香川県庁(日本〜香川県)
戦後の日本を代表するモダニズム建築
“行政”と“民間”の意識の違いをユーモラスに描いた桂望実の小説「県庁の星」を、織田裕二と柴咲コウ主演で映画化。つぶれそうなスーパーに派遣された、プライドが高いエリート県庁職員・野村が、パート店員・二宮らとぶつかりながら、自身の価値観を見直していく姿がテンポよく描かれています。
野村が勤めるK県の県庁として使われたのが香川県庁舎です。庁舎は本館、東館、北館、議会議事堂、天神前分庁舎、警察本部庁舎で構成され、このうちの本館、東館、警察本部庁舎は、日本が誇る建築家・丹下健三が手掛けました。特に、1958年竣工の東館は、丹下作品の中でも広島ピースセンター、国立代々木競技場と並ぶ傑作といわれています。和風建築の垂木(たるき)を思わせる各階軒先の小梁(こばり)など、伝統的な日本の建築をコンクリートで表現した独自のデザインは、戦後の日本を代表するモダニズム建築として知られています。
「県民に開かれた県庁舎」をコンセプトに作られた東館(当時は本館)は、1階部分がピロティ、ガラス張りの屋内ロビー、そして日本庭園を思わせる南庭となっており、そのコンセプト通り、“県民が自由に行き来できる空間”となっています。また、1階ロビーに飾られた猪熊源一郎の陶板壁画「和敬清寂」をはじめ、剣持勇が手掛けた県知事の執務机(現在は香川県立ミュージアムに展示中)など、赤や青、黄色などを用いた椅子や棚が置かれた館内は、無機質なコンクリートに色を添え、とてもモダンな雰囲気です。行政の権威を主張するような戦前の威圧的な庁舎と比べ、戦後の開かれた民主主義を建築で表現したこの庁舎は、その後多くの建築に影響を与えました。
カイカクするのは、ココロです★
■Introduction
桂望実による同名ベストセラー小説を、「踊る大捜査線」シリーズの織田裕二主演で実写映画化した痛快コメディー。織田が演じるのは、県庁に勤めるキャリア官僚。女優や歌手など、マルチに活躍する柴咲コウが、三流スーパーのパート店員を演じる。監督はTVドラマ「白い巨塔」や「ラストクリスマス」を手掛けた西谷弘。
■Story
野村聡(織田裕二)はK県庁のキャリア公務員。プライドも成績も高く、業務にもそつがない上昇志向丸出しの男。ある日、県政の目玉である民間企業との人事交流研修のメンバーに選出された野村。しかし研修先は客もまばらな、ひなびたスーパーだった。しかも、野村の教育係・二宮あき(柴咲コウ)は、自分より年下のパート店員。マニュアルのないスーパーでは、まったく役立たずの存在で、二宮とも事あるごとに衝突してしまう。しかし、あるきっかけで野村は二宮と共に、危機にひんしたスーパーの改革に乗り出すことになる。

ありふれた日常の大切さをかみしめる
2016年11月に劇場公開以来、ロングラン上映を続けている、こうの史代原作の『この世界の片隅に』。劇場公開後もテレビドラマ化、そして12月には本作に30分の映像を加えた『この世界のさらにいくつもの片隅に』の公開も控え、まさに“100年先に伝えたい作品”として、ますますの広がりを見せています。
第2次世界大戦下の広島・呉に、お嫁に来た“すずさん”。彼女は自分を見初めた夫・周作のこともよく知らないまま、義父母やちょっぴり厳しい義姉とその娘、という家族と新しい暮らしを始めます。ちょっとぼんやりしていて、絵を描くことが好きなすずさんの柔らかな佇まいは、いわゆる「戦争映画」とは一線を画し、気負いなく物語に入り込めるでしょう。
配給がわずかとなれば、野草を摘んだり武士の兵糧飯を研究したりと工夫し、心動かされる風景があればノートに描くなど、何気ない日常を精いっぱい楽しむすずさんの姿はとても魅力的です。しかし、段々と厳しくなっていく戦況を前に、生活は徐々に変化を見せていきます。昨日あったものが、無い。昨日にはいた人が、いない。ちょっとずつこぼれていく普段の暮らし。「みんなが笑うてくらせりゃ、いいのにねぇ」というしゅうとめさんの言葉がしみじみと胸を打ちます。等身大の主人公を通して私たちが目にするのは、戦争という極限の中にも確かにあった市民の姿です。夜中の空襲警報で寝不足になり、あくびをしながら洗濯物を干したり、防空壕(ごう)の中でおしゃべりに花を咲かせたり…。そんな私たちにも実感できる日常の一コマ一コマと、風景を一変させる戦争との対比が、戦争の悲惨さを声高に語らずとも、その恐ろしさや、やるせなさを雄弁に物語っています。
昭和20年、広島・呉。わたしは ここで 生きている。
■Introduction
第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞したこうの史代の同名コミックを、『マイマイ新子と千年の魔法』の片渕須直監督がアニメ映画化。片淵監督がクラウドファンディングで資金を集め、NHK「花は咲く」アニメ版でタッグを組んだ2人の、再タッグが実現した。第2次世界大戦下の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前向きに生きようとするヒロイン北条すずの声を女優の、のんが演じる。“すずさん”を囲むキャラクターには細谷佳正、小野大輔、潘めぐみなど、実力派声優陣が集結。
■Story
絵を描くことが好きな18歳のすず(声:のん)に突然、縁談が持ち上がる。よいも悪いも決められないまま話は進み、昭和19年2月、すずは軍港の街・呉に嫁ぎ、海軍勤務の文官・北條周作(声:細谷佳正)の妻となった。夫の両親は優しく、義姉の径子は厳しく、その娘の晴美はおっとりしてかわいらしい。配給物資が徐々に減っていく中でも、すずは工夫を凝らして食卓をにぎわせ、衣服を作り直し、時には好きな絵を描き毎日の暮らしを積み重ねていた。そして、昭和20年の夏がやってくる―。
