広島平和祈念卒業設計展2019

広島平和祈念卒業設計展2019

名称

広島平和祈念卒業設計展2019

日程 展 示:2019年3月4日(月)〜3月6日(水)
審査会:2019年3月6日(水)
会場 広島県立産業会館 本館
審査員 【審査員長】
妹島 和世氏
(妹島和世建築設計事務所、SANAA)

【審査員】
今川 忠男氏 (今川建築設計)
西田 司氏 (オンデザインパートナーズ)
福島 加津也氏 (福島加津也+冨永祥子建築設計事務所)
主催 広島平和祈念卒業設計展実行委員会
特別協賛 総合資格学院

中国地方最大の卒業設計展

広島平和祈念卒業設計展2019が3月4日〜3月6日、広島県立産業会館(本館)で開かれました。本設計展は中国地方で建築を専攻する学生が卒業設計作品を出展し、広島平和祈念卒業設計賞をはじめとする各賞を決定する展示会です。例年、歴史的建築物である旧日本銀行広島支店にて催されていますが、本年度は改修工事の影響もあり、広島県立産業会館での開催となりました。
本年度の参加校は広島大学、広島工業大学、近畿大学工学部、広島女学院大学、福山大学、福山市立大学、安田女子大学、山口大学と、招待校として穴吹デザイン専門学校、岡山理科大学、呉工業高等専門学校、島根大学の合計12校で、72作品が出展。設計展最終日の3月6日には審査会が催されました。審査会場には大勢の学生らが詰めかけ、大変活気のある大会となりました。

公開二次審査に進む作品を選定

午前中の1次審査では、審査員として招かれた妹島 和世氏、今川 忠男氏、西田 司氏、福島 加津也氏の4名が巡回審査を行いました。各審査員とも一つひとつの模型やポートフォリオに目を凝らし、慎重に審査されている様子が見て取れました。
1次審査の結果、審査員によって10作品が選出、また会場に訪れた観客の投票によって市民推薦枠2作品が選ばれ、計12作品が公開2次審査に進みました。

公開2次審査選出作品

  • 遠藤 直輝さん(岡山理科大学)
    「想起する雲霞 -神楽土手のある風景-」
  • 吉本 大樹さん(近畿大学)
    「平和を創る工場 -まちに残された建物と地域の更新手法-」
  • 藤原 孝男さん(近畿大学)
    「生活街」
  • 坂井 健太郎さん(島根大学)
    「海女島 -荒布栽培から始まるこれからの海女文化-」
  • LAO CHHUNHONGさん(呉工業高等専門学校)
    「プノンペンを活気づける影絵芝居文化センター -文化センターの新しい用途の提案-」
  • 杉浦 拓哉さん(近畿大学)
    「現代的古都 -共存する2つの居場所-」
  • 松下 七海さん(近畿大学)
    「水の降る舞いのもとで -繰り返される水害と共生する建築-」
  • 神保 桃子さん(岡山理科大学)
    「動物と人がつながる体感型動物園と一体となった住空間」
  • 藤田 真奈さん(近畿大学)
    「ロジリティ -路地+路地的空間から成る住宅地-」
  • 平野 誠弥さん(広島大学)
    「100年駅舎 -名古屋駅計画2027-」
  • 山田 桃乃さん(広島工業大学)<市民推薦枠>
    「時間と建築 -宮島口計画-」
  • 時高 梨沙さん(広島女学院大学)<市民推薦枠>
    「アイアンスクエア」

