【全体総評】

令和7年度 建築設備士第一次試験(学科)は、昨年度と出題構成はほぼ同じであり、近年急速に活用が進んでいるIT技術に関連する情報通信設備やセキュリティシステム、また、環境性能や災害対策、規準改定、法改正も含めた出題となりました。

科目別に見ると、建築一般知識については、省エネ法の改正に関するBEIの適合基準やZEB、LEED、CASBEEなどの環境評価に関する出題があり、環境計画の計算問題では、過去問を発展させた問題もありました。
建築法規については、4月1日施行改正対応について3問出題があり、改正条文等で確認して解答する必要がありました。
建築設備については、計算問題が空気調和設備で3問、給排水衛生設備で3問、電気設備で4問の計10問と、昨年同様多く出題されました。
その他の文章問題については、実務的な知識が問われる問題や、過去に出題された内容を発展させた問題を通して過去問の周辺事項に対する理解を問うような問題もみられました。

四肢択一式での出題数27問において、昨年同様、建築計画・防災計画からの出題は8問、環境計画からの出題は10問、建築構造・建築材料からの出題は5問、建築施工からの出題は4問でした。

◆建築計画・防災計画(No.1～8)
建築計画について、近年の法改正に関する内容や、一級建築士試験からの初出題が見られました。
No.4は令和6年4月に改正された「大規模建築物の用途とBEIの基準」(省エネ法)であり、No.5の「両側に療養病床の病室がある廊下の幅員」は、令和6年度一級建築士試験で出題されていますが、建築設備士試験においては初出題の内容でした。

◆環境計画(No.9～18)
昨年と同様に、計算問題がNo.11とNo.12で出題されました。
特に、No.12で出題された「風力換気による換気量の計算」は、風上側と風下側の開口部の実効面積を直列合成してから換気量を求めるという初出題の形式でした。
また、例年建築設備で計算問題として出題される「逆二乗の法則」に関する内容が、No.16-4において初めて文章の形で出題されました。
No.17の室内音響の問題については、全て初出題の用語でした。

◆建築構造・建築材料(No.19～23)
No.19の構造力学では、令和2年度にも出題された「等分布荷重を受ける片持ち梁」に関して、等分布荷重を求める問題に発展させた問題が出題されました。
他の問題についても、正答肢はすべて過去問から出題されましたが、その他の選択肢においては初出題のものが多くみられました。

◆建築施工(No.24～27)
No.24-2の「仮囲いの高さ」は、過去問題では正しい数値で出題されていましたが、令和7年度においては不適当な数値で出題されました。
他の問題も正答肢はすべて過去問から出題されました。

四肢択一式での出題数18問において、建築基準法からの出題は昨年同様12問、関係法令からは例年通り6問が出題されました。

◆建築基準法(No.1～12)
「用語の定義」「面積・高さ等の算定方法」「制度規定」「一般構造」「防火・耐火」「避難施設等」がNo.1からNo.6で出題されました。
昨年の「構造強度」に代わり「防火・耐火」は令和5年度以来の出題となりました。
建築設備系は令和2年度以降No.7からNo.12で出題され、ほぼ隔年交互に出題されてきた「排煙設備」と「非常用照明装置」は、これまでの法則通り、今回は「排煙設備」が出題されました。
建築基準法や施行令の範囲で解ける問題と告示まで調べなければならない問題が混在しており、細かい確認が必要でした。

◆関係法令(No.13～18)
「消防法」2問、「建築士法」「電気事業法」各1問の出題数は例年通りであり、近年において隔年交互に出題されている「電気設備に関する技術基準を定める省令」と「電気設備関係法令」は、順番通り「電気設備に関する技術基準を定める省令」が出題されました。

◆近年の改正事項として、建築基準法からNo.5-3「特定避難時間」が初出題でした。
用語としては、No.1-2で「女性自立支援施設」、No.5-2で「火熱遮断壁等」、No.6-3とNo.15-4では「特定主要構造部」が出題されました。
4月1日施行改正に対応する事項については、No.3-1、2、4「制度規定」、No.13「建築士法」の設計工事監理の資格要件が出題され、No.18では「建築物省エネ法」が初めて単独1問で出題されました。

四肢択一式での出題数60問において、昨年同様、空気調和設備及び給排水衛生設備からの出題はそれぞれ15問、電気設備からの出題は24問、設備工事からの出題は6問でした。

◆空気調和設備(No.1～15)
計算問題に関しては、No.5、7、10 の3問が出題されました。
いずれも過去に出題されている計算問題とほぼ同じ内容で、計算量は多いものの手順通りに計算することができれば、正答を導き出せる内容でした。
文章問題に関しては、過去に出題されている内容が中心でした。
No.3、9が初出題であり、No.3-4では水蓄熱が併設されたコ－ジェネレ－ションシステムの総合効率について、No.9-2では「屋内駐車場の換気方式」について問われるなど、実務的な知識が求められました。

◆給排水衛生設備(No.16～30)
計算問題に関しては、No.19、23、24 の3問が出題されました。
No.23は、条件イ.の「器具平均排水流量」を計算に用いない点がポイントでした。
No.24は、「合併処理浄化槽の放流水の日平均BOD」を求める問題であり、平成25年に出題されていますが、近年の出題の中では令和2年に出題された「BOD除去率」を求める問題の発展形ともいえます。
その他の問題では、No.16、20、21、26、30 の5問は正答肢が初出題であり、過去問の正誤を変えて発展させた内容が多くみられました。
特に、No.26-3では「病院に設ける放射性排水処理設備における放射性排水希釈槽の計画」が初めて出題されました。

◆電気設備(No.31～54)
計算問題については、No.33、37、41、50 の4問が出題されました。
その中で、No.33は電気回路に関する問題であり、誘導性リアクタンスと抵抗を直列接続した交流回路における電流値を求める初出題の内容でした。
その他の問題においては、No.40、43、44、51、52、53 の6問は正答肢が初出題であり、例年に比べると初出題の問題が多くありました。
特に、No.43-3｢スターデルタ始動方式｣やNo.51-3｢A種接地工事の接地極の接地抵抗値｣は、過去に出題された内容の発展形ですが、それら過去問の周辺事項も含めて理解しておかなければ対応ができない、難度の高い問題でした。

◆設備工事(No.55～60)
空調・給排水衛生・電気設備の各工事に加えて、建築設備工事の施工計画、施工管理、積算に関して出題されました。
No.57給排水衛生設備の配管工事と、No.60建築設備工事の積算は、正答肢が初出題の内容でした。