Diploma×KYOTO'15
Diploma×KYOTO’16
名称 |
Diploma×KYOTO’16 |
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開催日 | 2016年2月27日(土)〜2月29日(月) |
会場 | 京都市勧業館みやこめっせ3F 第三展示場 |
審査員 |
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司会 | 倉方俊輔氏(日本建築設計学会「建築設計」編集長) |
主催 |
京都建築学生之会 |
特別協賛 |
株式会社総合資格/総合資格学院 |
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- 内藤 廣 氏
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- 忽那 裕樹 氏
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- 手塚 由比 氏
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- 羽鳥 達也 氏
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- 倉方 俊輔 氏
多角的な視点で審査される注目の設計展
建築を志す学生が大学の活動を目的として1989年に発足した京都建築学生之会。ここが主催する合同卒業設計展「Diploma×KYOTO’16」が、2月27〜29日の3日間、京都市勧業館みやこめっせ(京都市左京区)で開催された。
今年で25回目となった同設計展は「大学で学び、そしてdiplomaで得た成果はゴールではない。夜明け前の東雲のように夜が明け、私たちは建築家としてのスタートを切る」との思いを込めたテーマ『Shinonome』の下、19大学2専門学校、172作品が出展された。展示作品が多角的な視点で審査される注目の設計展であり、1日目は第一線で活躍する建築家による審査、2日目は関西ゆかりの若手建築家による審査、3日目は出展者・来場者による投票によって、それぞれの優秀作品が決定する。
本稿では、1日目の審査風景から、その結果までを詳報する。
■参加大学・専門学校
大阪大学/大阪市立大学/大阪芸術大学/大阪工業大学/大阪産業大学/関西大学/近畿大学/摂南大学/奈良女子大学/滋賀県立大学/立命館大学/関西学院大学/神戸大学/兵庫県立大学/武庫川女子大学/京都大学/京都建築大学校/京都建築専門学校/京都工芸繊維大学/京都女子大学/京都橘大学
10傑が出揃う
先述の通り注目度が極めて高い設計展であり、その最優秀作品への注目度も然りである。それだけに選出する側の審査員も気合が入っており、開場前には全員が会場に集結。開場時間と同時に一次審査である巡回審査が開始された。この審査で審査員は172作品の中からそれぞれ10作品ずつ、計40作品を選出。その後、審査員のみで行われる非公開の2次審査を経て、40作品は8作品まで絞られる予定だったが、審査員がプレゼンテーションを切望する2点が加わり、合計10作品が講評会へと駒を進めた。選出された作品は次の通り。
作品名 | 名前 | 学校名 |
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大阪人博覧会 〜ミナミを繋ぐ日常のミュージアム〜 |
石川一平さん | 立命館大学 |
風見の再構築 -淡路島縄文村計画- |
石見春香さん | 滋賀県立大学 |
f3 -次世代型自在展開式農場- | 大須賀嵩幸さん | 京都大学 |
再起の術 -竹林を介した山と人々の関係再編- |
洲脇純平さん | 大阪工業大学 |
融解する幻想 -自然界におけるディナージーを手掛かりとした紙により導き出される微現象の表出- |
谷戸星香さん | 立命館大学 |
陶の棲家 -個の絡まりによる断面風景- |
廣田未紗さん | 立命館大学 |
都市と言う名の監獄 | 舩冨勇人さん | 大阪芸術大学 |
百年地図。 | 持井英敏さん | 大阪工業大学 |
ろう | 相見良樹さん | 大阪工業大学 |
白鳥物語 -エリアナ・パブロアの記憶- |
藤井伊都実さん | 立命館大学 |
白熱した議論の末にグランプリ決まる!
