平成28年度 一級建築士学科試験 総評

総論

平成28年の1級建築士学科試験は、平成27年度と比較して学科U(環境・設備)は取り組み易い出題でしたが、 その他の科目は昨年よりも難しく、5科目合計では、高得点が取りにくい内容でした。

当学院が独自に分析し、本年度の結果に国土交通省より公表されている合格基準点(※1)をあてはめた場合、 補正があった昨年より合格率が低くなると予想される結果となりました。そのため当学院では、 合格基準点が下方補正される可能性も否定できないと考えております。

  • (※1) 各科目の過半以上(学科T計画11点.学科U環境・設備11点.学科V法規16点.学科W構造16点.学科X施工13点)、かつ、総得点90点以上

正答肢が初出題の問題は、 125問中73問と約6割を占め、昨年の57問より大幅に増加しています。また、 過去の出題内容でも、言い回しを変えるなど理解を試す出題の工夫により難易度は高くなっており、ますます十分な対策が必要になっています。

出題内容としては 実務的な内容が多く、また、社会情勢等を反映した出題傾向も見られます。合格のためには、 法改正・新規準・新技術、耐震、防災、省エネといった新規出題傾向のポイントを押さえた学習と、原理・原則を正しく理解する学習がますます重要になってきています。

[正答肢が初出題(※)の問題数]

  学科T
(計画)
学科U
(環境・
設備)
学科V
(法規)
学科W
(構造)
学科X
(施工)
合計
平成
28年度
15問
/20問中
10問
/20問中
17問
/30問中
17問
/30問中
14問
/25問中
73問
/125問中
  • ※過去11年間の試験で出題されていない内容を「初出題」と定義しています。

【学科T(計画)】

建築史・作品関連・都市計画の事例問題が計5問

職業倫理1問、建築計画10問(うち数値に関する問題6問)、都市計画2問(うち「都市計画・都市デザインの事例」1問、「まちづくり関連用語」1問)、建築史・作品4問、建築積算1問、建築士法関連1問、マネジメント1問が出題されました。

社会的な動向が反映された問題が多数出題

No.4−1のLow-Eガラス、 No.6のパッシブデザイン、 No.17−1のエアフローウィンドウは、 環境、省エネに配慮した計画に関する問題です。また、 No.11−1のレジリエンス、No.20−2のBCPは、近年話題になっている、 災害対策に関する用語です。また、建築士を志す者であれば、知っておきたい用語として、 No.1−1のアカウンタビリティ、 No.1−2の談合、 No.1−4のコンプライアンス、 No.20−1のサブリース事業などが 新たに出題されています。

建築積算で図を使った計算問題が初出題

19は、鉄筋コンクリート構造の梁におけるスタラップの割付本数の値を図から読み取り計算するという、 新しい形式の出題でした。単に数値を暗記するだけでは対応できない、実践的な問題でした。

<初出題の主なキーワード>

bP-1 アカウンタビリティ、bP-2 談合、bP-3 公益通報、bP-4 コンプライアンス、bQ-2 目黒区総合庁舎、 bQ-3 神奈川県立近代美術館鎌倉館、bR-2 コルドバの大モスク、bU-2 パッシブクーリング、bW-3 バスターミナルの誘導車路、bX-3 サイトライン、10-2 筑波研究学園都市、10-4 くまもとアートポリス、11-1 レジリエンス、11-2 ダウンゾーニング、 12-2 ゲーリー自邸、12-3 ヒラルディ邸、14-1 ヘビーデューティーゾーン(重荷重ゾーン)の床の積載荷重、17-3 フィルドジョイント構法、20-1サブリース事業

今後の学習対策

■新傾向対策

新しいキーワードが多く出題される計画に関しては、 「社会的な動向を掴む」という視点で学習することが大きなポイントとなります。

【学科U(環境・設備)】

各分野の出題数は例年通り

環境工学10問(うち計算問題1問)、建築設備10問

環境工学は原理・原則を問う問題が多数出題

bUでは、 日影図の基本的な読み取り方が出題されました。また、 bP−2(照度の定義)、 bS−4(グラスウールの熱伝導率)、 bW−2(色の面積効果)、 10−3(コインシデンス効果)は、 環境工学で使われる用語に関する正確な知識を持っているかどうかを問う問題でした。

建築設備は社会情勢を反映したより専門的な内容が多数出題

15−2(給湯設備の転倒防止)、 15−4(飲料用受水槽の災害応急対策)、 18−3(補助散水栓) 、 19−2(中央管理室)は、 学科T(計画)での出題傾向と同様に 災害対策と絡めた専門的な内容が出題されました。また、 12(空気調和設備)は 空気調和設備と省エネルギー手法との関連性を強く意識した出題内容であり、特にデータセンターの省エネルギー手法に注目した内容も多く含まれていました。

