建築新人戦2016

建築新人戦2016

名称

建築新人戦2016

日程 2016年9月24日(土)〜9月26日(月)
会場 梅田スカイビル
審査員
  • 小川 晋一氏(審査委員長:小川晋一都市建築設計事務所/近畿大学教授)
  • 芦澤 竜一氏(芦澤竜一建築設計事務所/滋賀県立大学教授)
  • 乾 久美子氏(乾久美子建築設計事務所/横浜国立大学教授)
  • 加藤 耕一氏(東京大学准教授)
  • 武井 誠氏 (株式会社TNA)
  • 福岡 孝則氏(Fd Landscape/神戸大学特命准教授)
司会
  • 宗本晋作氏(立命館大学准教授)
  • 倉方俊輔氏(大阪市立大学准教授)
共催

株式会社 総合資格

建築界期待のルーキーが奮闘「建築新人戦2016」

今回で8回目を迎える「建築新人戦2016」が、2016年9月24日(土)〜9月26日(月)の3日間、梅田スカイビル(大阪市北区)で開催されました。建築新人戦は、将来活躍が期待される建築学生を発掘する場として、大学の1〜3回生や専門学生・高等専門学生が取り組んだ設計課題作品を対象に実施するコンテストです。また「建築新人戦」は建築教育の発展に貢献したと評価され「2016年日本建築学会教育賞」にも選ばれており、ますます注目度が高くなった作品展となっています。
多くの学生で賑わう100選展示会場
9月24日〜26日、応募601作品の中から一次審査(8月12日)を突破した上位100作品を、同ビルのタワーイースト5階特設会場にて展示。また25日の二次審査では100作品を16選、8選と絞り、午後の公開審査にて、最優秀新人賞1作品と優秀新人賞3作品を選出。公開審査は同ビルのタワーイースト3階ステラホールで行われ、8選選出者によるプレゼンテーション、審査委員との質疑応答を経て、受賞作品を決定します。
加えて、今回は一次審査時に「アジア建築新人戦」への日本代表2名が選出されており、同世代のアジア各国の学生代表達とも、12月(予定)にシンガポールで競い合うことにもなっています。
真剣な眼差しで審査する小川 晋一氏
審査員の意見を摺り合わせ16選・8選を選出

審査委員

小川 晋一氏(審査委員長)
芦澤 竜一氏
乾 久美子氏
加藤 耕一氏
武井 誠氏
福岡 孝則氏

ホイッスルにより幕を開けた、8選選出者の公開審査

実行委員長の中村勇大氏(京都造形芸術大学教授)による開会宣言とともに、同氏によって吹かれたホイッスルが鳴り響き公開審査がスタート。開会後は、16選・8選に選ばれた学生たちが壇上で紹介され、8選選出者によるプレゼンテーションが行われました。
開会宣言される実行委員長の中村 勇大氏(京都造形芸術大学教授)
【8選選出者・作品】
  • 森下 啓太朗さん(近畿大学)vacuum city
  • 池田 匠さん(工学院大学)Shake Museum
  • 山本 圭太さん(早稲田大学)「表裏の解体」
  • 塩浦 一彗さん(UCL, Bartlett school of architecture)
    Chano-yu Tea ceremony Light house: 茶の湯-光露地 Complex
  • 平岡 和磨さん(信州大学)たまりば
    〜地域の特色を生かした図書館を含む複合施設〜
  • 今江 周作さん (近畿大学)支えとして、遊び場として、寄りどころとして
  • 松岡 竜生さん(名古屋工業大学)「輪廻転生」
  • 軽部 蘭さん(早稲田大学)広場化する街路ハイパースクール
本年度より大会共催の総合資格学院 関西本部 福西 健一による祝辞
惜しくも8選に選ばれなかった16選の作品に対しても各審査員から講評があった
プレゼンテーションは、機材トラブルにより、急遽スライド枚数2枚と限定された中での発表となりました。予期せぬ事態に戸惑う中でも、8選選出者は自身の計画の魅力を明確に伝えるため、模型を用いて説明を補足するなどそれぞれが工夫を試みながら発表を続けました。
プレゼンテーションの模様
審査員からの質疑も熱が入る
司会は左:倉方俊輔氏(大阪市立大学准教授) 右:宗本晋作氏(立命館大学准教授)
プレゼンテーション・質疑応答後、自身の作品への追加プレゼンテーションの場が設けられ、その内容を踏まえた審査員によるディスカッションが展開されました。その中では「作品」を選ぶといった視点だけではなく、一つの計画にどれだけ熱量を注げる想いがあったか、それが「新人を選ぶ」といったことにもなるのではないか、といった新たな選出基準についても議論されました。 白熱した公開審査および審査員による投票の結果、最優秀新人賞・優秀新人賞に選ばれた作品は以下の通りです。

最優秀新人賞・優秀新人賞

最優秀新人賞
  • 塩浦 一彗さん
    (UCL, Bartlett school of architecture)Chano-yu Tea ceremony Light house: 茶の湯-光露地 Complex

茶屋という隔離空間を題材に、伝統と流行を融合させ、茶人と若者が集えるパブリックなスペースを計画。光の柱や様々な反射率の素材(ガラス・色ガラス・ハーフミラー・ミラー・金属・コンクリート・木)を用いてパーティションや床や壁を生成。内外の明暗度・昼夜による時間の変化によって、室の広がりを錯覚できる・風景に溶け込ますことができる空間を提案した。

