ていますが、もともと彼も青を着ていたんだけど、みんなが青を着るようになったので、誰も真似できないピンクにしたんだよなぁ。

(中略)

【観覧客】本当に赤と青の服しか着ないんですか?

【由比氏】そうですね。赤と青しか着なくなっちゃいましたね。今着ているシャツだけでも何十枚も持ってて、講演会のときに見つけたタイのシャツ屋でつくってもらっています。服について何も考えなくていいから、これ以上楽なことはないですね。娘は黄色で、保育園のときから着てるんですが、娘の友達のお母さんが、自分の子供用に買った黄色い服を私にくれるんです。それは娘の友達が「黄色は○○ちゃん(娘の名前)の色だから」と着てくれないからなんですけどね。今では娘は黄色しか着ていません。けど決めちゃうとホント楽ですよ。ちなみに息子は緑を着ていて、家族の洗濯物も仕分けとかすぐできちゃう。

夫婦で一緒に仕事をやるコツ

【観覧客】夫婦でやっていてケンカはしないんですか?

【由比氏】設計でケンカはしないです。建築に関しては価値観が似ているので。2人で「いいね」と思うところまで設計するので、建築ではケンカすることはないですが、家庭ではいっぱいします。私がよく散らかすので、手塚は文句をウーウーいってますよ。

【貴晴氏】その質問は、海外で講演しているとよく訊かれますね。どうやって夫婦で仕事してるんですかってね。それは簡単ですよ。相手のいうことを聞いていればいいんです。そういうことです(笑)。けど、うちの奥さんのいうことは一応理屈があって、「2人でよいと思わなきゃ、とうしてみんながよいと言うんだ」って、まぁそれがうちの事務所のひとつのポリシーになっていますね。ひとりでやっている人はエライと思います。ひとりだと見えなくなっちゃうと思うんですよ、いろいろと。ちょっとしたところで補い合えるというのは、2人でやっていて面白いところだなと思うわけです。

予定では30分で終わるはずだったゲストレクチャーは、いつのまにか1時間半が経過。両氏の話は予想をはるかに超えて盛り上がり、座談会は終了時間を迎えました。その後、観覧客を交えた懇談会が催され、こちらも座談会に負けず劣らずの本音トークが繰り広げられました。

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