卒業設計日本一展2011 京都巡回展トークショー レポート
「卒業設計日本一展2011 京都巡回展トークショー」概要
名称 | 卒業設計日本一展2011 京都巡回展トークショー |
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日時 | 2011年11月13日(日)16:00〜17:30 |
会場 | 京都建築大学校サポート施設 京都伝統工芸館 K3nord |
出演 |
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ゲスト | 冨永美保さん(卒業設計日本一2011 の日本一) |
司会 | 齋藤孝司(メディアショップ) |
協賛 | 株式会社 総合資格 |
平成23年11月13日に京都建築大学校サポート施設京都伝統工芸館k3nord にて、「卒業設計日本一展2011 京都巡回展トークショー」が開催された。
入場開始から約10分足らずで、会場はほぼ満席となった。
前半のテーマは「3.11 の大震災に関わる復興」について、後半は「学生設計展」がテーマとなり、1 時間半以上にわたり行われた。
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会場の京都伝統工芸館
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受付風景
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開始を待つ学生たち
司会の齋藤氏が切り出し「この巡回展も3.11 の大震災の影響を受け、開催があやぶまれた。
総合資格学院をはじめ、さまざまな方の協力のもと、なんとか開催することができた。はじめにこの大震災を語らないわけにはいかない。」とトークショーの幕が開いた。
当日参加した建築家は、震災後それぞれ現地に赴き、被災地を見てまわっている。現状を踏まえて、建築家としてこの震災に対しどういう考えを持っているかが語られた。
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松本 正氏
松本氏…京都から東北を支援するという意味をもつ「京援隊」を立ち上げ、その第一弾として、組み立て解体自在のバスキッチンユニット「SUBACO」を設置した「南三陸番屋ーSUBACO プロジェクト」にて支援。現在も復興支援活動中。
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前田 茂樹氏
前田氏…建築家として何が出来るのか。石巻市、牡鹿の浜を視察し実際の被害状況を確認。街をどう復興して行くかについて、地元住民との話合いや調査を行いながら、現在アドバイスをしている。
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永山 祐子氏
永山氏…地元の方々が共有していた大切な風景が失われた。建築家としてみんなの拠り所となるものを考えていきたいという想いのもと、一度原点にかえり、復興と未来像を考えている。
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梅林 克氏
梅林氏…松本氏のように、現場に駆けつけ実際に行動を起こしている方には敬意を表す。自分としては、少し引いて考えていきたい。震災後、被災地に行ってみたが、余りにも被害が広大すぎる現実がある。頑張れだけではどうしようもない。
国全体の事を考えないと駄目。
これがキッカケとなり建築が変わる節目となるのではと考えている。
建築家たちの復興支援に対する考え方は、それぞれ違う。すぐに行動をおこす、未来像を考え地元と連携をとりながら模索する、一歩引いたところから全体を見渡しながら考えて行こうする。
一様に共通するのは、建築を通し復興へ向け今後どう活動して行くかを真剣に考え、取り組んでいること。その思いがこのトークショーを通して伝わってきた。
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ゲストの冨永 美保さん
冒頭にゲストである冨永さんより、日本一となった今回の作品「パレードの余白」のコンセプト「潮位や光など時間と環境に依存することで、2度と繰り返されることのない祝祭の場となる結婚式場を中心とする台場公園のリノベーション」について説明された。
さらに学生に対し、卒業設計展に参加することで、建築家の先生方の話を伺ったり、同世代の人と話をすることで、世界観が広りプラスになったことが語られた。
建築家の方々は設計展では審査をする側の立場。審査側からの視点で気づいたことを中心に話が進んだ。
永山氏…実際に審査してみると、学生の熱意を感じると同時に、年々表現力と分析力が上がってきていると感じる。
梅林氏…審査員もディテールに重点を置いて見てしまいがちだが、制作した学生に直接話を聞くと「そんな事を考えていたのか」と驚かされることもある。これからは審査方法等を変えていくことも考えないと。
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河井 敏明氏
河井氏…神戸出身で、自身も阪神・淡路大震災に遭い、自宅も倒壊した経験がある。
建築家として無力感を感じることもある。
そんな中で、環境を考えて作るようになった。学生の皆さんも卒業展に関し、モノの作り方を自分の信じる方向でアプローチしていくと良い。
松本氏…卒業設計展はイマジネーションを感じるままに自由に作ることができる。ただし、自己満足にならないように。
前田氏…客観的か主観的かを考え、突き詰めて行くと、社会的なアプローチが必要となってくる。自分の考えている社会と建築がどう繋がるか、という視点で考えてほしい。
建築家の面々が学生に対して伝えたかったこと。それは「卒業設計展ではたとえ入選出来なくても、その作品が否定されている訳ではない。」「見る人により評価は違う。だから自分が納得するものを作ってほしい。」ということ。
震災を受け、日本の建築の大転換期を迎えるであろう、近未来の業界を担う学生達への期待感がひしひしと伝わってきたイベントであった。