平成29年度 一級建築士設計製図試験 総評

1級建築士 設計製図試験「オリジナル参考解答例プレゼント」

平成29年一級建築士試験「設計製図試験」の課題 小規模なリゾートホテル

本年度 設計製図試験のポイントを映像で解説

本映像では、10/8(日)に行われた平成29年度 1級建築士設計製図試験(課題名:「小規模なリゾートホテル」を当学院がいち早く分析し、試験の特徴や採点のポイントとなる部分についてわかりやすく解説いたします。

【1.平成29年度課題の概要 】

1)出題の概要

2)本年度課題の特徴

本年の課題の大きな特徴は、課題文に多くの要求が記載されたことでエスキス用紙に「敷地図」が記載されたことや、要求室の「面積要求」が多く、エスキスの難易度が高かったことが挙げられます。

その他にも、提案型の居室「コンセプトルーム」が出題され、自身の案を作図と計画の要点でアピールがすることが要求されたことや、屋内的用途の発生する「ピロティ」の床面積算入等、初めての内容が多く出題されたことが特徴でした。

3)出題の特徴(6つのポイント)

  1. 1.周辺環境に配慮した建築計画(名峰や湖の景観、共用駐車場)

    敷地図及び要求図書の特記事項において、全ての客室は、「名峰と湖の眺望に配慮」という条件から、必然的に南及び東に向けて計画することになる条件でした。「L型の客室配置」の計画となります。

    【全ての客室】名峰や湖の眺望配慮(客室Cには眺望に配慮した浴室も要求)

    【レストラン】名峰や湖の眺望に配慮

    【共用駐車場】隣地からの利用者動線に対する配慮

  2. 2.バリアフリーに配慮した計画(客室の室内計画、共用部の計画)

    計画の要点において客室B(車椅子使用者客室)のバリアフリーの提案を3つ以上記述することが要求され、学科の知識を活用して、文章とイラストで提案する課題でした。

    【建築物移動等円滑化基準】を満たすものとする。

    【車椅子使用者用客室】設計の考え方や設計のポイント(仕様、各種寸法等)に関する記述

  3. 3.パッシブデザインを積極的に取り入れた計画
    (自然採光、自然通風、自然エネルギー利用)

    吹抜けやトップライトの要求がなくても自然光や自然通風が得られる計画をすることが要求され、それらを断面図でもしっかりとアピールする必要がありました。さらには、計画の要点でもそれらの提案、説明が問われた課題でした。

    【自然採光、自然通風及び自然エネルギー(太陽熱、井水、地中熱等)】を利用した計画

    【パッシブデザインの手法】採用したパッシブデザイン(3つ以上の手法)の記述要求

  4. 4.斜面地を活かした断面計画(高低差、地盤条件)

    課題発表時からあった「斜面地を考慮した建築物の計画」については、特に一般的な計画をすることで対応できたと考えられますが、表層から2.5mの深さまでの軟弱な地盤に対して、地中梁が支持層まで達した断面図を描きあげる必要がありました。

    【断面計画】斜面地における敷地の高低差(4m)を活かした建築物の立体(断面)構成

    【基礎構造】表層から2.5mの深さまでの軟弱な表土に対応した基礎構造

  5. 5.車両動線を考慮した外部空間の計画(車回し、車寄せ)

    車回しを西側の駐車場と関連させるために、敷地の北西に配置して計画し、さらには敷地内で車が転回できるように計画しなくてはなりませんでした。また、直径12mの円が入ることと、客室が「L型に配置された客室」であることから、全体的に建築物もL型の形状とした受験生が多かったと推測されます。

    【車回し】直径12m以上の円が入る転回スペース

    【共用駐車場】車回しから前面道路を介することなく、アプローチできる計画

  6. 6.提案型の計画(コンセプトルーム)

    今回要求された、「コンセプトルーム」は面積、使用目的、内部レイアウトを設計者自らが提案し、そのコンセプトを図面と計画の要点(記述)で表現する必要がありました。また使用目的(コンセプト)だけでなく、その設い(内装、什器、設備機器等)までを提案することが求められたことから、より実務に近い実践的な出題でした。

    【コンセプトルーム】面積(適宜) & 使用目的(適宜) & 内部レイアウト(適宜)
    既存の観光資源等を任意に想定し、その想定した観光資源等を活用した室の使い方を自由に提案

【2.課題で問われた内容】

本年度の試験も、国が本来求めている 「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」の有無が強く問われた試験でした。

具体的には「室面積」や「構成」の自由度の高い中での「保育所部門」「児童館・子育て支援部門」「共用部門」の各部門の平面的・立体的な構成の検討等、受験生自ら判断しプランをまとめていくことが求められました。

今年、注意書きで問われた @パッシブデザインを積極的に取入れた建築物の計画、A地盤条件を考慮した基礎構造の計画、B天井の高い居室における天井等落下防止対策の考え方については、要点はもとより、図面でも表現する必要がありました。また、プランと要点記述の『整合』も求められました。