午後からは公開2次審査がスタート

公開2次審査で各出展者に与えられた持ち時間はプレゼンテーション5分と審査員からの質疑3分の合計8分。計画の意図や魅力を明確に伝えるため、模型を用いて補足するなど2次審査選出者それぞれの工夫を凝らした発表が続きました。また審査員も発表の度に、各作品の前に集まり質疑を行うなど真剣さが見てとれました。
プレゼンテーション+質疑応答後、最優秀賞、優秀賞を決定すべく審査員による公開投票が行われました。
見事、最優秀賞に選ばれたのは、岡山理科大学の神保 桃子さんの作品、動物と人がつながる体感型動物園と一体となった住空間。審査員からは「動物園をトリガーとして、異なる世代間で交流しやすい生活空間をうまく表現できており、計画として説得力がある。また各プログロムが縦割に配置されているのではなく、斜面地を活用し自然にリンクされている点においても秀逸である」と高い評価を受けていました。
選出された各賞は以下の通りです。
最優秀賞
  • 神保 桃子さん(岡山理科大学)
    「動物と人がつながる体感型動物園と一体となった住空間」
神保 桃子さん 動物と人がつながる体感型動物園と一体となった住空間
優秀賞・今川 忠男賞
  • 吉本 大樹さん(近畿大学)
    「平和を創る工場 -まちに残された建物と地域の更新手法-」
吉本 大樹さん 平和を創る工場 -まちに残された建物と地域の更新手法-
優秀賞・西田 司賞
  • 藤原 孝男さん(近畿大学)
    「生活街」
藤原 孝男さん 生活街
優秀賞
  • 杉浦 拓哉さん(近畿大学)
    「現代的古都 -共存する2つの居場所-」
杉浦 拓哉さん 現代的古都 -共存する2つの居場所-
優秀賞
  • 松下 七海さん(近畿大学)
    「水の降る舞いのもとで -繰り返される水害と共生する建築-」
松下 七海さん 水の降る舞いのもとで -繰り返される水害と共生する建築-
優秀賞
  • 平野 誠弥さん(広島大学)
    「100年駅舎 -名古屋駅計画2027-」
平野 誠弥さん 100年駅舎 -名古屋駅計画2027-
妹島 和世賞
  • LAO CHHUNHONGさん(呉工業高等専門学校)
    「プノンペンを活気づける影絵芝居文化センター -文化センターの新しい用途の提案-」
LAO CHHUNHONGさん 「プノンペンを活気づける影絵芝居文化センター	-文化センターの新しい用途の提案-」
福島 加津也賞
  • 山田 桃乃さん(広島工業大学)
    「時間と建築 -宮島口計画-」
山田 桃乃さん 「時間と建築 -宮島口計画-」

総評

妹島 和世氏

妹島 和世氏

建築として成り立つプログラムになっているか、周囲の環境に配慮した計画かという点は卒業設計ということもあって重要だと思いますが、若い人たちには見たことにないものに思い切ってチャレンジしてほしい。これから先、新しいことに挑戦し未来を切り開いていくことは絶対必要です。今までの枠にとらわれずに自分ならではの建築を追求していってください。

今川 忠男氏

今日展示された作品のなかには、中国地方という地域性もあり平成30年7月豪雨の影響を受けた計画が数点ありましたが、卒業設計で考えただけで終わってほしくないと強く感じています。社会人になっていも、苦しんでいる人や困難な状況をどうにかしたいという想いは忘れず建築に関わってほしいと思います。

今川 忠男氏
西田 司氏

西田 司氏

今回、建築という立体の空間を楽しんで創っている、そして強く表現できていると感じた作品を中心に評価させてもらいました。見させてもらった作品のなかには、背景の説明に注力するあまり肝心の計画の良さをアピールしきれなかったのではと感じたものもありました。簡潔に結論まで説明する力は、実務に携わるにあたり必要な事だと思います、意識してみてください。

福島 加津也氏

「エネルギー量が多く建築への想いを感じた」「建築の世界を広げてくれた」「既存の手法・考え方を深めた」この3点を評価基準に作品を選定しました。また審査全体を通して感じたことは、何となく制作して賞をもらうのではなく、本気で最優秀賞を獲りにいくという気概をもってほしいということ。本気で一番を目指し、そして結果に変えていくことを意識してください。

福島 加津也氏
実行委員顧問 岡河 貢氏
総合資格学院 中国四国本部長 青山 功

閉会にあたり、審査会の実行委員顧問の岡河 貢氏(広島大学院准教授)より挨拶がありました。本設計展の発起人でもある岡河氏は、「卒業設計は生涯一度しかない機会であり、その努力の結晶を全て残していきたいという想いから、出展者全員分を作品集に記録していることが本設計展の大きな特徴です」と説明。加えて、今まで審査員を務めてもらった建築家、毎年参加している各大学の教授や関係者、作品集の制作・出版している総合資格学院へ感謝の意を表しました。

続けて、特別協賛の総合資格学院 岸 隆司の名代で中国四国本部長 青山 功が、「当学院では学生のみなさんに建築のすばらしさを伝える啓蒙活動を全国で行っていますが、10年以上前に本設計展の協賛を通して岡河氏から学ばせてもらったことがこの活動の礎になっており、私にとっての恩師は岡河氏だと感じております。皆さんも、大学生活を通じて恩師や多くの仲間との出会いがあったと思います。そのような巡り合いを大事にしながら今後も活躍してください」とエールを送りました。