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令和8年度 1級建築士学科試験については、難度が高かった令和7年度に比べ、全体的に難度が低くなりました。全体的には取り組みやすかったものの、出題としては、法改正や実務的な内容の他、近年の社会情勢からの新しい用語や、地球温暖化対策に基づいた「環境に配慮した建築物」「木造建築物」「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」といった内容が出題されました。また、高齢者、障害者等への配慮、災害対策や防犯に関する内容もみられました。さらに、その他にも新しい形式の出題もみられました。今後の試験については、これら新傾向問題についてポイントをおさえた学習と過去出題されている内容を正しく判断する学習が重要になります。
出題傾向
各分野の出題数に大きな変化なし
建築計画11問(うち、数値の問題1問)、都市計画3問(うち、事例1問)、建築史・作品3問、設計・監理業務等1問、マネジメント用語1問、建築積算1問。
特徴的な問題
社会情勢を反映した出題
今年も気候変動や大規模災害、少子高齢化、凶悪犯罪などの社会課題への対応に関する出題が見られました。
No.6「環境に配慮した建築物」、No.10-2「都市再生特別措置法の立地適正化計画」、No.20-2「LCA」、No.20-3「サプライチェーンマネジメント」は、持続可能な社会を目指した取り組みに関する内容でした。
No.9「高齢者、障害者等に配慮した計画」、No.13-2「セグリゲーション」、No.14-2「車椅子使用者用客室」、No.15-4「聴覚障害特別支援学校」、No.16-4「精神科病院等」は、SDGsの理念である「誰一人取り残さない」という観点からの出題であると考えられます。
また、No.11-3「緑道」、No.12-4「福祉仮設住宅」、No.14-1「防災センター」、No.15-2「指定避難所」は防災対策に関して、No.12-1「防犯建物部品等(CP表示品)」、No.18-3「委託者の解除権の行使」は防犯対策に関する内容でした。
今年も木材に関する出題
No.5「木造建築物」は、令和3年度から毎年出題が続いている木材活用に関する問題です。また、No.4-1「木製の額縁」は、細部の加工に関する出題でした。木材活用に関する知識は、脱炭素社会の実現に向けて、今後も出題が続くと予想されます。
他科目に関連した出題
No.6「環境に配慮した建築物」、No.15-3「音楽室の天井」は、学科Ⅱ(環境・設備)、No.4-4「屋根の雨仕舞い」、No.5-1「心持ち材」、No.18「四会連合協定「建築設計・監理等業務委託契約約款」」は、学科Ⅴ(施工)に関連した内容でした。
学習対策 社会課題を意識した学習が大切 学科Ⅰ計画は、新たな用語の出題が多く得点しづらい科目です。しかし、それらの用語の多くは、現代社会における課題への施策や意識すべき概念に関するものです。また近年は、他科目で身につけた知識を実際の建築計画に活用する力が試されるような傾向があります。学習においては、こうした点を意識して取り組むことが重要です。
出題傾向
各分野の出題数は昨年度と同様
環境工学10問、建築設備10問
計算問題は換気で1問出題
No.3に「最低限必要な外気の取入れ量」の計算問題が出題されました。ザイデルの式を用いた基本的な内容でした。
図を用いた問題が熱・結露で1問、空気調和設備で1問出題
No.4では「冬期における外壁の温度分布」、No.12では「事務所ビルの事務室での空気調和・換気設備の略図」について図を用いた問題が出題されました。空気調和設備では初出題の図の問題が3年連続で出題されています。
環境・設備融合問題で初出題用語
No.20-4では「ESG不動産投資」が初めて出題されました。近年の省エネルギーや地域貢献などに関する内容でした。
学習対策
環境工学は用語の定義や基礎知識を問う問題が中心
環境工学では、用語の定義や意味に関する基本的な問題が多く見られました。特に、No.1-1「着衣量(clo値)」、No.1-4「クロルピリホス(学科Ⅲ・法規で過去に出題)」、No.9-4「壁の遮音性能と吸音性能の関係」などは、12年以上前の過去問題をベースとした出題でした。いずれも基礎事項の確実な理解が重要な出題でした。
建築設備は初出題の用語が多数出題
建築設備では、No.12の空気調和設備の図を用いた問題をはじめ、初出題の用語が多く見られました。正答肢は過去問題で学習した知識から正解できるものが多かったものの、過去問題を単に暗記するだけでは誤答しやすい問題も目立ちました。この分野については、用語や設備の仕組み、目的を理解したうえで学習を進めることが重要です。
出題傾向
各分野の出題数
建築基準法20問、関係法令10問。
令和7年度に引き続き、建築基準法がNo.20まで20問、No.21以降で関係法令が10問の出題となりました。No.3、No.4は令和7年度で「制度規定(確認申請)」及び「制度規定(建築手続)」として出題されましたが、本年度は、「制度規定(確認申請・建築手続)」及び「制度規定(建築手続)」の内容で出題されました。計算問題は、「容積率」「高さ制限」の2問でした。関係法令では、「建築士法」は2年連続で2問となり、近年のトレンドである「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」は3年連続で単独問題として1問出題されました。
直近の法改正に関する出題