1)「適切なゾーニング」と「明快な動線計画」が全体構成に影響する

[課題文概況]

〈2.建築物〉〈(3)要求室〉

保育所部門

  • ・エントランスホールから保育所玄関を経由して、アクセスできるようにする。
  • ・各室は、素足又は上履きで利用する計画とする。
  • ・保育所玄関/保育所部門専用とし、乳幼児の保護者が送り迎えを行う。

児童館・子育て支援部門

  • ・エントランスホールから受付を経由して、アクセスできるようにする。
  • ・各室は素足又は上履きで利用する計画とする。

保育所部門と児童館・子育て支援部門については、 共用部門のエントランスホールを介してアプローチすることが求められました。
さらに空間構成(建物配置のバランス、ゾーニング・動線計画、立体構成等)についても自由度の高い設定の中で、設計者としての判断が問われました。
今年の課題では、@各部門の適切なゾーニングや、A要求面積が大きい室や広場等についても適切に計画することに加え、Bパッシブデザインを考慮した計画についても問われました。
上記@〜Bに対しては以下の点を考慮して計画できていたかがポイントでした。

  1. @各部門の適切なゾーニング
    各部門に関しては、素足又は上足で利用する条件となっていたため、アクセス条件を考慮しながら受付等について適切に計画できていたか。
  2. A要求面積が大きい室や広場等についての適切な計画
    平面計画、断面計画で適切に表現できていたか。また、それらと計画の要点との整合性。
  3. Bパッシブデザインを考慮した適切な計画
    吹抜け、光庭を計画した場合の立体構成や構造計画との整合性。

2)例年以上に実務的な内容が問われた「計画の要点等」(1)(構造)

[課題文抜粋]

〈3.計画の要点等〉

  1. (2) 構造計画について、次の@〜Bの要点等を具体的に記述する。なお、要求図面では表せない部分についても記述する。
    • @プレイルームの上部(屋根又は床スラブ)構造の「部材の断面寸法」並びに、「構造種別・架構形式」及び「スパン割り」について考慮したこと
    • Aプレイルームの天井について、天井落下防止対策について考慮したこと
    • B 「地盤条件(GL-1.2m以深はN値=40 以上の洪積砂礫層であり、地下水位はGL-2.0m以深である。)及び「経済性」を踏まえて、採用した基礎構造の形式(べた基礎、布基礎、独立基礎)について考慮したこと

「構造計画」においては、今年のサブテーマでもある 「天井等落下防止対策」「地盤条件を考慮した基礎構造」についての設問となり、 より具体的な記述が求められました
また、実務に携わる上で必需となる「知識」及び「正しい構造計画ができる力」を問うことにより、1級建築士としての能力の有無が問われました。

3)例年以上に実務的な内容が問われた「計画の要点等」(2)(環境負荷低減)

[課題文抜粋]

〈3.計画の要点等〉

  1. (3) 建築物の環境負荷低減(熱負荷の抑制、省エネルギー効果)について、次の@及びAの要点等を具体的に記述する。また、要求図面では表せない部分についても記述する。なお、答案用紙Uに設けた補足図記入欄に@及びAの考え方等をイラストやシステム図等により補足してもよい。
    • @ 環境負荷低減手法として「太陽熱」、「地中熱」、「井水」のうちから2つ選択し、これらの利用方法及びその省エネルギー効果について考慮したこと
    • A「自然採光」及び「自然換気」について考慮したこと

「環境負荷低減」においても、 「パッシブデザイン」を考慮した設問がありました。
近年、求められている自然の力で快適な環境をつくる建築が、 図面への補足や計画の要点の答案用紙に イラストやシステムの簡易な図示で具体的に問われました。

4)要求図書の追加要求

[課題文抜粋]

〈1.要求図面〉

なお、各図面には、必要に応じ、計画上留意した事項について、簡潔な文章や矢印等により補足して明示する。

  1. (2)2階平面図 (3)3階平面図
    • Bイ.居室の最も遠い位置から2つの直通階段に至る歩行経路、それらの距離及び重複区間の距離
  2. (4)断面図
    • A採用した環境負荷低減手法について、必要に応じ、簡潔な文章や矢印等により明示する。
    • E基礎の断面を図示するとともに、基礎構造の形式及びその範囲を明示する。

昨年の 「簡潔な文章や矢印等により補足して明示してもよい」から、 「明示する」に変わり、図面においても計画の要点等同様、自身の計画についての留意事項を明示し、自己のプランをアピールするプレゼンテーション力が問われました。

歩行距離については、昨年の 「直通階段の一に至る歩行距離」から 「2つの直通階段に至る歩行経路」に変更になりました。また、基礎についても、断面図に 「基礎構造の形式及びその範囲を明示する」との要求があり、実務的知識の有無が問われました。

全体構成・ブロックプラン

※写真はイメージです。

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