第16回 JIA関東甲信越支部 大学院修士設計展2018

第16回 JIA関東甲信越支部 大学院修士設計展2018

名称

第16回 JIA関東甲信越支部 大学院修士設計展2018

日程

作品展示:
2018年3月7日(水)〜3月9日(金)

公開審査・講評会:
2018年3月8日(木)

会場 芝浦工業大学 豊洲キャンパス アーキテクチュアプラザ
審査員 難波 和彦(東京大学名誉教授/(株)難波和彦・界工作舎代表)
実行委員

実行委員長
佐藤 光彦(日本大学教授)

実行委員
谷口 大造(芝浦工業大学教授)
赤松 佳珠子(法政大学教授)
今村 創平(千葉工業大学教授)
佐藤 誠司(バハティ一級建築士事務所)
鈴木 弘樹(千葉大学准教授)
安原 幹(東京理科大学准教授)

主催

公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 大学院修士設計展実行委員会

協賛

株式会社総合資格/総合資格学院

ハイレベルな41作品が集う大学院修士設計展

日本建築家協会 関東甲信越支部が主催する「第16回 JIA関東甲信越支部 大学院修士設計展2018」が3月7日から3月9日の3日間、芝浦工業大学(芝浦工業大学 豊洲キャンパス アーキテクチュアプラザ)にて開催されました。関東甲信越エリアの各大学院から選抜された作品が出展される本設計展。
フロアに展示されている模型やプレゼンボードなどからは、一見して密度の高さが伝わってきました。特に目を惹いたのは、どの作品も建物の外形のアピールにとどまらずコンセプトやリサーチのプレゼンテーションに力を入れていた点。大学院生の思考の深さや広さが伝わってくるようでした。

一次審査が開始

8日(木)に行われた審査会では、10時より一次審査が開始。持ち時間の4分間という限られた時間の中で、出展者全員がプレゼンテーションを行いました。自身の計画について大学院生ならではの厚みのあるリサーチに基づいた発表が続きました。

審査員・実行委員

難波 和彦氏
(審査員)
佐藤 光彦氏
(実行委員長)
谷口 大造氏
(実行委員)
赤松 佳珠子氏
(実行委員)
今村 創平氏
(実行委員)
佐藤 誠司氏
(実行委員)
鈴木 弘樹氏
(実行委員)
安原 幹氏
(実行委員)
実行委員長:佐藤 光彦氏
プレゼンテーション後、休憩を挟み別室で二次審査に進む作品が選出されました。
二次審査に進んだ作品は以下の11作品。
■二次審査進出作品
  • No.07 東京芸術大学大学院 小黒 由実さん
    山を登ることと建築
  • No.09 早稲田大学大学院 小坂 諭美さん
    「土地の断片」をつづる −フクシマの故郷を題材として−
  • No.14 東洋大学大学院 鈴木 叙久さん
    アドルフ・ロース建築作品における段差の効果についての研究 −物語を生み出す空間設計論構築の一助として−
  • No.17 日本大学大学院 添田 魁人さん
    既存形態の構成を援用した福島県白河市白河市中央公民館の建替計画 −再生建築における建築的部位と空間構成の分析を通じて−
  • No.24 千葉大学大学院 馬場 隆介さん
    辻堂の海洋保全計画 −海洋汚染ゴミを建築構成材へと転化する“セルフリサイクル・テクトニック図鑑”の採集と実践−
  • No.27 法政大学大学院 松本 和樹さん
    地を這う複層連続体 都市における大地−建築−人の関係性の再考
  • No.30 東京都市大学大学院 村上 裕貴さん
    塔のある日常
  • No.31 芝浦工業大学大学院 本井 加奈子さん
    図と地が反転する建築 −都市を室内空間と認識するための手法−
  • No.33 東京理科大学大学院 山口 薫平さん
    島業の建築 −興居島由良町・移住促進施設による新たな公共の提案−
  • No.34 千葉大学大学大学院 山崎 ひかりさん
    森になる川の遷り:水制工による植生動態の研究と動く河川公園の設計提案
  • No.40 工学院大学大学院 渡邊 もえさん
    イタリアの事例を参考に農村と都市との新たな共存的関係性を探る研究

二次審査通過11作品の質疑応答

二次審査は、8分の質疑応答で進行。11作品に対して審査員や実行委員より計画の背景やリサーチの状況を始め、作品の深い部分まで質問が及びました。質問に対して発表者は詳細かつ理論的に自身の作品を説明していました。そこからは、模型やプレゼンボードで表現されている以上に作品が深く考えられ、緻密に状況設定されていることが伺えました。
すべての発表が終わり、別室にて審査員と実行委員による審議が行われ、各賞が決定。最優秀賞1作品、優秀賞3作品、奨励賞3作品が選出されました。
見事、最優秀賞を勝ち取ったのは、馬場 隆介さん(千葉大学)の「辻堂の海洋保全計画 −海洋汚染ゴミを建築構成材へと転化する“セルフリサイクル・テクトニック図鑑”の採集と実践−」。
難波氏は、「本当に面白く、発想が素晴らしい。単体の部品は、すごく小さく、強度はないけれども立体構造でつなげることで構造的に強くなっている。それをゴミと結びつけているのが新しいアイデア。このアイデアからは本当に色々なことができると思うので是非、優秀な構造家と組んでほしい」と語られました。
他結果は以下の通りです。
最優秀賞
  • 馬場 隆介さん (千葉大学大学院)
    辻堂の海洋保全計画 −海洋汚染ゴミを建築構成材へと転化する“セルフリサイクル・テクトニック図鑑”の採集と実践−