<初出題の主なキーワード>

bP-4 残響室法吸音率、bW-4 面色・開口色、14-3 硬質塩化ビニルライニング鋼管、14-3 管端防食継手、 15-2 給湯設備の転倒防止処置、15-4 飲料用受水槽の災害応急対策、16-1 照度センサ、18-3 補助散水栓、 19-2 中央管理室、20-4 エレベーターの電力消費、20-4 電力回生制御

今後の学習対策

■環境工学の用語を正確に理解する

環境工学においては、 使用される用語を現象とともに正確に理解しておく必要があります。環境工学の 基本的な知識を理解する学習と、その 知識が定着しているか確認する問題演習を繰り返し行う必要があります。

■建築設備と省エネ・防災に関する知識を繋ぎ合わせて把握

昨今の社会情勢から考えても、 建築設備と密接に関連性がある省エネ・防災に関する知識は建築士として必ず知っておかなければならないものです。建築設備を学習する際には、それに 関連する省エネ手法や防災の知識なども合わせて学んでいく必要があります。また、数値を正確に記憶しているかを問う問題も多数出題されているため、 問題演習などで対策をする必要があります。

【学科V(法規)】

各分野の出題数は例年通り

建築基準法20問、関係法令10問が出題されました。 

“建築士法”は、単独問題として4問、融合問題として1問(2肢)の計5問が出題

内訳:単独問題( 21 22 23 24) 融合問題( 29-1、2)。昨年6月に施行された「契約の内容」に関連する問題が、計3肢( 21-3、29-1、2)出題されています。

直近の法改正に関する出題

bS-1「仮使用認定」:昨年6月に施行された改正条文が、そのまま出題されました。

bV「耐火建築物等に関する出題」、28-4「特定避難時間倒壊等防止建築物」(法第27条関連) では、昨年6月に施行された法第27条の改正部分から出題されました。
特にbV-4では、木造3階建て学校を耐火建築物以外の建築物とすることができる、という改正主旨の根幹が出題されています。同時に28-4では、新たに定義された「特定避難時間倒壊等防止建築物」の用語が、建築基準法の関連用語として出題されました。

22-3「建築設備士の意見聴取の努力義務」:昨年6月に施行された新規条文から出題されました。

27「耐震改修促進法」:平成25年に大改正されてから、初めて1問単独で出題されました。

「出題形式」に特徴がある問題

  1. 11 「 確認申請書に添える構造詳細図又は使用構造材料一覧表に明示すべき事項」として、建築基準法施行規則からの出題でした。
  2. 13 構造強度に関する出題:すべての選択肢が「 許容応力度」に関する内容でした。

「容積率」「高さ制限」は正しい手順で確実に解ける問題

  1. No.15 容積率 :昨年からの出題と同様、延べ面積の最大ではなく、容積率の最高限度を求める問題でした。
  2. No.16 高さ制限 :2方向道路の問題でした。

    「容積率」「高さ制限」ともに、敬遠せずに、手順どおりに計算すれば確実に解ける問題でした。

<初出題の主なキーワード>

bQ-1 自家発電設備、bS-1 仮使用の認定、bW-4 外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に設ける防火設備、 12-2 津波による外力、17-4 肥料の製造工場、20-1 高等専門学校、20-2 ごみ焼却場、22-4 保険契約の締結(建築士法)、28-1 急傾斜地崩壊危険区域、28-4 特定避難時間倒壊等防止建築物  

今後の学習対策

■基礎力を身につける

条文に出てくる「用語」の意味や条文の目的を理解することが法規の学習の基礎となります。法令集を引きながら、この基礎力を身に付けましょう。条文の内容・目的をきちんと理解しておくことで、設問の正誤に正しく辿り着くことができます。

■判断力を強化する

条文の規定をそのまま照らし合わせるだけでなく、 具体的な手続きや建築物に適合するかしないかの判断力を問う出題が増えています。 近年の出題傾向を踏まえた学習対策は今後も必要と考えられます。

■文章を読み解く力を養う

過去問又は過去問に近い問題は、言い回しや数値を変えるなどして出題に工夫が見られます。 文章を読み解く力を養うことも基本的、かつ、重要な対策となります。

【学科W(構造)】

各分野の出題数は、ほぼ例年通り

構造力学7問、各種構造20問、建築材料3問が出題されました。

構造力学

力学の基本が問われる内容でした。その中で、 bT(トラス部材の軸方向力)は、 距離の計算に工夫が必要な内容でした。

各種構造

昨年度と比較すると、 全体的に難しい文章表現が多く、難易度は高かったといえます。 15(鋼材の溶接)は、 施工との関連をおさえる必要がある内容でした。また、 耐震計算ルートに関する内容が鉄筋コンクリート構造( 14)、鉄骨構造( 18)で出題されました。その他、 21−1( 支持地盤の判断)は、 杭工事のデータ偽装問題を反映したような内容でした。 25は、近年多く建設されている 免震構造・制振構造に関する一歩踏み込んだ内容でした。 30は、 実務上必要となる総合的な構造計画に関する内容からの出題でした。

