Diploma×KYOTO'19

Diploma×KYOTO’19

名称

Diploma×KYOTO’19

開催日 2019年2月23日(土)〜2月25日(月)
会場 京都市勧業館みやこめっせ3F 第三展示場
審査員長 竹原 義二氏(摂南大学教授)
審査員 西沢 立衛氏(横浜国立大学大学院建築利スクールY-GSA教授)
前田 圭介氏(広島工業大学教授)
田根 剛氏(Atelier Tsuyoshi Tane Architects主宰)
小室 舞氏(KOMPAS HK/JP代表)
主催

京都建築学生之会

竹原 義二氏
西沢 立衛氏
前田 圭介氏
田根 剛氏
小室 舞氏

近畿エリア最大規模の卒業設計展が開幕! 建築を志す学生らが大学の枠を超えて集結

京都建築学生之会主催の合同卒業設計展「Diploma×KYOTO’19」が、2月23〜25日の3日間、京都市勧業館みやこめっせ(京都市左京区)で開催されました。 京都建築学生之会は、建築を志す学生らが大学の枠を超えて集い、自らの意志で企画・運営する会。主催する同設計展は過去、京都所在の6大学からスタートし、現在は近畿圏にある大学が参加するエリア最大規模の卒業設計展となっており、28回目となる今年度は17大学112名が参加しました。

今回のテーマは「何かを超える、貫く、何か別の状態になる」という意味の接頭語「trans」に、出展者の思い思いのwordを入れることができる「−(ハイフン)」を組み合わせた『trans-』となっています。「まだ空っぽで、何にでもなれる出展者」が、同設計展を通して「過去の自分を超えていく」という思いが込められています。

3日間それぞれで、異なった視点、テーマから審査が行われます。1日目は「trans"story" 想像を超える」とし、国内外で活躍する建築家5名による審査、2日目は「trans"field" 分野をまたいで」とし、建築家、研究者、構造家、ランドスケープデザイナーら計5名による審査、3日目は「trans- 未来を探る」とし、学生らによる審査が行われ、日ごと入賞作品が決定しました。

今回は注目度が高いとされる1日目(DAY1)を集中取材。審査の風景から、講評会、結果までをレポートします。

■参加大学・専門学校
大阪大学/大阪市立大学/大阪工業大学/関西大学/関西学院大学/京都大学/京都工芸繊維大学/京都女子大学/京都府立大学/京都造形芸術大学/近畿大学/神戸大学/滋賀県立大学/摂南大学/奈良女子大学/武庫川女子大学/立命館大学/

112→40→8作品にまで絞られ最終講評会へ

開場前には審査員5人全員が会場に集結。予定通りに開場時間にあわせて一次審査である巡回審査が開始されました。この審査で審査員は112作品の中から各々8作品ずつ、計40作品を選出。さらにそこから、審査員のみで行われる非公開の2次審査により、8作品にまで絞られました。講評会へと駒を進めた作品は次の通りです。

作品名 名前 学校名
宿場漁村における伝統的な町家の空間構造を用いた公共空間の提案 上林 誼也さん 近畿大学
わたしの心に街ができて 上山 美奈さん 大阪工業大学
滲む境界 川島 裕弘さん 大阪工業大学
率川の記憶 葛川 卓磨さん 近畿大学
掠れゆく茫漠を追いかけて
-素材の触感で識る風景-
中村 文彦さん 京都大学
風と消える風景 本庄水管橋のさいご 野田 明日香さん 大阪工業大学
都市的故郷-公と私の狭間に住まう 長谷川 峻さん 京都大学
the possibility of unknown landscape
〜常滑地区の「用途不明土地」がつなぐ観光と地域の場の提案〜
森 史行さん 近畿大学

最終講評会のオープニングにおいて、特別協賛する総合資格学院京都校の佐熊学校長よりあいさつがあり、「この時期は日本全国でいろんな設計展が開催されますが、学生のみなさんが、学生の力だけで行っているのは、ディプロマ京都が筆頭だと思います。だからこそ毎年、すごい建築家のみなさまがやってきて、真剣に審査していただけるわけです。われわれとしても、こういった素晴らしい設計展に協賛させていただけることをありがたく思っております」と謝意を述べました。

まさかの該当者なし?! 投票結果の意外な結末

最終講評会では、一人当たりプレゼンテーション4分、質疑応答7分の計11分が与えられています。8人のファイナリストたちは、この限られた枠の中で作品の概要から特徴、提案の狙いまでを溢れ出る情熱に乗せて、審査員らにぶつけ続けました。それを受け止めた審査員らは真剣な眼差しで、鋭い質疑を展開しました。学生にとっては普段経験できないような厳しい場面があったものの、その経験は、過去の自分を超えるというテーマそのものでした。