「辻堂の海をきれいにしたいから手伝ってほしい」との友人の依頼から始まったプロジェクト。海ゴミ(漂着ゴミ)の割合の中で個数・重量ともに上位に位置するプラスチックゴミから建築部材を生成。その部材を使用し、湘南・辻堂に環境学の寺子屋として、沿岸の環境について子供から大人までが語り合える建築モデルを制作する。

馬場 隆介さん

馬場 隆介さん

辻堂の海洋保全計画
辻堂の海洋保全計画
優秀賞
  • 小黒 由実さん(東京芸術大学大学院)
    山を登ることと建築

「目的と装備を照らし合わせ、あらゆることを想定し計画をする。それでも起きてしまう不測の事態に対応しながら、一連の計画を実践へとまとめていく。」そんな山登りの楽しみと建築をつくることの類似性に着目し、山登りと建築がどう結び付くかを探る計画。山登りと建築を様々な視点でリサーチし、そのリサーチ結果を既存山小屋の建て替え計画へと結びつけていく提案。

岩本 早代さん

小黒 由実さん

山を登ることと建築
山を登ることと建築
優秀賞
  • 小坂 諭美さん(早稲田大学大学院)
    「土地の断片」をつづる −フクシマの故郷を題材として−

福島県出身の作者が、原発事故後、フクシマを離れた人々のためにフクシマとのつながりを取り戻すための建築を提案。
設計では、事故後に避難した人々が引き継ぐことのできなかった福島の記憶や縁を「土地の断片」として採集し、それに類似した形態を用いた家をつくることで「土地の断片」を想起する建築を設計。また、本計画では花は記憶を宿すものとして設定され、フクシマの記憶を宿す花をまとった建築をつくることで、その場所に訪れる人々がフクシマであった出来事を思い出せるようにする。避難によってバラバラになった人々がこの建築によってフクシマの記憶を取り戻し、そのことが今後、生きていく上での拠り所となることを願った計画。

藤田 涼さん

小坂 諭美さん

「土地の断片」をつづる −フクシマの故郷を題材として−
「土地の断片」をつづる −フクシマの故郷を題材として−
優秀賞
  • 山崎 ひかりさん(千葉大学大学院)
    森になる川の遷り:水制工による植生動態の研究と動く河川公園の設計提案

植生や砂州の消長をはじめとする河川の動的変化を利用した「動く河川公園」を設計。設定した河川は京都の桂川。現在、日本の多くの河川において、治水が進んだことで河道内に樹木が繁茂し流下能力が低下、新たな洪水リスクが生じている。本設計では、河川に水制工を挿入し多様な攪乱を生む川の流れをつくることで、流下能力が低下した河川の洪水リスクを緩和すると同時に、植生についても遷移と攪乱によって刻々と遷り変わる風景をつくる。

藤田 涼さん

山崎ひかりさん

森になる川の遷り
森になる川の遷り
奨励賞
  • 添田 魁人さん(日本大学大学院)
    既存形態の構成を援用した福島県白河市白河市中央公民館の建替計画 −再生建築における建築的部位と空間構成の分析を通じて−
添田 魁人さん

添田 魁人さん

既存形態の構成を援用した福島県白河市白河市中央公民館の建替計画
既存形態の構成を援用した福島県白河市白河市中央公民館の建替計画
奨励賞
  • 村上 裕貴さん(東京都市大学大学院)
    塔のある日常
村上裕貴さん

村上裕貴さん

塔のある日常
奨励賞
  • 山口 薫平さん(東京理科大学大学院)
    島業の建築 −興居島由良町・移住促進施設による新たな公共の提案−
山口 薫平さん

山口 薫平さん

塔のある日常
塔のある日常

総評

審査会後、会場を本館食堂に移し、懇親会と表彰が行われました。総評で、難波氏は、「受賞作品の選定にあたり、本当に僅差だった。またバリエーションも豊富で最後の最後まで絞り切れず審査が難しかった」と話されました。また、今川氏からは、「大学院生ならではのスキルと厚みを感じられる設計展だった」とのコメントも寄せられました。
懇親会では、出展者と審査員、実行委員が今回出展された作品や、出展者の卒業後の進路などについても語らう場面が見られ、貴重な意見交換の場となっていました。

難波氏からの総評
協賛の総合資格学院からは、営業部部長の安島が挨拶
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