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Monthly FACE 〜極める人々〜

Hana4(アーティスト、ネイルデザイナー)

Profile

東京都出身。自身の原点である“ネイルアート”を軸に、アート/テキスタイル/イラストレーションなどの制作活動から、アートディレクションまで、国内外問わず幅広く活動するアーティスト。完成度の高い極細な手描きのラインや美しく細やかな色使いを得意とし、“背景にあるストーリーや思いをアートとして表現すること”を信条とする。現在は、写真や旅から得たインスピレーションを基にアートを制作するなど、自身の制作活動にも力を入れ、ファッションやビューティーの枠を超えた、様々な分野でアーティスト活動を行っている。

亡き父が導いてくれたネイルアートの道

一般的に、ネイルアートを施す職業に従事する人は「ネイリスト」と呼ばれますが、Hana4さんは自らの肩書きを「アーティスト、ネイルデザイナー」として活動しています。そこには「従来のネイリストとは異なる道を生きたい」という強い思いがありました。

「そもそも私がネイルアートの道に進んだのは、亡き父からの『手に職を付けなさい』という教えがあったから。幼稚園の頃からお絵描き教室に通っていて、小学校高学年になると米粒にアートを施すようになった私に、父は『手先の器用さを生かしてネイリストになったら?』と勧めてくれたんです」

その後、闘病生活の末に父親が他界してしまい、精神的に大きなショックを受けたHana4さん。当時働いていたアパレルの接客業に戻ることができず、ファッション誌のアシスタントをしながら、ネイルアートの学校に通い始めます。20代前半のときでした。

「正直、ネイルに興味があったわけではないんですが、父が残してくれた言葉が心に引っ掛かっていたし、ネイルアートなら筆を使って絵を描く最先端の仕事ができるかなと考えました」

銀座のシンボル的存在である商業施設「和光」でファッション関係の仕事に就いている母と、同じくファッション業界の最先端で活躍していた父。2人のDNAを受け継ぐHana4さんは、スクールを卒業してネイルサロンに就職すると、一気に人気アーティストへと駆け上がりました。

Hana4さんがこだわったのは、当時ネイル業界で流行していたグラデーションやストーン等のデザインとは異なる、目を細めなければ見えないほど極細のラインやドット柄を用いた、複雑な色使いのアート。それがモデルや雑誌編集者の目に留まり、「ネイルの新しい流行」として広まっていったのです。

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出典:Inside my head.-Hana4' s Book of Nails-

人間国宝が教えてくれた職人魂に心が震えた

ネイルサロンに1年勤めた後、自身がプロデュースしたアート専門のネイルサロンに2年間勤務。その後、海外のネイルアートを学ぶため単身ニューヨークに渡り、短期移住を体験したHana4さん。帰国後は、フリーランスのネイルアーティストとして活躍の幅を広げます。

「当時、業界内である程度の知名度があったので、既存のサロンへの就職は考えられず、フリーとしてサロンを持たずに働き始めました。アートギャラリーを借りてサロンワークをしたり、ファッション誌の仕事をしたり、ネイリストたちに講演したりの毎日。“一匹おおかみ”といわれましたが、お金も信用もなくてサロンが借りられなかっただけ。生きていくのに必死だったんです」

そうやって独自のスタイルを貫いた結果、「サロンを持たないカリスマネイルアーティスト」として、業界内で際立った存在に。ネイル以外に空間全体のアートワークも多数手掛け、2016年にはTBS系列のドキュメンタリー番組「情熱大陸」にも出演を果たしました。

「神業」といわれるようになってもなお、「職人」として技術の追求を続けるHana4さん。彼女のアートワークの一環に、「スキルトレード」というプロジェクトがあります。これは各分野のプロの職人に会いに行き、その技術を学びつつ、自身が持つ技術とコラボレーションさせる取り組み。これまでに、金箔(きんぱく)で100年以上の歴史を持つ「歴清社」などとコラボを果たしました。中でも、江戸小紋の染色作家・小宮康正さんとのコラボレーションは忘れられない仕事の一つになったと言います。

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江戸小紋染色作家・小宮康正氏とのコラボ作品
出典:Inside my head.-Hana4' s Book of Nails-

「人間国宝である江戸小紋の小宮さんは40代後半で引退され、弟子である息子さんの育成に専念されています。あまりにも早い引退だと思いましたが、小宮さんは老眼など加齢による衰えから生じる、ほんの少しのゆがみも許せなかったそうです。他の誰が気付かなくても、技術力は確実に落ちている。それでは人間国宝とはいえない―。だから現役を退く決断をされたんです。私も極限までストイックに取り組んでいるので、小宮さんの思いが痛いほど伝わり、涙が溢れました」

突き抜けたければ、自分だけの「個」を磨くこと

Hana4さんの元には、悩みを抱えた大勢のネイリストたちが顧客としてやってきます。「技術力や接客スキルを盗みたい」そんな思いでHana4さんに会いに来たネイリストたちは、同業者にしか打ち明けられない悩みを涙ながらに吐露し、最後は笑顔になって帰っていくのだとか。

「サロン同士はライバルのような関係性なので、ネイリストって横のつながりが極端に薄いんです。彼女たちの悩みは十人十色ですが、私が必ず聞くのは『今、あなたが楽しいことは何ですか?』という質問。答えに詰まる人は他人と自分を比べている傾向があり、自分の強みを見いだせていません。自分にしかない魅力に目を向けて、そこを磨いてほしいんですよね」

Hana4さん自身、職人としての技術を突き詰める一方、サロンワークでは接客にも並々ならぬこだわりを持っています。

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「お客様の好みと私の感性を融合させて、1つのデザインを作り上げるのがサロンワーク。お客様の本音を聞き出すために、一人一人アプローチを変えながら距離を縮めています。そうやって仕上げると、ほとんどの方に『このまま爪が伸びなければいいのに!』と言ってもらえる。お客様ありきの仕事は、技術よりも接客を大切にしています」

現在、インスタグラムのフォロワーは157,000人(2019年1月時点)。2017年には初の書籍を発売し、現在は「RVCA SHIBUYA GALLERY」にてアート展”NEW me”の真っ最中(2月17日まで開催)。これだけ売れっ子のHana4さんでも「いつも不安と隣り合わせ」と話します。

「『技術にゴールはない』それが私の座右の銘です。例えば世界を股に掛けて戦うスポーツ選手は、上には上がいることを知っていて、わずかでも気を抜かない。1日休んだことで、もし金メダルが銀メダルになったら、その1日を悔やむと分かっているから。私も日々やり残したことがないように生きています」

常にベストコンディションでいられるよう、睡眠や食事、ストレスなどに最大限配慮しているというHana4さん。今後はネイルアートで十分な収入を得られる仕組みを作り、自然や環境に投資していきたいと夢を語ってくれました。 “個の魅力”と“技術”を磨く努力を怠らない。それが、Hana4さんが「カリスマ」と呼ばれ続けるゆえんに違いありません。

取材・文・撮影:小林 香織

写真出典:Inside my head.-Hana4' s Book of Nails-【著】Hana4
出版社:世界文化社

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