<初出題の主なキーワード>

12-3 梁のX形配筋(図)、15-3 低温割れ、16-1 F14T級の超高力ボルト、22-1 圧着接合 摩擦抵抗機構、 23-2 鉄筋のA級継手、23-3 壁式鉄筋コンクリート構造と壁式プレキャスト鉄筋コンクリート構造の混用、 24-3 固有値解析 初期剛性、25-1 積層ゴム1層の厚み、26-1 アスペクト比、28-4 コンクリート円柱供試体の圧縮強度時ひずみ、30-2 イニシャルコスト

今後の学習対策

■複数の知識を重ね合わせて判断する応用力が必要

例えば 12−2( 大梁主筋の重ね継手位置)では、 重ね継手が弱点となることと、 部材の曲げ変形を重ね合わせて不適当であると判断できる応用力が必要です。また、 24−4(曲げ破壊とせん断破壊の構造特性係数Ds)では、それらの 破壊形式と靱性の大小を判断し、その上で 構造特性係数Dsの大小を判断する応用力が必要です。

【学科X(施工)】

各分野の出題数は例年通り

施工計画・工事管理で4問、各部工事で20問、請負契約で1問が出題されました。

多様な切り口で理解を問う出題

環境保全について:
bQ−1海域以外の公共用水域に排出する排出水の水素イオン濃度

例外規定について:
bX−1せき板の取外し(湿潤養生しない場合)

図示問題:
13 木工事(接合金物の種類、形状及び主な用途)、 14 鉄骨工事(溶接部の欠陥と補修方法)、23 耐震改修工事

環境問題・例外規定といった新規内容への対策と、 図示で出題されても内容を読み取り対応する力が必要です。

四会連合協定「建築設計・監理等業務委託契約約款」(平成27年2月改正)から出題

  25四会連合協定「建築設計・監理等業務委託契約約款」と民間(旧四会)連合協定「工事請負契約約款」の融合で出題されました。 近年の改正事項についても、しっかり対応しておく必要があります。

<初出題の主なキーワード>

bQ-1 公共用水域への排出(水素イオン濃度)、bT-3 床面開口部、13-2 梁受け金物、13-4 折曲げ金物、 22-4 電磁波レーダ法、24-3 すきまゲージ、25 建築設計・監理等業務委託契約約款

今後の学習対策

■施工の原則(手順と役割)を理解

学科X(施工)は、まず 施工の流れを理解することが重要です。さらに、各施工段階における 施工上のポイントの理解も必要となります。細部の学習をする前に、 工事の流れを大きく捉えて各段階のポイントを押さえるようにしましょう。

■専門用語の理解 

学科X(施工)では、 専門用語が多くあり、その用語を知らないと解答できない問題も出題されます。専門用語の理解は、 関連する図・写真・現場映像などと結びつけて覚える学習が必要です。また、多様な範囲からの出題が増えているので、周辺関連も意識した学習をおこないましょう。

■数値を押さえる

他科目と比較すると 数値に関する出題が多い(平成28年度は正答肢で10問)といった特徴があります。また、数値の範囲「 以上、以下、超える、未満」まで覚えることが重要です。数値の記憶定着には、日頃から問題演習を行いながら、数値を確認する習慣をつけましょう。

プレゼント

●専門指導校による、丁寧でわかりやすい解説を掲載
平成28年度 1級建築士学科本試験 『解答・解説書』

平成28年度本試験を徹底分析!正答肢はもちろんのこと、資格専門指導校ならではの詳しい解説を掲載しています。 受験された方も、これから受験予定の方も、必須のアイテムです。

  • ※解答・解説書は当学院が独自に作成するもので試験実施機関とは一切関係ありません。
  • ※写真はイメージです。
 

1級建築士試験対策

プレゼント

●プロ講師による丁寧な朱書き入りの解答例で、 「今」の製図試験のポイントが一目瞭然!
平成28年度 設計製図試験 『当学院オリジナル参考解答例』

平成28年度 設計製図本試験 『当学院オリジナル参考解答例』イメージ

当学院が平成28年度設計製図試験を徹底分析し制作した 「当学院オリジナル参考解答例」。解答例には、 プロ講師の丁寧な朱書きで 解説が加えられているため、試験突破の重要ポイントがよくわかります。
無料プレゼントとなっているため、是非、この機会にお申し込ください!

  • ※当学院復元課題文付。
  • ※参考解答例は当学院が独自に作成するもので試験実施機関とは一切関係ありません。
  • ※写真は前年度版です。

平成28年度 1級建築士学科試験 合格実績

平成28年度 1級建築士設計製図試験 合格実績

総合資格学院でめざす一級建築士 総合資格学院は、一級建築士設計製図試験合格を応援します!

総合資格学院は、発表された当年度課題から想定されるあらゆる条件の対策を行う、当年度課題攻略のための「 1級建築士設計製図講座」を開講します。
また、総合資格学院各校にて、本年度課題の攻略ポイントをお伝えする、「設計製図課題攻略ガイダンス」を無料開催します。合わせてご利用ください。

カテゴリトップに戻る 前のページに戻る pagetop