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Monthly FACE 〜極める人々〜

Miu Ide(ダンサー)

Profile

1990年、日本生まれ。3歳で両親の勧めでバレエを始め、8歳の時に両親の仕事の関係で台湾へ移住。台湾のスタジオでジャズ、ヒップホップ、体操、また高校ではコンテンポラリーダンス、モダンダンスなど、さまざまなジャンルのトレーニングを積む。その後ロサンゼルスやニューヨークへ飛び、カンパニーを持つ大学講師や、メジャーなメディアのシーンでも活躍するLuamやDana Fogliaなどの振付師の元でトレーニングを受ける。日本に帰国してからは、安室奈美恵、倖田來未、EXILE THE SECOND、三浦大知、AIなどさまざまなアーティストのバックダンサーを務める。その他、振り付けやダンス講師としても活動中。ジャンルレスで世界観のある表現が魅力。

感動をきっかけに夢が膨らんだ

安室奈美恵に三浦大知、EXILE THE SECONDといった日本のダンスシーンをけん引するメンバーから絶大な信頼を置かれている、ダンサーのMiu Ideさん。取材の当日、ダンススタジオに入ってきたMiuさんは、ダンサーならではのしなやかさを感じさせる、柔らかな表情の女性でした。そんなMiuさんにまずはこれまで歩んできた道のりについて伺いました。

「3歳の時からバレエを始めたのですが、その頃のことはあまり覚えていないんですよ(笑)。おそらく言われるがまま、教室に通っていたのだと思います。父親の仕事の都合で台湾に引っ越してからは、バレエだけでなくいろいろなジャンルのダンスを教えているスポーツジムのようなところでレッスンを受けるようになったので、自然とバレエ以外のダンスも踊るようになりました。自分の意思で踊り始めたのはちょうどその頃。とくにヒップホップが好きでかなりのめりこみました。バレエと違って“歌詞がついた”音楽で踊るのが楽しかったんです」

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小学生といえば友達との遊びが何より楽しい時期。ダンス以外に興味を引かれることはなかったのでしょうか。

「今日は友達と遊びたいと思った日もありましたね。ただまあ、母が厳しかったので(笑)。あとは単純に、ダンスが一番楽しかった。結局のところ好きだったからこそ、ずっと頑張って続けてこられたのだと思います」

そして15歳の夏休み。Miuさんはその後の人生を決める体験をしたそうです。

「ダンスの先生と旅行がてらニューヨークにダンスレッスンを受けにいったんです。その旅行自体は半分遊びみたいなものだったのですが、15歳の私にとってダンスの本場の空気はインパクトが強かった。もうショーもレッスンも感動の連続!“将来、プロのダンサーになりたい”とはっきり思ったのはこの時でした」

一度立ち止まったことで次が見えてきた

ニューヨークでの衝撃が忘れられず、“上手な人たちと踊りたい!”と考えるようになったMiuさんは、その後も短期留学などを通じてアメリカでさまざまなトレーニングを積みます。しかし精力的に活動していたある年、ふと踊ることをやめてしまったそう。

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「20歳頃ですかね、自分のダンスが何か分からなくなってきたんです。小さい頃からいろいろなジャンルのダンスを踊ってきたので、よく言えば器用に何でも踊れたけれど、裏を返せば“これ!”という絶対的なものがなかった。それに気付いた時、なぜか踊れなくなっちゃって…。時々レッスンを受けたりはしていましたが、日本にいたり、台湾にいたり、自由気ままに遊んでいました。いま振り返って考えると人生の貴重な休暇だったのかも。休んだからこそ、次への大きな一歩を踏み出せたのですから」

Miuさんの心に再度、ダンスの火をつけたのは、ビヨンセやリアーナなどの大物アーティストのダンサーとして活躍してきたデーナ・フォグリア氏のカンパニーによる、ダンサー募集の知らせでした。

「オーディションに受かった時はガッツポーズ!ずっと憧れていたダンサーだったのでロサンゼルスでの3カ月間は夢のようでした。ただ、トレーニングはかなり厳しく、挑戦とも呼べる時間でもありました。しかし3カ月みっちりと雑念なくダンスに取り組めたのは貴重な体験。自分のダンスと、とことん向き合った3カ月だったように思います。おかげさまで悩んでいた“器用すぎる”問題も吹っ切れ、プロのダンサーとしてやっていく自信がつきました」

プロのダンサーは人間性が求められる

デーナ・フォグリア氏のトレーニング期間を終え、日本に戻ってからのMiuさんの活躍は前述の通り。悩みであった“器用すぎる”ところは、いまや“ジャンルレス”という彼女の個性として輝き、数多くのアーティストからオファーが来る理由となっています。MiuさんのSNSからは日々、忙しくしている様子が伝わってきますが、仕事をする上でどのようなことを心掛けているのでしょうか。

「バックダンサーとして呼ばれることはとても光栄で、有名なアーティストから受ける刺激はとても大きい。ただ、バックダンサーの仕事が続くと、自分のダンスを見失ってしまいそうな気がするので、どれだけ忙しくても、自分のダンスと向き合う時間は取るようにしています」

心身の健康をキープする上で気を付けていることはありますか。

「休むときはきちんと休みます。お友達とショッピングをしたり、お酒を飲んだり。ダンスと離れる時間を持つ方が、長く、新鮮にダンスと付き合っていけると思っています。あとはしっかり食べること。食事の時間が取れないほど忙しいときはコンビニに駆け込んでチキンを食べます(笑)。体あってのダンサーですから!」

ダンサーという仕事に資格はありませんが、Miuさんから見て、ダンサーに必要な資質があれば教えてください。

「いろいろな人と接してきて思うのですが、プロのダンサーとして仕事ができている人はみんな“いい人”なんですよ。資格がない分、人と人とのつながりで仕事が生まれていく職業なので、人間性は実は重要だと思っています」

最後にMiuさんの今後の目標をお聞かせいただけますでしょうか。

「どんな振付師にも“Miuを使いたい!”と思ってもらえるダンサーであり続けたいです。何でも踊れることは、いまや私の大きな強み。この個性を活かして、さまざまなステージで踊りたいです。もうひとつはカンパニーを立ち上げること。いろいろなダンサーと一緒にMiu Ideらしい世界観を作っていけたらいいですね」

取材終了後、私たちの前でダンスを披露してくださったMiuさん。美しい動きの数々に、仕事を忘れて思わず見ほれてしまいました。Miuさんのしなやかで力強く、かつセクシーなダンスは、これからも多くの人の心を熱くしていくでしょう。

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