快挙!!難関国家資格試験
令和4年度「2級建築施工管理技術検定第一次検定
福島県立郡山北工業高校 建築科3年生40名全員合格!

福島県郡山市に所在する県立高等学校。通称は「北工」。建築科をはじめ、機械科、電気科、電子科、情報技術科、化学工学科の全日制課程6学科を設置する。
そんな同校建築科の3年生が、建設系国家資格試験の令和4年度2級建築施工管理技術検定 第一次検定を受検し、「40名全員合格」という快挙を達成した。

そこで、本ページでは同資格試験の概要、さらに同校の取り組みから快挙達成までを当事者である同校建築科3 年生( 当時)の6 名の話を交えながら紹介する―

工業高校で建築を学ぶ
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未来を拡げる資格取得

今回お話を伺ったメンバー

国家資格2級建築施工管理技士は
企業にとって貴重な人材

2級建築施工管理技士とは、建設業法第27条にもとづく『国家資格』。取得すると、ビルや住宅等の各種工事において、施工計画を作成し、工程管理、品質管理など、施工に必要な技術上の管理を行い、さらに技術的な立場から作業員を指導監督するなどの業務を行う「主任技術者」になることができる。この「主任技術者」は、ほとんどの工事現場で配置が義務づけられ ているため、施工管理に携わる者にとって、主任技術者になれる同資格は、もはや必須となっている。

また、同資格は建設業法に定められた「一般建設業」の許可要件である営業所ごとに配置しなければならない「専任技術者」になることができ、さらに公共工事の入札の際に企業を評価する「経営事項審査」においては「2点」となっている。その点数が、そのまま企業の技術力としての評価につながるだけに、有資格者は企業にとって1人でも多く確保したい、貴重な人材というわけだ。

同資格者になるためには、(一財)建設業振興基金が実施する「2級建築施工管理技術検定」に合格しなければならない。検定は第一次検定と第二次検定に分かれて実施され、第一次検定に合格すると2級建築施工管理技士補、第二次検定に合格すると2級建築施工管理技士を取得することができる。第一次検定は、17歳以上であれば受検することができ、第二次検定は、所定の実務経験が受検資格要件として求められる。

今回同校では、受検資格をクリアしている「第一次検定」において40名全員合格という快挙を達成した。学生らも喜びをかみしめており、早川さんは「素直に『うれしい』の一言」、長谷川さんは「合格発表をみて『まずは安心した』というのが正直なところ。合格するために半年かけて勉強してきた」と感想を述べた。試験後に同校では自己採点を実施しており、あらかじめ全員合格の目処が立っていただけに、合格ラインギリギリだった学生は発表まで落ち着かない日が続いたという。

全面的なサポート体制と
高い自主性が全員合格の推進力

工業高校生が国家資格である2級の施工管理技士を受検するのは、珍しいことではない。これには建設業界が抱える課題が大きく関わっている。

業界では技術者不足が深刻であり、人材確保と生産性の向上が喫緊の課題となっている。国はこれに対応するべく、建設業法の改正を進め、技術者の入口となる2級の施工管理技士の第一次検定において、平成28年度には17歳(高校2年生)以上の受検を可能にし、平成29年度には試験を年2回実施として、受検機会の拡大を図ってきた。さらに令和元年度には、第一次検定合格者に「技士補」としての称号を与えることとし、若年層の業界への入職のきっかけを創出。これを受けて全国の工業高校では、資格試験対策を学習カリキュラムに組み込むなどし、それを学校の特色として、在学中の資格取得を推進している。

とはいえ、同資格は国家資格であり、問われる内容は難しく、加えてライバルの大半は知識を活かして仕事をしている実務者だ。第一次検定の合格率は3~4割程度となっており、世にいう「難関試験」でありながら「全員合格」という今回の結果から、同校の指導への注力度合を伺い知ることができる。

同校の取り組みについて長谷川さんは「合格率を見ても簡単に取れる資格ではないことはわかっていたので、勉強をはじめたころは不安でいっぱいだったが、先生方が全面的にサポートしてくれて、試験前までには自信をつけることができた」と話す。同校ではあくまでも「知識の習得は授業の時間内」としているが、実際のところ、学生ら各々の自主学習なくして、結果はついてこなかったはずだ。遠藤さんは「通学時間に電車でテキストを読み込み、学校や家で理解できなかった内容はノートに書き留めて、後で調べたり、練習問題などで理解を深めることに努めた」、髙橋さんは「一日トータル1時間の勉強を続けた。決まった時間ではなく、とにかくスキマ時間をみつけたら、そこでテキストを読み込んだりしていた」としており、むしろ学生らの自主性を高める同校の指導こそが、全員合格の最大の推進力であったと言っても過言ではない。

資格取得で未来が拡がり
学生らの夢は膨らむ

学習に最適な教材を選定し、提供している点にも注目したいこところだ。髙橋さんは教材について「写真や図が多く、現場を知らない自分でも具体的にイメージしながら学習することができた」とし、村上さんは「問題集がよく、各選択肢ごとにくわしい解説が載っていて理解が深まった」と述べた(教材の詳細は下記を参照)。

合格発表後は、学生らはもちろん、その周りの家族や知り合いにも大きな影響を与えている。村上さんは「家族に報告したらみんなで喜んでくれた」、遠藤さんは「合格発表は特に緊張したが、結果、全員合格だったので、みんなで喜びをわかちあうことができた」と述べ、長谷川さんは「母親がほめてくれ、お寿司を食べにいった」と当時を思い出し、にこやかな表情で語った。