No.8選択肢4では特別避難階段の内装で「不燃材料に準ずるもの」として定められた告示の具体的内容が出題され、選択肢1では準不燃材料・難燃材料についての告示内容が出題されました。No.9「既存不適格建築物」、No.26「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」は直近の法改正からの出題となりました。No.25-4「高齢者移動等円滑化法」で車椅子使用者用部分と改正された基準が出題されました。
「出題のしかた」に特徴がある問題
No.4「制度規定(建築手続)」は、手続きとその手続きに係る書類等の提出先の組み合せを表から判断する問題として出題されました。No.7-3「外壁以外の特定主要構造部」では、従来の問いを「柱」に換えて出題されました。No.9「既存不適格建築物」は用途変更に関して1問単独で出題されました。No.28「建築基準法その他の建築関係法令」は、令和7年度では「戸」に係る条件設定のある建築物の新築に関しての出題でしたが、今回は「階段」に係る建築物の設計社の判断に関しての出題となり、各種関連する法令規定の適否を判断しなければならない問題でした。No.29「建築基準法その他の建築関係法令」は、用途変更及び耐震改修に関する各種規定について出題されました。
学習対策
基礎力を身につける
条文に出てくる「用語の意味」や「条文の目的」を理解することが法規の学習の基礎となります。法令集を引きながら、この基礎力を身に付けましょう。条文の目的・内容をきちんと理解しておくことで、設問の正誤に正しく辿り着くことができます。
判断力を強化する
条文の規定をそのまま照らし合わせるだけでなく、具体的な手続きや建築物に適合するかしないか、実務としての判断力を問う出題が増えています。近年の出題傾向を踏まえた学習対策は今後も必要となります。
文章を読み解く力を養う
過去問又は過去問に近い問題は、言い回しや数値を変えるなど、出題に工夫が見られます。文章を読み解く力を養うことも基本的、かつ、重要な対策となります。
出題傾向
各分野における出題数は、ほぼ例年通り
構造力学7問、各種構造20問、建築材料3問が出題されました。
構造力学
構造力学の7問は、いずれも過去出題された内容に類似した問題または発展形の問題でした。発展形の問題としては、それぞれ、No.1「断面の性質と応力度」が最大・最小垂直応力度分布が同じ値になるときの矩形断面と円形断面の断面積の比を求める問題、No.2「部材の変形」が曲げ剛性が区間で変化する単純梁の中央点のたわみを求める問題、No.6「振動」が質量と水平変位が与えられている構造物の固有周期の大小関係を求める問題でした。残りの4問については過去問を正しく理解していれば正解できる内容でした。
各種構造
例年、出題されている木質構造、鉄筋コンクリート構造、鉄骨構造、基礎構造といった構造種別の他に、No.22「鉄骨鉄筋コンクリート構造」、No.23-1,2「壁式鉄筋コンクリート構造」、No.23-3,4「プレストレストコンクリート構造」、No.24「免震構造」、No.25-3,4「既存鉄筋コンクリート構造の耐震改修」、No.26-4「コンクリート充填鋼管構造」からも出題され、出題範囲は多岐に渡りました。また、No.9「木造軸組工法による地上2階建ての建築物」では、選択肢1「準耐力壁」、選択肢2「木造K形筋かい」が令和7年4月1日施行改正の新設規定に該当する問題でした。
建築材料
過去問を正しく理解していれば、正解できる内容でした。
学習対策
構造力学:構造力学の基本的な計算手順と公式を確実に習得する
構造力学では、近年出題されていないものも含め、過去問に対して十分な準備を行っておき、計算の手順や覚えるべき公式を押さえることが重要です。さらに、発展形の問題に対しても正解に結びつけられる応用力を身に着ける必要があります。
文章問題:過去に出題された内容で確実に得点するために理由やイメージをつけて学習する
各種構造及び建築材料でも、近年出題されていないものも含め、過去出題内容を取りこぼしすることなく、確実に得点する必要があります。そのような過去出題内容に対して、ひとつひとつ、理由やイメージをつけて理解することが、日頃の学習において必要になります。その他にも出題範囲が多岐に及ぶため、幅広い構造設計の知識や構造種別の内容を学習しておく必要があります。
出題傾向
各分野の出題は例年通り
施工計画他・工事管理で4問、各部工事で20問、「工事請負契約約款」と「建築設計・監理等業務委託契約」の融合問題で1問出題されました。
正答肢は8問が初出題
正答肢は8問が初出題でした。正しい選択肢を確実に判断し、消去法で解けるかがポイントでした。なお、初出題以外では、過去10年以上出題の無い、古い過去問も散見されました。
実務的な内容が問われた
初出題の中には、実務的な内容を問う出題も見られました。No.1-2「遠隔臨場の適用」、No.2-2「施工体制台帳の作成の要件」、No.8-1「ガス圧接部の外観試験及び超音波探傷試験を行う技能資格者」が出題されました。それらのほとんどが、施工の実務に関する内容で、施工体制台帳については、令和7年に改正された建設業法からの出題でした。
学習対策
施工の原則(手順と役割)を理解
学科Ⅴ(施工)は、まず施工の流れを理解することが重要です。さらに、各施工段階における施工上のポイントの理解も必要となります。細部の学習をする前に、工事の流れを大きく捉えて各段階のポイントを押さえるようにしましょう。
専門用語の理解
学科Ⅴ(施工)では、専門用語が多くあり、その用語を知らないと解答できない問題も出題されます。また、多様な範囲からの出題が増えているので、周辺関連も意識した学習をおこないましょう。
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