建築新人戦2017
建築新人戦2017 ダイジェスト映像
建築新人戦2017
名称 |
建築新人戦2017 |
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日程 | 2017年9月21日(木)〜9月23日(土) |
会場 | 梅田スカイビル |
審査員 |
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司会 |
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共催 |
株式会社 総合資格 |
近畿大学が16選に3人、8選に2人選出
審査委員
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- 乾久美子氏(審査委員長)
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- 光嶋裕介氏
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- 佐藤淳氏
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- 武田史朗氏
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- 畑友洋氏
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- 増田信吾氏
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- エントランスホールと審査会場の後方に作品が展示された
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- 巡回審査をする乾審査員長。審査員は午前中の間で100選を見なくてはならない
16選・8選 選者/作品
【8選選出者・作品】 |
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接戦の末、近畿大学・渡辺拓海さんが最優秀新人賞
質疑応答の後、最優秀新人賞1人、優秀新人賞2人を決める投票が行われた。審査員1人3票ずつ投じた結果、近畿大学の渡辺拓海さんが最も票を集め、それに京都大学の伊藤健さんが続く形となった。
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- 16選に選ばれた面々
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- プレゼンテーションの後、質疑応答の時間がとられた
一方の伊藤さんの作品「響とアゴラ/Kyoto Agora」は、国の有形文化財にもなっている京都の元明倫小学校(現京都芸術センター)の校舎を改修する計画。アゴラとは集会所のことを指す古代ギリシア語だが、作品では大きな階段をアゴラと呼び、それを建物に差し込むことによって、都市の劇場へと再生する。審査員からは、リノベーションにより新しいものを付け足すことで、既存の空間もさらに良くなるという工夫があるかどうか問われたが、現在の狭い入口に大階段を挿入し、またそこに音楽が漏れてくることで、開かれた魅力的な空間になると応え、提案の良さをアピールした。
得票者への質疑応答を終えると、審査員1人2票で再投票が行われた。しかし、結果は渡辺さんと伊藤さんが同票となり決着つかず。そこで2人に絞り決選投票が行われ、結果4票を集めた渡辺さんが最優秀新人賞に輝いた。
最優秀新人賞・優秀新人賞
最優秀新人賞 | |
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路地やスラム、森といった雑多な空間から抽出したパターンを組み合わせて、美術館を設計。理路整然とした美しさではなく、雑多的な美しさを追求し、アート作品とコラボレーションさせる。アーティストはゲリラ的、そして雑多な空間に合わせるように自由に作品を展示していく。 |
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![]() 渡辺拓海さん |
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優秀新人賞 | |
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小学校をリノベーションして小ホールを設計するという課題。昭和6年竣工の元明倫小学校校舎(現京都芸術センター)に、作品の中でムジカと呼ぶホールを挿入(ムジカとはラテン語で音楽を意味する)。それに対面するように、アゴラと呼ぶ大階段を挿入する(アゴラとは古代ギリシア語で集会所を意味する)。それぞれが対面するように配置されることによって、ムジカ(ホール)から漏れる音楽をアゴラ(大階段)にいる人々も聴き、アゴラも客席へと変化する。 |
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![]() 伊藤健さん |
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優秀新人賞 | |
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滋賀県草津市の住宅街に、幼老複合施設を設計。作物について学び、育て、食べるという一連の流れにより、子供と老人、家族と地域社会といった、さまざまな交流を生むことをコンセプトにしている。交流を生み出すために平面は門型の配置計画にし、立面ではスラブの高さを変えることで空間を区切るようにしている。 |
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![]() 深井麻理奈さん |
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優秀新人賞 | |
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原宿駅が敷地。トポロジーの結び目理論を建築に応用し、構造体を連続して変化させ、アートオブジェのような駅舎を設計。構造体だけの作品だが、原宿という複雑な街に落ちる建物(構造体)の影が都市を読み解くきっかけになることを意図している。 |
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![]() 増渕加奈子さん |
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8選に選ばれた人は、建築家になって欲しい
表彰式の後、審査会の締めくくりとして、審査員それぞれが総評を述べた。審査員の一人、光嶋氏は、「自分がいつ建築家になったかは分からないが、8選に選ばれた人たち、また残りの92人には建築家になって欲しい。継続している人、自分なりの勉強をやり続けている人が建築家になれる」と語った。乾審査委員長は、学内の枠を超えた全国的な設計展が増え始めた5、6年前から独立した建築家を目指す学生が減っていることを挙げたうえで、「設計展が優秀な学生の承認機関ではないし、賞をとることが本質ではない」ということを指摘。「今日のように多くの人が力を注いで、これだけのイベントを開催したのに、10年後にいい建築が作られなかったら悲しい。建築家は褒められるために建築をするのではなく、社会に提言するために建築を行う。少なくとも8選に選ばれた人は建築家にならないといけない」と学生たちにエールを送った。
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- 総合資格学院賞を授賞した大方利希也さん(明治大学)
グラフィソフト賞は、今年から新たに設けられたデザインセレクション部門から選ばれるが、同部門は学生のコンピューターを利用したデザイン思考とプレゼンテーションの向上を目的としている。審査員を務めた遠藤秀平氏は、「模型をつくる、図面を描くといったアナログな部分は建築新人戦のベースにあるが、近未来のデジタルについても知っておかなくてはならない」と同部門の意義を登壇して説明した。

共催・総合資格の関西本部本部長の福西健一より、副賞と総合資格学院賞の授与が行われた
来年で10年めを迎える建築新人戦。建築の登竜門としてこれまで多くの学生が参加してきたが、乾審査員長が指摘したように、近年は建築の道に進まない学生も多い。一方で、建築技術は日進月歩で、建築業界も転換期に差し掛かっている。乾審査員長の言葉やデジタル部門の創設など、新人戦が建築学生のためにさらに充実した大会へと、変化と飛躍を予感させる大会であった。