2時間近いプレゼンテーション・質疑応答の後、休憩を挟んで審査員から学生らに向けてコメントが述べられました。

西沢氏は最初にマイクを持ち「自分中心、自分勝手な考え方が多く、作品自体は力作であることは間違いないのですが、感情移入ができない部分もあり、提案としては少し残念だったと思います」とし、各作品について細かいコメントを続けました。次いで前田氏が「面白い力作揃いであったのは確かですが、巡回審査の際に感じたものと、いざプレゼンを聞くとでは、印象が異なり、もう少し計画に工夫があってもよかったのかなあと思いました」と述べ、田根氏は「審査をするうえで迷っています。というのも、プレゼンを聞いたうえで、突出して素晴らしいと思えるものがありませんでした」とし、「もし今この機会に言い逃したこと、訴えたいことがあればどうぞ」と学生たちに追加プレゼンを促しました。学生たちは順にマイクを手に取り、審査員らに向けて最後の主張を展開。このメッセージを受け取った審査員らは、それぞれが持つ票を作品に投じました。

結果、川島裕弘さん(大阪工業大学)の「滲む境界」、森史行さん(近畿大学)の「the possibility of unknown landscape」、野田明日香さん(大阪工業大学)の「風と消える風景 本庄水管橋のさいご」の3名の作品に票が集まりました。この中から重み付けによる投票を実施したものの、その結果の的確さに疑義が唱えられ、しばらく審査員の間で話し合いの時間が持たれました。その後、審査員長から「甲乙つけがたい、というかダントツで優れた作品がなかったです。ですので、最優秀賞は該当者なしで、優秀賞が2人、3位が1人としたいと思います」という発表があり、2回目の投票をベースに各賞が決定しました。

優秀賞 滲む境界

近代の都市計画が生み出したエリアを隔てるゾーニング計画に対して、境界線を用いることで批判の意を込めながら新たな都市の更新を提案した。

川島 裕弘さん
(大阪工業大学)

優秀賞 風と消える風景 本庄水管橋のさいご

淀川に実在する役目を終え、解体されつつある構造物「水管橋」に新たな使い方を提案した作品。

野田 明日香さん
(大阪工業大学)

3位 the possibility of unknown landscape
〜常滑地区の「用途不明土地」がつなぐ観光と地域の場の提案〜


「日本六古窯」とされる愛知県常滑市を舞台に、焼き物という素材が織り込まれた景観を味付けにしながら用途不明土地を計画する作品。

森 史行さん
(近畿大学)

受賞者が決まり、学生時代に出展者として参加していたという小室氏からは「審査員というカタチでこの設計展に帰ってきて思うことは、作品のバリエーションや模型の素材感など、昔よりもレベルが上がっているなと思いました。ただ、プレゼンや展示をするうえで、建築の説明があまりよくできていないところがあり、伝えるということ第一に考えて、提案をしっかりして欲しかったというのが全体の印象でした」というコメントが述べられました。

最後に審査員長の竹原氏は「今回ファイナリストになれなかった人たちは、自分に何が足りなかったのか考えて欲しいですね。出展作品を見ると、壮大な計画があったり、驚くような大きさの模型があったりしましたが、多くの作品で平面図が描かれておらず、これは実現できるものなのかが、そこからではわかりませんでした。身近なものでもしっかりとしたテーマを持っていれば、それは卒業設計として立派に成り立ちます。学生たちには来年、再来年と建築で重要な平面図の大事さを考えながら、卒業設計に当たってもらえればと思います」という総評で、講評会が締めくくられました。

広島8大学設計展2017

審査員とファイナリストによる集合写真

なお、2日目(DAY2)は、審査員長に門脇耕三氏、審査員に石川初氏、中谷礼二氏、長坂常氏、満田衛資氏を迎え、1日目と同様の流れで講評会を実施しました。3日目(DAY3)は学生、一般の投票によって選ばれた作品に対してポスターセッションやグループ討論を行い、学生らで受賞作品から賞の名前までを決定しました。2日目、3日目の結果は次の通りです。

Day2

1位 福本 純也さん (大阪工業大学)
漫才建築 "コード"からの逸脱、衝突、そしてそこに生まれる"建築的笑い"とは
2位 影山 巽基さん (近畿大学)
Vital Base-能動的再生医療施設-
3位 志波 雛乃さん (京都造形芸術大学)
あの世界への設計図

Day3

愛にあふれる建築賞
大橋 茉利奈さん (京都大学)
カンポンアクリウム、365の暮らし
シワとヒナノの物語賞
志波 雛乃さん (京都造形芸術大学)
あの世界への設計図
MechanicARCHITECT賞
宅野 蒼生さん (神戸大学)
SteamSCAPE―地熱の街に宿る発電の場―
笑いに隠れるアイロニー賞
福本 純也さん (大阪工業大学)
漫才建築 "コード"からの逸脱、衝突、そしてそこに生まれる"建築的笑い"とは
いわば岩場で賞
森下 葵さん (立命館大学)
M7の孤独 漂流社会の宿り場