講評会は、ファイナリストによるプレゼンテーション4分、質疑応答2分のトータル6分で構成されている。この限られた時間の中で、10名の学生たちは作品の概要から狙いまでを審査員の前で強く訴えた。質疑応答では、審査員から暖かくも厳しい質問が投げかけられる場面もあり、真剣な表情で応える学生たちからは、卒業設計にかける情熱を感じ取ることができた。
10名のプレゼンテーションから質疑応答までがひと通り終了した後、その内容を踏まえたディスカッションが展開された。白熱した議論は50分にわたり繰り広げられ、これを加味した最終審査によって1〜3位の作品が選出された。結果は以下の通り。
1位 | 「大阪人博覧会〜ミナミを繋ぐ日常のミュージアム〜」 大阪で生まれた人々が生きた証を「ナニワ文化」とし、「とても泥臭く、上品とは呼べないものの、魅力的で力強い生命力が宿っている」と捉えて、本計画ではその魅力を再構築するべく、大阪の天王寺駅を舞台に、一人ひとりの心の記憶装置(ストレージ)としてのナニワ文化の殿堂を設計した。
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![]() 石川一平さん |
2位 | 「ろう」 制作者の出身地である滋賀県のポテンシャルを活かした別荘地としてのこれからの暮らしのあり方を考えた作品。タイトルの「ろう」は、労、老、楼、牢の意味を持っており、琵琶湖を舞台に、漂いながら暮らすことで同県の魅力を引き出すと同時に、湖南、湖北の格差を解消する「ろう」を計画した。
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![]() 相見良樹さん |
3位 | 「f3-次世代型自在展開式農場-」 近代にすっかり根付いた高層ビルが立ち並ぶ風景に対し、そのわきに植えられている植物の世界にフォーカスした作品。近年話題になりつつある植物工場など、Vartical Farmをテーマに据えた植物が主役となる新たな空間を探った意欲作となっている。
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![]() 大須賀嵩幸さん |
審査員から学生たちへの熱きエールが送られる
審査終了後、4人の審査員から総括が述べられた。内容は以下の通り。
羽鳥 達也氏
力作揃いで思いのこもった作品が多いという印象をうけました。関西特有の舟入が多かったり、最近やらなくなってきていた流線型のザハのような建築が、ちょっとずつでてきていて、それが観光地問題などと結びついている提案など、「カタチを作っていこう」とする面白い傾向が見られました。バリエーションも豊かで、素材の問題に向き合っていたもの、政治の混乱など、存在する問題意識に対して、まじめに応える以上のことをしようする姿勢がうかがえました。そういうのは設計において非常に重要であり、身につまされるというか、私自身、これからがんばらないといけないなと思いましたし、勉強になるなと思いました。とても楽しい時間を過ごせました。
忽那 裕樹氏
私は拠点が大阪なので、選定地の九割は知っており、アプローチまでできているものの、問題点をオリジナルの方法で解決してていないものが多くありました。街がどう運営されて、道がどう興っているかまで含めて、街の風景です。気になった場所、好きになった場所と思いっきり対話をして「これしかつくるものがない!」と言い切れるくらい自信を持てるストーリーで、最後は「私はこうだと思います!」と主語で素直に語ってくれると、作品、プレゼンテーションはさらによくなったと思います。どの作品の、どの問題もわれわれが日々一生懸命考えているものばかりであり、今日、皆さんの考える視点をこの場で共有できて、よかったと思います。また、一緒に考える場所を今後もつくっていければと考えています。
手塚 由比氏
震災のあと、卒業設計では「つくらないことが美徳」という傾向がしばらく続きましたが、今年はしっかりつくっていて、模型も上手で、力作揃いだったので感動しました。しかしながら、論理がまだついていっていないと感じました。建築物は、ものすごい労働の積み重ねでできているので、考えて、考え抜いてつくらないと、関わった人たちに失礼にあたります。だからこそ「なぜその建築が必要なのか」「なぜそのカタチでなければならないのか」をもっと深く考えてくれればいいなと思いました。ものをつくるエネルギーとなるのは思い込みであり、その思い込みで多くのひとを巻き込みながら、強さ、しつこさ、情熱をもって取り組んでいけば、卒業設計はもっとよくなっていくと思いました。
内藤 廣氏
プレゼンで、論理的に説明しようとするばかりに、プログラムだとか、街だとか、地形だとか、そういうのが半分以上になっていて、皆さんが「なにをやりたいか」がわかりにくかったです。それは建築以外の要素から、建築を説明しようとし過ぎているためだと感じました。私たちが知りたいのはそういうものを突き抜けた、とてつもない美しさだとか、想像を超えた細かさだとか、スケールの大きさだとか、ある意味作品に対する「執念」であり、それを見せて欲しかったです。今回、一作品に対する審査時間が短く、選び出された作品以外でも、すばらしいものがあったはずであり、ここで出展した意欲のある皆さんには可能性があると考えています。今後も自身を鍛えあげていき、世の中に出て活躍してくれることを期待しています。
なお、2日目は、山口陽登氏、小松一平氏、河野桃子氏、高栄智史氏といった関西ゆかりの若手建築家を審査員に、上園宗也氏を司会に迎え、1日目と同様の流れで講評会を実施。3日目は、1・2日目の出展者・来場者によるシール投票で選ばれたファイナリストがプレゼンを行い、インターネットと会場での投票による審査で順位を決定した。結果は以下の通り。
Day2
1位 | 「とんまか-もったいない空間と人との関係を再編する商店街-」 |
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川井茜理さん |
2位 | 「潮騒の神島家‐朦朧たる《青の集積》」 |
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大森健史さん |
3位 | 「融解する幻想 自然界におけるディナージーを手掛かりとした紙により導き出される微現象の表出」 |
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谷戸星香さん |
Day3
1位 | 「陶の棲家 -個の絡まりによる断面風景-」 |
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廣田未紗さん |
2位 | 「spiral extension -無限成長美術館-」 |
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川本稜さん |
3位 | 「ろう」 |
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相見良樹さん |