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アーキテクト・イン・シネマ 〜映画に観る建築・住まい・家族〜

オーシャンズ8
  • オーシャンズ8
  • 『オーシャンズ8』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売・販売元:ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
  • ■価格:¥1,429+税
  • 監督:ゲイリー・ロス
  • 出演:サンドラ・ブロック ケイト・ブランシェット アン・ハサウェイ
    ミンディ・カリング サラ・ポールソン オークワフィナ
    リアーナ ヘレナ・ボナム=カーター 他
 

(C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLCC.

TWAフライトセンター(アメリカ〜ニューヨーク)

ミッドセンチュリーを代表する建築家サーリネンの幻のターミナル


TWAフライトセンター(アメリカ〜ニューヨーク)

(C)shutterstock

ジョン・F・ケネディが大統領に就任した翌年の1962年、アイドルワイルド空港(現ジョン・F・ケネディ国際空港)に建設されたトランス・ワールド航空のTWAフライトセンターは、建築家でありプロダクト・デザイナーでもあるエーロ・サーリネンの代表作といわれています。翼を広げたような伸びやかな外観と曲線を多用した優美な内装は、当時の人々の、空の旅への憧れやロマンを象徴する建物でした。

新たなジェット時代のアイコンだったこのターミナルですが、トランス・ワールド航空の経営破綻に伴い2001年に閉鎖。以降、日の目を見ることはありませんでしたが、1994年にニューヨーク市の歴史建造物に指定され、2005年には合衆国およびニューヨーク州の史跡として登録されるなど、建築物としては高い評価を得ています。サンドラ・ブロック、アン・ハサウェイらの豪華共演で話題となった本作のほか、スティーヴン・スピルバーグ監督の『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』にも登場。近未来感たっぷりのブリッジを抜けると、コンクリート・シェル構造を用いた、流れるような曲面と大きな円天井の開放的な空間が広がっています。また、サーリネンのもう一つの代表作でもあるチューリップチェアや、サーリネンが作り出した通称“チリペッパー・レッド”を配した待合ロビーのじゅうたんや造り付けのソファに加え、離発着を告げる反転フラップ式案内表示機など、細部に至るまでこだわりが満載。ミッドセンチュリーをけん引した、モダンで洗練された空間となっています。

これまでは映画などでしか見ることがかなわなかった幻のターミナルでしたが、今年5月には「TWAホテル」としてリニューアル・オープン。当時の雰囲気を残しつつも、新しくレトロ・モダンな空間として生まれ変わりました。ニューヨークを訪れた際は、サーリネンの幻の傑作をぜひ間近でご覧ください。

ターゲットも、ダマしも、史上最強
目撃者は、全世界。

■Introduction

ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピットらオールスターキャストが集結した大ヒット作『オーシャンズ』シリーズを、女性キャストで一新したクライムアクション。前作までの主人公ダニー・オーシャンに代わり、本作の主人公である妹デビー・オーシャンを演じるのは、『ゼロ・グラビティ』のサンドラ・ブロック。その他、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、そして歌手のリアーナら豪華女優陣が出演する。これまで『オーシャンズ』シリーズの監督だったスティーブン・ソダーバーグはプロデュースを務め、本作では、『ハンガー・ゲーム』のゲイリー・ロスが監督を務める。

■Story

伝説の犯罪集団“オーシャンズ”を率いたダニー・オーシャンの妹デビー・オーシャン(サンドラ・ブロック)が、5年の刑期を終え仮出所を果たす。出所して早々、右腕であるルー・ミラー(ケイト・ブランシェット)と共に犯罪のプロフェッショナルを集め、新たな“オーシャンズ”を結成する。彼女たちのターゲットは、世界最大のファッションショー「メットガラ」でハリウッド女優ダフネ・クルーガー(アン・ハサウェイ)が身に着ける1億5000万ドルの宝石。トップレベルのセキュリティーを前に、前代未聞の犯罪計画が幕を開ける―。

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わたしは、ダニエル・ブレイク
  • わたしは、ダニエル・ブレイク
  • 『わたしは、ダニエル・ブレイク』
  • ■発売日:Blu-ray&DVD発売中
  • ■発売・販売元:バップ
  • ■価格:Blu-ray ¥4,800+税 DVD ¥3,800+税
  • 監督:ケン・ローチ
  • 出演:デイヴ・ジョーンズ ヘイリー・スクワイアーズ 他
 

(C) Sixteen Tyne Limited, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,British Broadcasting Corporation, France 2 Cinema and The British Film Institute 2016

名匠ケン・ローチ監督が人間の尊厳について問う

デビュー作以降、50年にもわたってイギリスの労働者や移民など弱者に寄り添ってきたケン・ローチ監督。カンヌ国際映画祭で『麦の穂をゆらす風』に続き、見事2度目となるパルム・ドール賞を受賞した本作には、引退宣言を撤回してまで作ったという監督の熱い思いが込められています。突然、心臓の病に襲われ医師から働くことを止められた大工のダニエルと、2人の子供を持つシングルマザーのケイティ。偶然知り合った彼らは、国に援助を求めるも複雑な制度と機械的な役所の対応に振り回され、次第に疲弊し追い詰められていきます。

かつては“揺り籠から墓場まで”といわれたイギリスの福祉制度も、サッチャー政権以降、破綻の一途をたどり、そのしわ寄せは老人や子供、移民など弱者を直撃しているのが現状です。なぜ貧困に陥ってしまうのか、なぜ行政は必要としている人に支援をしないのか。そんなローチ監督の怒りが画面からひしひしと伝わってきます。病気、失業、離婚などをきっかけに、負のスパイラルにはまった彼らの姿は、ここ日本でも決して人ごとではありません。

仕事に励み、献身的に妻を介護し見送ったダニエル。ケイティ親子や隣人、仕事仲間などから慕われるその実直な人柄は映画の救いであると同時に、そんな彼だからこそ“人間の尊厳”について私たちに強烈に問い掛けます。「私は、ダニエル・ブレイク」。映画の最後の言葉が胸に迫る、ローチ監督の傑作です。

人生は変えられる。隣の誰かを助けるだけで。 ■Introduction

第69回カンヌ国際映画祭で、『麦の穂をゆらす風』に続く2度目のパルムドールを受賞した、イギリスの巨匠ケン・ローチ監督作品。前作の『ジミー、野を駆ける伝説』を最後に、映画界からの引退を表明していた監督が、「今どうしても伝えたい物語」として引退を撤回してまで制作した作品で、複雑な制度に翻弄(ほんろう)された親子が、人としての尊厳を踏みにじられ貧困に苦しみながらも、助け合い生きていこうとする姿を描く。

■Story

イギリス北東部ニューカッスルで、大工として働く59歳のダニエル・ブレイク(デイヴ・ジョーンズ)は、心臓の病を患い医者から仕事を止められてしまう。国の援助を受けようとするが、複雑な制度に阻まれ、満足な援助を受けることができずにいた。そんな中、シングルマザーのケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)と二人の子供を助け、交流を始めたダニエル。貧しくても寄り添い合い、絆を深めていく彼らだったが、次第に厳しい現実に追い詰められていく。

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