ベルヴェデーレ宮殿(オーストリア〜ウィーン)
オーストリアが誇るバロック美術の殿堂

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オーストリアを代表する画家グスタフ・クリムトの絵画「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」(黄金のアデーレ)の所有者としてオーストリア政府に絵の返還を迫った女性の実話を基
に、名画がたどった数奇な運命と、訴えを起こした女性の半生を描いた『黄金のアデーレ 名画の帰還』。オスカー女優ヘレン・ミレン演じる主人公のマリアと、ライアン・レイノルズ演じる若手弁護士ランディ。年の離れた2人組のスリリングな法廷劇と、マリアの家族の物語という2つの物語を緻密に組み合わせながら、戦争、国、人間の尊厳、自身のルーツといったテーマを訴え掛けます。
本作の争点となる絵画が展示されていたベルヴェデーレ宮殿は、18世紀初頭、オスマン・トルコ軍を撃破したプリンツ・オイゲン公の夏の離宮として建てられました。庭園を挟み上宮、下宮から成るこの宮殿は、バロック建築の巨匠ヨハン・ルーカス・フォン・ヒルデブラントが設計を手掛け、世界遺産のシェーンブルン宮殿と並ぶウィーン屈指のバロック建築物といわれています。映画に登場したクリムトの絵が展示されているのは、かつて迎賓館として使われた上宮で、最も有名な「接吻」をはじめとした20点以上に及ぶ世界最大のクリムト・コレクションの他、エゴン・シーレやオスカー・ココシュカなど19〜20世紀のオーストリア絵画を中心に構成されています。絵画はもちろん、曲線を生かした構造や、きらびやかな装飾などバロック建築ならではの館内も見応えたっぷり。特に「大理石の間」の天井に描かれた、イタリアの画家兼彫刻家カルロ・カルロネによるフレスコ画の立体感には目を奪われます。
イタリア語で「美しい眺め」という意味を持つベルヴェデーレ。ウィーンを一望できる景色の他にも、バロック造園技術の最高峰ともいわれる庭園や、オイゲン公のぜいたくな嗜好がうかがわれる、かつての居城であった下宮など、オーストリアが誇るバロック建築の美しさをご堪能ください。
クリムトが描いた、一枚の肖像画。
幸せな記憶を封印したウィーンで、私は<家族>を取り戻す―
“オーストリアのモナリザ”とたたえられ、国の美術館に飾られてきたクリムトの名画<黄金のアデーレ>をめぐり実際に起こった裁判をもとに、名画に秘められた数奇な物語を描く。実在の女性マリアを演じるのは、『クイーン』でアカデミー賞主演女優賞を受賞した名優ヘレン・ミレン。監督は『マリリン 7日間の恋』のサイモン・カーティスが務め、二つの国と時代をドラマティックに行き来し、判決の興奮とその予想外の余韻を描き切る。
■Story20世紀が終わる頃、ある裁判のニュースが世界を仰天させた。アメリカに暮らす82歳のマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)が、オーストリア政府を訴えたのだ。それは“オーストリアのモナリザ”と称えられるクリムトの名画<黄金のアデーレ>を、「私に返してほしい」という驚きの要求だった。伯母・アデーレの肖像画は、第二次世界大戦中、ナチスに略奪されたもので、正当な持ち主である自分の元に返して欲しいというのが、彼女の主張だった。大切なものすべてを奪われ、祖国を捨てたマリアが、クリムトの名画よりも本当に取り戻したかったものとは─。