国家資格への合格を受けて将来への夢も膨らむ。早川さんは「将来、現場監督になって大きな建物を担当したい」とし、また、池田さんは「資格を活かして世界で活躍できる施工管理技術者になりたい」と話す。長谷川さんは卒業後の進路について「東京の建設会社に就職が決まっている。現場のことを多く学び、誇れる仕事ができる人間になりたい」とし、瞳を輝かせていた。

この先、実務経験を積んでいき、第二次検定合格、ひいては上位資格取得も視野に入ってくる。さらなる資格取得について髙橋さんは「1級建築施工管理技士を取得したい。施工管理を仕事にするなら持っておきたい資格」とし、また遠藤さんは「大規模な建築物に携わる仕事をしたいので、1級建築士取得を考えている」と熱く語った。

「工業高校で建築を学ぶ」
という建設業界への一歩

将来を見据えた際に、安定的な基盤のある建設業界に身を置くことは、素晴らしい選択のひとつであり、「工業高校で建築を学ぶ」ということは、その最初のステップになる。一方で建設業界は、資格の世界であり、同校のような資格取得に力を入れている学校を選びたいところだ。池田さんは「小学生のころから建築士になりたくて、その夢に近づくのに最適な環境がそろっていると思い北工を選んだ」と話しており、長谷川さんも「世の中の役に立つ、地図に残るものを作る仕事に就きたいと考えていて、北工なら資格も多く取得できて、その夢に近づくことができると思い決めた」と述べる。さらに遠藤さんは同校での3年間について「いま振り返ると一つひとつにやりがいがあって、それは大変だったけど、親切な先生や同じ夢を持つ仲間がいて、その苦労はいつも楽しさに変わっていた」と感想を述べた。

最後に高校選びについて髙橋さんは「高校進学で色々考えている人はいると思うが、少しでも建築に興味があるなら北工の建築科で学ぶのがオススメ」とし、村上さんは「勉強はもちろん一生懸命に取り組むわけで、高校生活は一度きりだし、しっかり楽しんでほしい」と晴れやかな表情で未来の後輩たちへエールを送った。

建築科40名全員合格へ
北工の取り組みについて担当教諭の
福田先生にお話を聞きました!

福田先生 福田先生

ー学校の資格取得に対する方針は?

福田 2級建築施工管理資格は全員合格させたいという のが学校としての目標です。座学の授業以外の実習時間 や放課後の時間などを使って指導する学校も多いですが、 そうすると他の科目などを学ぶ機会や部活動の機会を損失することになります。そのため正 規の授業以外の時間を使わずに、授業のコマの中での合格にこだわっています。他にもジュ ニアマイスターの取得も奨励しています。取得すると大学の特待生として進学できる可能性 もありますので、多くの生徒がチャレンジして取得しています。

ー受験対策のスケジュールは?

福田 3年時の6月の受験に向けて、2年生の終盤から資格取得に対する意識付けなどを スタートして、春休みの期間を有効に活用するようにしました。6月の試験で残念な結果に なっても11月の試験で再チャレンジできるので、全員合格できるように生徒をサポートします。

ーどのような指導を心掛けていますか?

福田 試験対策なので合格レベルの知識を習得することはもちろんですが、社会に出て実務 に就いたときに生かせる知識の習得にも注力しながら指導しています。実際に生徒からも、「試 験勉強を通じて建物がどの様に建って行くのか良くわかった!」との声がたくさん出ています。

ー全員合格を達成したポイントは?

福田 試験傾向を徹底的に分析するとともに、生徒一人一人の学習状況をデータ化して、 それに即した指導を徹底することで着実に合格レベルまで実力を伸ばすことができた。

ー教員の方々の指導の工夫など

福田 生徒の目線に立って、試験勉強が辛くなることが無いように、理解度をみながら励まし ながら生徒に合った段階的な指導を心掛けています。また、担当教員4人で役割分担をしな がら、且つ、教諭の異動でこの文化が途切れないように次世代への継承も心掛けています。

ー資格へのチャレンジを通じて生徒はどう変わるのか?

福田 まず、目に見えて自信がついて行くのが分かります。それと未知のものに対して臆するこ となくチャレンジする習慣が身に付きます。建設業界は保有する資格によって大きく未来が変わ るので、在校中に国家資格を取得する経験は社会に出てからも大きな武器になると思います。

ー親御さんの反応は?

福田 新聞にも取り上げられたりするので、多くの保護者や祖父母の方々からも喜んでいた だいています。「先生、建築科に進ませて良かった!」と言っていただけることもあり、我々教師 にとっても大きなやりがいになっていますね。

ー資格を取得した卒業生の活躍について(就業率や離職率の変化は?)

福田 「郡山北工業高校の生徒さんはみんな資格を取得してきてくれる」と、地元企業からも 期待されるようになっています。求人に対して生徒が足らなくなることもあり、就職面でもとても いい効果が生まれています。また、資格を取得した生徒が長く業界で頑張れる傾向があるよう に感じます。近年では大学に進学してさらに建築を学ぶ生徒も増えてきているので、その先の 活躍がとても楽しみです。

ー郡山北工業高校を志す中学生のみなさんへ

福田 工業高校の魅力はモノづくりの技術をしっかり身に付けられるところと、やはり国家資 格を取得できるところです。これは将来仕事に就くうえでとても大きな武器になります。モノづく りが好きな生徒や、早くしっかり就職の準備を進めたい生徒は、ぜひ北工に来てください。 待っています!

ーありがとうございました。

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