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アーキテクト・イン・シネマ ~映画に観る建築・住まい・家族~

ブエノスアイレスの夜
  • ブエノスアイレスの夜
  • 『ブエノスアイレスの夜』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売元・販売元:アット エンタテインメント
  • ■価格:¥3,990(税込)
  • 監督:フィト・パエス
  • 出演:セシリア・ロス ガエル・ガルシア・ベルナル 他
 

(C) benjamin cabassot - Fotolia.com

 

(C)Circo Beat S.R.L. ARGENTINA-2001

コロン劇場<アルゼンチン~ブエノスアイレス>

南米の芸術・文化の発信地


コロン劇場(アルゼンチン~ブエノスアイレス)

映画『ブエノスアイレスの夜』の舞台となったアルゼンチンの首都・ブエノスアイレス。アルゼンチン・タンゴ発祥の地であるこの都市は、“南米のパリ”と呼ばれるようにヨーロッパからの移民が築いた多くの建築物がほかの都市とは違う独特の雰囲気を醸し出しています。48地区に分けられたこの都市では、雰囲気や町並みが異なり、地区ごとに様々な顔に出会えます。

ブエノスアイレスでぜひ訪れたい場所のひとつが、サン・ニコラス地区にあるコロン劇場。ここはパリのオペラ座、ミラノのスカラ座とならび、世界三大劇場といわれている由緒ある劇場で、ヨーロッパがシーズンオフの時期には世界的に有名なオーケストラや音楽家が公演を行います。イタリア・ルネッサンス様式の劇場内は7階までの観客席が馬蹄形にステージを囲み、立ち見を含めると収容人数はおよそ3000人。これはスカラ座に次いで世界第二位の規模となっています。世界でもっとも音響効果の良い劇場の一つといわれるこの劇場ですが、見事な彫刻が施された大理石の階段ホールや、天井の繊細なステンドグラス、場内を照らす直径7メートルもの巨大なシャンデリアなども観客を魅了することでしょう。

映画では過去のトラウマから逃れられないカルメンを通して、ブエノスアイレスの別の一面を知ることができますが、現代風の高層ビルや、エビータが眠るレコレータ墓地、カラフルな街並のカミニート、カサ・ロサーダ(大統領府)など、見どころも多く街歩きを存分に楽しめるでしょう。

『孤独の果てに、あなたがいた――。』 ■Introduction

過去に怯える2人の男女が、“声”を通して愛し合う姿を描いた、情熱的で切ないラブ・ストーリー。
出演は『オール・アバウト・マイ・マザー』のセシリア・ロス、日本でもその端正なルックスから熱狂的なファンが多い『モーターサイクル・ダイアリーズ』のガエル・ガルシア・ベルナル。セシリア・ロスの実生活の夫であるフィト・パエス監督が描く衝撃的な結末が、あまりにも切なく印象的。

■Story

20年ぶりに故郷のブエノスアイレスへ帰国したカルメン(セシリア・ロス)は、過去に起きた軍事クーデターにより全てを失い、それ以来、人を愛することを忘れ、肉体的にも人と触れ合うことができなくなっていた。ある日、受話器越しに聞いた青年グスタボ(ガエル・ガルシア・ベルナル)の声に官能を覚え、顔も知らないグスタボを雇い、アパートメントの隣室で、自分のためだけに本を読ませるカルメン。顔もあわせず“声”だけの関係を繰り返すうち、2人はいつしか惹かれあっていった。

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グラン・トリノ
  • グラン・トリノ
  • 『グラン・トリノ』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売元:キングレコード
  • ■価格:¥1,500(税込)
  • 監督:クリント・イーストウッド
  • 出演:クリント・イーストウッド ビー・バン アーニー・ハー
    クリストファー・カーリー 他
 

Motion Picture: (C) 2008 MATTEN PRODUCTIONS GmbH & Co. KG. (C) 2008 Warner Bros Entertainment Inc. Stills & Artwork: (C) 2008 Warner Bros Entertainment Inc.

「古き良きアメリカ」を生きる男が“息子”に伝えたかったもの

1950年代以降、アメリカ人の憧れのライフスタイルといえば、郊外の芝生つき一戸建てに住むことでした。家族の長である父親の役割は、美しい芝生を維持し、家族にバーベキューを振る舞い、家のメンテナンスを担うこと。朝鮮戦争の帰還兵で、自動車の組立工として50年働いてきた頑固で偏屈な老人ウォルト・コワルスキーもまた、ポーチでビールを飲みながら美しく整えられた芝生と、自分の愛車である72年製のグラン・トリノを眺めることを何よりの楽しみとしている、典型的なアメリカの男といえるでしょう。

ウォルトが暮らすハイランドパークは、フォード社のお膝元として発展した街。かつては彼のような自動車工が人口の半数近くだったこの街も、日本車の台頭とともに徐々に衰退。白人から黒人、アジア系の住民が大半を占めるようになって以来、ウォルトの近隣の家々もかつての輝きを失い、荒廃した家が目立つようになりました。「前の住人が見たら化けてでるだろうな」と隣のモン族の荒れた庭を見て吐き捨てるように言ったウォルト。それでも引っ越さず、頑なに自分のルールを貫く彼と彼の家は、「古き良きアメリカ」の最後の砦といえるでしょう。

しかし、自分の分身ともいえるグラン・トリノをきっかけに、隣に住むモン族の内気な少年タオとしっかり者の姉スーと関わりを持つようになった彼は、2人の純粋さや誠意に触れるにつれ、自らの態度や考え方を次第に変化させていきます。昔かたぎのアメリカの“父”は、“息子”に何を伝えるのか。彼の魂の教えは、強烈なメッセージとして私たちに伝わってくることでしょう。

『俺は迷っていた、人生の締めくくり方を。少年は知らなかった、人生の始め方を。 』 ■Introduction

監督としても映画史に残る名作を放ってきたクリント・イーストウッドがオスカー受賞作『ミリオンダラー・ベイビー』以来4年ぶりの主演を務めたヒューマンドラマ。近隣の人々との交流を頑なに拒み、息子や孫とも疎遠になった気難しい老人が、自分の半身ともいえる愛車の「グラン・トリノ」をきっかけに、隣に引っ越してきたアジア系移民の少年、タオとその家族と交流し、自身の先入観や偏見と向き合い改めていく姿を描く。

■Story

妻に先立たれた頑固な老人ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は、自動車工を退職した後、日本車が台頭し東洋人の町で一人暮らしていた。人に心を許さず、無礼な若者たちを罵り、自宅の芝生に一歩でも侵入されれば、ライフルを突きつける。そんなウォルトの頑固さゆえに、いつしか息子や孫とも疎遠になってしまっていた。一方、隣へ引っ越してきた少年タオ(ビー・バン)は、学校にも行かず、仕事もなく、自分の進むべき道がわからなくなっていた。そんな2人がウォルトの愛車<グラン・トリノ>をきっかけに出会い、不思議な関係を築いていく。

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