写真1

塩浦 一彗さん

写真2
写真3
優秀新人賞
  • 森下 啓太朗さん(近畿大学)vacuum city

無人化され使われなくなった空間が多く存在する大阪の抽水所。地下に伸びるこの大きな暗渠に、壁を増築・壁スラブを減築し、できあがった空間に美術館やカフェ、休憩所を挿入。また抽出所を始点として地下の小さな暗渠を都市に伸ばしていく、埋葬された空間を再利用する計画。

写真1

森下 啓太朗さん

写真2
写真3
優秀新人賞
  • 山本 圭太さん(早稲田大学)「表裏の解体」

計画地は東京国立市。商店街と小学校を一体として考え、学校の開口部から家庭科室や音楽室、図書室にアクセスできる計画などを盛り込み、学生と商店街の人々、住民が交われる場を創り出す。街と小学校との30年後を見据えた計画。

写真1

山本 圭太さん

写真2
写真3
優秀新人賞
  • 軽部 蘭さん(早稲田大学)広場化する街路ハイパースクール

東京都練馬区下石神井に小学校を街路空間として計画。好きな道に机を並べて教室にしたり、休日にはマルシェや屋台がならぶ縁日の参道としても活用できるよう設定。区切られた教室空間でなく街に拡がるような空間を提案した作品。

写真1

軽部 蘭さん

写真2
写真3

審査員からは学生たちに熱いメッセージが送られました

審査終了後、6人の審査員から総括が述べられました。内容は以下の通りです。

小川 晋一氏

質疑応答を通じて、読み解くプロセスで優秀と思える計画が存在することは大事ではありますが、設計展は出来上がった模型・プレゼンボードという「作品」で勝負する一面が強いと思います。私はそういった既視感がない新しくて胸踊る「作品」を中心に評価させてもらいました。選ばれなかったものにも良い作品が多くありました。勇気をだして今後も頑張ってもらいたいと思います。今後みなさんが建築に携わるにあたり、もっと柔らかく新たな未来を示していってくれたらと思います。

芦澤 竜一氏

設計展の評価は励みにはなるとは思いますが、選ばれなかったからといって劣っているわけではありません。新しい価値観を生み出そうとしているので、我々に評価されることが必ずしも良いとは限らないからです。また大学の設計課題を「賢く解く」のではなく、「自分の課題だ」という意識をもって取り組んでください。そういった意識をもって、まっすぐ建築の道に進んでいってほしいと思います。

乾 久美子氏

本来評価とは「どういう与件で作られたのか」「計画的・構造的に解けているのか」を見る必要ありますが、設計展という短期間のイベントでは、知りえる一部の情報で評価せざるを得なく、作品の意義として目立つものが選ばれたというのが今回の率直な印象です。設計展は、「学外での評価」「評価の多様性」を感じられる場として非常に良い場だと感じておりますが、審査自体が作品の承認機関にならないように気を付けて運営しなくてはとも感じました。

加藤 耕一氏

会場を駆け回る学生の学生スタッフたちの頑張りに感銘をうけました。建築というのはデザインをするといっただけではなく、色々な人々と協力して完成させていくといった一面ももっています。100選・16選・8選に選ばれた方も周囲の支えがあったことを忘れないでください。私もこのような素晴らしい会に参加させてもらったことに感謝しています。

武井 誠氏

現在は分類された単体ビルディングの設計だけでなく、複合的な機能まで含めた新しい計画を求められる時代となってきています。その中で既存の用途の延長線上といっただけではなく、自由な発想で、カタチにすることに臆することなく、今後も建築に取り組んでほしいと思います。

福岡 孝則氏

屋外空間や街路、パブリックスペースをうまく内包させているかどうかといった、ランドスケープの専門家という立場で審査員を務めさせてもらいました。今回の16選に選ばれていないものにも、人口減少時代の問題に立ち向かった作品がありましたが、建築新人戦というのはそういった課題に果敢に取り組む場でもあると思います。そのような作品に出会えて感慨深いものがありました。

表彰式

表彰式では、上記最優秀新人賞・優秀新人賞、8選に選ばれた選出者の表彰状授与とともに、総合資格学院ならびにアーキテクツ・スタジオ・ジャパンより副賞を贈呈。続いてアジア建築新人戦選出作品発表、総合資格学院賞の表彰がありました。

表彰される最優秀新人賞の塩浦 一彗さん

アジア建築新人戦 日本代表作品

軽部 蘭さん(早稲田大学)
広場化する街路ハイパースクール(建築新人戦 優秀賞)
河合 容子さん(関西大学)
おじいちゃんの壁 アートと対等になるための四次元的鑑賞空間

総合資格学院賞

大脇 春さん(神戸大学)
足跡〜伊能忠敬メモリアル空間〜

建築新人戦2016閉会

閉会を前に学生実行委員長の草川望さん(神戸大学)の学生代表挨拶が行われました。「今年のキャッチコピーの【つながる才、交わる彩】にもある通り、建築新人戦を通じて、様々な人々とつながり交流を深めることで、ご自身を成長させるきっかけが生まれることを願っています」という想いと共に、審査員・共催/協賛企業・学生スタッフ・作品を応募された学生・来場者に感謝の意を述べ、会を締めくくりました。
会場に語りかける学生実行委員長 草川望さん(神戸大学)

8選選出者と審査委員