第18回 JIA関東甲信越支部 大学院修士設計展

第18回 JIA関東甲信越支部 大学院修士設計展

名称

第18回 JIA関東甲信越支部 大学院修士設計展

日程

1次審査:
2020年3月10日(火)

2次審査:
2020年3月19日(木)

※新型コロナウィルスの影響により、当初予定されていた公開審査と作品展示は中止。

会場 JIA会館1階・建築家クラブ
審査員 野沢 正光(野沢正光建築工房 主宰)
実行委員

日野 雅司(東京電機大学 准教授/SALHAUS一級建築士事務所 共同主宰)
岡野 道子(芝浦工業大学 特任准教授/岡野道子建築設計事務所 主宰)
※2次審査には芝浦工業大学の青島啓太特任助教が参加
遠藤 政樹(千葉工業大学 教授/EDH遠藤設計室 主宰)
下吹越 武人(法政大学 教授/A.A.E.一級建築士事務所 主宰)
杉山 英知(スタジオエイチ一級建築士事務所 主宰)
古澤 大輔(日本大学 准教授/リライト_D アドバイザー)

主催

公益社団法人日本建築家協会(JIA) 関東甲信越支部/大学院修士設計展実行委員会

協賛

株式会社 総合資格/総合資格学院

非公開での1次審査に

新型コロナウィルスの影響により、2020年3月17日(火)から20日(金)に予定していた作品展示と公開審査が中止となりました。このため、3月10日(火)に非公開での1次事前審査が、3月19日(木)に事前審査通過者のみの参加による2次審査がJIA会館1階・建築家クラブにて開催されました。設計展含めさまざまなイベントが中止となる中、形式は変わりましたが、研究の集大成となる卒業設計を披露する貴重な機会となりました。
1次審査では、出展者43名から提出されたA1パネル資料をもとに、野沢正光審査員と実行委員により、2次審査へ進む作品を絞り込んでいきました。野沢氏により、まずは10数点の作品が候補に挙げられ、そこから実行委員を交えた協議へ。この結果、10作品が2次審査進出となりました。
野沢 正光氏
(審査員)
日野 雅司氏
(実行委員長)
青島 啓太氏
遠藤 政樹氏
(実行委員)
下吹越 武人氏
(実行委員)
杉山 英知氏
(実行委員)
古澤 大輔氏
(実行委員)
資料を読み込む審査員と実行委員
モニターにプレゼンパネルを映し出し共有

2次審査進出作品

  • 杉沢優太(芝浦工業大学大学院)
    「心地よい雑然さ ‐境界の干渉から考える空間の多様性‐」
  • 高野美波(昭和女子大学大学院)
    「まちを織り、繋ぐ建築 ‐図書館機能を中心とした住民に寄り添う建築の提案‐」
  • 王 琳(多摩美術大学大学院)
    「階段空間とその周辺の場の連続」
  • 中山陽介(千葉工業大学大学院)
    「滲み合うアンビエンス」
  • 幕田早紀(千葉大学大学院)
    「ポストコロニアル ‐コロニアル都市カスコ・アンティグオ(パナマ)の未来都市への再編‐」
  • 庄井早緑(東京電機大学大学院)
    「生きられた家と生きられる家 ‐経験と記憶の設計実験‐」
  • 原 寛貴(東京電機大学大学院)
    「谷戸多拠点居住論 ‐縮減する横須賀谷戸地域における拠点建築の提案‐」
  • 高木駿輔(東京都市大学大学院)
    「准胝塔 ‐密教における塔建築の再考‐」
  • 野藤 優(法政大学大学院)
    「歩く都市横断 ‐ロングトレイルによる非効率的経験とその価値化‐」
  • 呉 沛綺(法政大学大学院)
    「台湾味ミリュー ‐宜蘭の礁渓における共食景の提案‐」
実行委員長:佐藤 光彦氏

ファイナリストによるプレゼン 最優秀賞に輝くのは?

2次審査当日の3月19日(木)、1次審査に続き会場となった建築家クラブへ、2次審査に参加するファイナリストの模型が運び込まれました。ファイリストからそれぞれプレゼンテーションが行われ、審査員・実行委員と質疑応答が交わされました。この結果、王琳さん(多摩美術大学大学院)の「階段空間とその周辺の場の連続」が最優秀賞に選ばれました。
プレゼン・質疑応答の様子
最優秀賞
  • 王 琳 さん(多摩美術大学大学院)
    「階段空間とその周辺の場の連続」
王 琳さん

王 琳さん

階段空間とその周辺の場の連続
優秀賞
杉沢 優太さん

杉沢 優太さん

  • 杉沢 優太さん(芝浦工業大学大学院)
    「心地よい雑然さ ‐境界の干渉から考える空間の多様性‐」
優秀賞
野藤 優さん

野藤 優さん

  • 野藤 優さん(法政大学大学院)
    「歩く都市横断 ‐ロングトレイルによる非効率的経験とその価値化‐」
奨励賞
幕田 早紀さん

幕田 早紀さん

  • 幕田 早紀さん(千葉大学大学院)
    「ポストコロニアル ‐コロニアル都市カスコ・アンティグオ(パナマ)の未来都市への再編‐」
奨励賞
呉 沛綺さん

呉 沛綺さん

  • 呉 沛綺さん(法政大学大学院)
    「台湾味ミリュー ‐宜蘭の礁渓における共食景の提案‐」
最優秀賞となった多摩美術大学の王さんの作品は、「階段空間とその周囲の場の連続性」に焦点を当てています。ル・コルビュジエとアドルフ・ロースの建築を題材に、階段・スラブ・壁の3要素を抽出し、パターン化と分析に取り組みました。「階段空間」をより自由に考えるための指標となることを目指しています。野沢氏は、「今後あなたがつくる建築も、同じ方法で調べていくことができると考えると、抽象化していくこの作業は魅力的であり、また発見的である」とコメントしました。
優秀賞となった芝浦工業大学の杉沢さんの作品は、東京都葛飾区立石や大阪市北区中津などの下町を歩き「心地よい雑然さ」を持つ空間を抽出。その空間から屋根や柱、フレーミングなど境界操作における接続方法を発見・評価し、設計の基礎としました。提案された建築では、ネガティブに捉えがちな高層ビル・雑居ビル群に囲まれた敷地条件を応用し、その雑然さを取り込んでいます。
同じく優秀賞を受賞した法政大学の野藤さんの作品は、長距離歩道(ロングトレイル)を対象に、交通網の発達した現代において歩くことに価値を持たせるための建築を提案。「みちのく潮風トレイル」のコース上に、地域の水産業を担う共同加工場や浜小屋、漁場を設計し、そこへトレイルコースを利用するハイカーのための食事処や宿泊所などを組み込みました。

設計展を振り返って

審査を終えて野沢氏は、「大学によって指導方法や方針は違いますから、今日の審査は修士設計展というひとつのフィールド上で、サッカーやラグビーを同時にやるようなものでした。ですから、受賞した作品が他と比較して優れているということではありません。
つくる作業としての建築というのは、ささやかでも社会に対する作為なのではないかと思います。新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るっている現在のこの事態は、自身の社会を考えるきっかけにならざるを得ないでしょう。平穏な社会が永遠に続くわけにはいかないのだということを突き付けられながら、建築という平和な仕事をしていく難しさと面白さの中で、皆さんがその作為を続けてくれることを期待しています」と総評を述べました。

表彰式にて。王さん(左)と野沢氏(右)