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アーキテクト・イン・シネマ 〜映画に観る建築・住まい・家族〜

日本のいちばん長い日
  • 日本のいちばん長い日
  • 『日本のいちばん長い日』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売元:テレビ朝日
  • ■販売元:松竹
  • ■価格:¥3,300+税
  • 監督・脚本:原田眞人
  • 出演:役所広司 本木雅弘 松坂桃李
    堤 真一 山ア 努 他
 

(C)2015「日本のいちばん長い日」製作委員会

京都府庁旧本館(日本〜京都)

和洋折衷の美が光る、現役最古の官公庁舎


京都府庁旧本館(日本〜京都)

1945年8月、太平洋戦争末期。連合軍は日本に対して無条件降伏が記されたポツダム宣言の受諾を迫っていました。降伏か本土決戦か…。ギリギリの攻防を繰り広げる日本政府と若き陸軍将校たちの姿を追いながら、8月14日から玉音放送へ至る8月15日までの緊迫の24時間を描いた『日本のいちばん長い日』。原田眞人監督は1967年の岡本喜八監督版とは異なり、本木雅弘演じる昭和天皇を登場させ、天皇、総理大臣、陸軍大臣、若き将校らそれぞれの信念を貫く重厚な人間ドラマとして仕立てています。

本作で、役所広司演じる阿南惟幾(これちか)陸軍大臣の拠点である陸軍省本庁舎として使われたのが、桜の名所としても名高い京都府庁旧本館です。明治時代、文明開化の波とともに多くの洋館が建設されましたが、明治37年(1904年)12月20日に竣工した旧本館もその一つ。昭和46年に本館としての役割は終えたものの現在も執務室として使われており、現役の官公庁舎としては日本最古のものとなっています。重厚なルネサンス様式の建物は、東京駅の設計で知られる建築家・辰野金吾の弟子である松室重光によるもの。館内には、大正天皇即位の礼、および昭和天皇即位の礼に関する閣議も開かれた旧本館のシンボルである「正庁」、24人の知事が使用した「旧知事室」、府議会の議場だった「旧議場」などがあり、創建当時の姿を見ることができます。

洋館の見どころの一つといえば、和洋折衷の美。折上小組格天井(おりあげこぐみごうてんじょう)で仕上げた正庁、旧知事室の、見事な構成の格天井と重厚な廻り縁や、大理石にタイルを組み合わせた暖炉、アーチ型の曲線や蛇腹型の装飾を施した旧議場のしっくい壁のほか、「日本洋家具の父」といわれた杉田幸五郎の家具も置かれ、工芸品のような趣さえ感じさせます。また、館内にはギリシャ国花でもある「アカンサス」をモチーフとした装飾が随所に散りばめらています。劇中、会議に向かう阿南に向かって敬礼する将校たちの姿を捉えた階段のシーンの“手すり”にもご注目ください。

その決断に、すべての希望は託された。

■Introduction

原作は昭和史研究の第一人者・半藤一利による大ベストセラー「日本のいちばん長い日 決定版」。監督・脚本は社会派ドラマ『クライマーズ・ハイ』や、家族の愛を描いた『わが母の記』でモントリオール世界映画祭審査員特別グランプリに輝いた原田眞人が務める。実在した陸軍大臣・阿南惟幾を役所広司が演じる他、昭和天皇役を本木雅弘が務める。さらに松坂桃李や堤真一、山ア努ら実力派俳優陣が集結。

■Story

太平洋戦争末期、戦況が困難を極める1945年7月。連合国は日本にポツダム宣言受諾を要求。降伏か、本土決戦か―。連日連夜、閣議が開かれるが議論は紛糾、結論は出ない。そうするうちに広島、長崎には原爆が投下され、事態はますます悪化する。“一億玉砕論”が渦巻く中、決断に苦悩する阿南惟幾陸軍大臣(役所広司)、国民を案ずる天皇陛下(本木雅弘)、聖断を拝し閣議を動かしてゆく鈴木貫太郎首相(山ア努)、首相を献身的に支え続ける迫水久常書記官(堤真一)。それぞれが苦悩する一方、終戦に反対する畑中健二少佐(松坂桃李)ら青年将校たちはクーデターを計画。日本の降伏と国民に伝える玉音放送を中止すべく、皇居やラジオ局への占領へと動き始める。

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誰も知らない
  • 誰も知らない
  • 『誰も知らない』
  • ■発売日:Blu-ray発売中
  • ■発売・販売元:バンダイナムコアーツ
  • ■価格:¥3,800+税
  • 監督:是枝裕和
  • 出演:柳楽優弥 北浦 愛 木村飛影
    清水萌々子 韓 英恵 YOU
    串田和美 岡元夕紀子 平泉 成
    加瀬 亮 タテタカコ 木村祐一
    遠藤憲一 寺島 進 他
 

(C)「誰も知らない」製作委員会

過酷な状況下を生き抜く子供たちを見つめる

第71回カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを受賞した是枝裕和監督の『万引き家族』。『そして父になる』や『海街diary』など、これまで“家族”を描き続けてきた是枝監督がこの作品で描いたのは、犯罪を通してつながる“いびつ”な家族の姿。「年金の不正受給」から着想を得たというこの物語は、実際の事件を題材にしたこと、そして社会の弱者に焦点を当てたという点においても、2004年の『誰も知らない』にどこか通じるものがあります。

第57回カンヌ国際映画祭で、主演の柳楽優弥(当時14歳)が史上最年少および日本人初の最優秀主演男優賞を獲得した『誰も知らない』は、1988年に実際に起きた「巣鴨子供置き去り事件」をモチーフにしています。父親が蒸発後、母親も4人の子供を置いて家出。育児放棄された子供たちのニュースに世間は“鬼のような母親”“悲惨な子供たち”というイメージを抱きましたが、是枝監督は「本当にそうだろうか?」と疑問に思ったことがこの映画の出発点だったといいます。無戸籍のため学校にも行けない彼らは、電気もガスも止められる中、ぎりぎりの生活を強いられます。胸が痛くなるような光景、はたから見れば過酷としか言えない状況の中でも、重苦しさを感じさせないのは、子供たちのナチュラルな佇まいによるものでしょう。

是枝監督といえば子供の撮り方が抜群にうまいことで知られていますが、事前に台本を渡さず、現場でせりふを口伝えに教えるという撮影方法は本作から生まれたもの。子供たちの自然な表情から発せられる喜びや、たくましさがキラリと光るからこそ、なお一層、本作で描かれる悲劇が胸に迫ってきます。

生きているのは、おとなだけですか。
■Introduction

母親が父親の違う子供4人を置き去りにするという、実際にあった衝撃的な事件をモチーフしてに描かれた作品。15年の構想期間を経て映像化したのは、『万引き家族』で第71回カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞した是枝裕和監督。当時、演技経験のなかった14歳の柳楽優弥を主役に抜てきし、柳楽は日本人初、史上最年少となるカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞。その他、女優初挑戦となったYOUをはじめ、遠藤憲一や寺島進など、個性あふれる俳優陣が脇を固める。

■Story

都内の2DKのアパートで暮らす、父親が違う4人の兄妹とその母親。父が海外赴任中で母と息子の2人暮らしだと偽って暮らすため、12歳の長男・明(柳楽優弥)をはじめとした子供たちは、学校に通ったこともなく、3人の妹弟の存在は大家にも知らされていなかった。ある日、新たな恋人ができた母親は、わずかな現金と短いメモを残し、兄に妹弟の世話を託して家を出てしまう。この日から、誰にも知られることのない4人の子供たちだけの“漂流生活”が始まった―。

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