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アーキテクト・イン・シネマ 〜映画に観る建築・住まい・家族〜

ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション
  • ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション
  • 『ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売元:(株)KADOKAWA/(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
  • ■価格:Blu-ray ¥1,800+税
  • 監督:フランシス・ローレンス
  • 出演:ジェニファー・ローレンス ジョシュ・ハッチャーソン
    リアム・ヘムズワース ウディ・ハレルソン
    ジュリアン・ムーア フィリップ・シーモア・ホフマン 他
 

(C) 2016 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

アブラクサス館(フランス〜パリ郊外)

古典的×近未来的。見るものを魅了する集合住宅


ベルヴェデーレ宮殿(オーストリア〜ウィーン)

(C)shutterstock

フランス・パリから約20キロほど東に位置するニュータウン、マルヌ・ラ・ヴァレ。ここにバルセロナ出身の建築家リカルド・ボフィルが手掛けた一風変わった建物があります。半円形の中庭広場をぐるりと囲むような高層の建物は、どこか古代の神殿のようであり、闘技場のようでもあり、同時に近未来都市の建物をも思わせる、不思議な魅力があります。ジェニファー・ローレンス主演のシリーズ作品『ハンガーゲーム』の最終章では、ここを舞台にカットニス率いる反乱軍が、敵対する政府軍と激突。カットニスたちはゲームメイカーが仕掛けたわなにより窮地に立たされます。

1960年代にパリ周辺の発展を目指して造られた、5つのニュータウンのうちの1つであるマルヌ・ラ・ヴァレ。その象徴となるべく、1983年に建てられたこの「アブラクサス」はおよそ550世帯が入る低所得者用の公共集合住宅で、中庭を中心に半円形の「劇場」、コの字型平面の「宮殿」、中央の「アーチ」と呼ばれる3つの建物で構成されています。ポスト・モダンを代表する建築家リカルド・ボフィルは、日本でも「東京銀座資生堂ビル」、「ラゾーナ川崎プラザ」などを手掛けていますが、彼が得意とするのはコンクリートやガラス、スチールなど現代的な材料と、古典的な建築スタイルを巧みに融合させること。このアブラクサスでも、コンクリートパネルとガラスを組み合わせつつ、バロック様式を用いた高いデザイン性で、古典的かつ近未来的な外観を作り上げています。

また、同じ市内にはマノロ・ニュネズ・ヤノヴスキー設計の公共集合住宅「ピカソ・アリーナ」もあります。大きな円形を乗せたような建物が向かい合わせになったデザインで、こちらも見るものを魅了します。パリを訪れた際は、ぜひ足を延ばして2つの巨大かつオリジナリティー溢れる建物を体感してください。

『ハンガー・ゲーム』、ここに完結!

■Introduction

スーザン・コリンズのベストセラー小説を映画化した、ジェニファー・ローレンス主演の『ハンガー・ゲーム』シリーズ完結編。監督はシリーズ2作目からメガホンを取るフランシス・ローレンス。共演にはシリーズおなじみのジョシュ・ハッチャーソン、リアム・ヘムズワース、ドナルド・サザーランドらを迎える。また、2014年2月に急逝した名優フィリップ・シーモア・ホフマンの最後の出演作となった。

■Story

カットニス(ジェニファー・ローレンス)率いる第13地区の反乱軍は、ついにスノー大統領が支配する独裁国家との最終戦争に突入した。ゲイル(リアム・ヘムズワース)、フィニック(サム・クラフリン)、そしてピータ(ジョシュ・ハッチャ―ソン)を従えたカットニスは、スノー大統領暗殺作戦を決行。しかし、カットニス抹殺の念にとりつかれたスノーにはすべてお見通しだった。反乱軍は、死のトラップ、無数の敵に直面。そして、これまでのどのゲームよりも困難な状況に陥る。その先には、予想だにしない衝撃的なラストが待ち受けていた。

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ありがとう、トニ・エルドマン
  • ありがとう、トニ・エルドマン
  • 『ありがとう、トニ・エルドマン』
  • ■発売日:Blu-ray&DVD発売中
  • ■発売・販売元:ハピネット
  • ■価格:DVD ¥3,900+税 Blu-ray ¥4,800+税
  • 監督:マーレン・アデ
  • 出演:ペーター・ジモニシェック ザンドラ・ヒュラー 他
 

(C) Komplizen Film, coop99, Missing Link Films 2016

かみ合わない父娘の奇妙なおかしさ

第89回アカデミー賞外国語映画賞にノミネート、第69回カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞するなど世界の賞レースを席巻した本作は、父と娘の交流を描いたドイツ発の物語です。交流といっても、映画全編にわたって2人の間にはなんともいえぬ居心地の悪さが漂います。それはひとえに、父ヴィンフリートが変わり者だから。私たちは娘のイネス同様、彼の行動にきまりの悪さを感じますが…。

ルーマニアのコンサルティング会社でバリバリ働くイネスの元に、ある日ドイツから父が訪ねてきます。疎遠だった彼の突然の登場に、イネスは戸惑いながらも何とか数日を過ごすのですが、別れたのもつかの間、父はドイツに帰るどころか、別人に成り済まし彼女の行く先々に現れるのです。大事なプレゼンを控え、気を張っているイネスの前に現われた父が、かつらをかぶり、おもちゃの出っ歯を着け「どうも、ドイツ大使のトニ・エルドマンです」と、シレっとうそをつくのだから、たまったものではありません。このお父さん、悪ふざけが大好きなのですが、残念ながら見事にスベりまくりで周りを楽しませるどころか凍り付かせるばかり。だから…なのか、娘イネスは終始、しかめっ面です。

構いすぎる父 VS うっとうしがる娘というのは、おそらくどの国でも見られる関係性ですが、人との交流や日常の中のユーモアなど、お金には代えられないものに重きを置く父と、仕事一筋で合理性を重視する娘という正反対の2人の関係性は、現代ヨーロッパの情勢と重ね合わせることができます。資源に恵まれながらも貧しい国のルーマニアと、それを搾取しようとする先進国。そんな、世相と親子関係とを対比させる演出が実に巧みです。

愛は不毛じゃない。 ■Introduction

ドイツで大ヒットを記録し、カンヌ映画祭の国際批評家連盟賞を受賞したほか、ヨーロッパ映画賞で5冠に輝き、アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされたヒューマンドラマ。監督・脚本は『恋愛社会学のススメ』のマーレン・アデ。正反対の性格の父娘が織り成す交流をユーモラスに描く。主役の、悪ふざけが大好きな父親ヴィンフリートを演じるのはペーター・ジェモニシック。娘イネスをザンドラ・ヒュラーが演じる。

■Story

悪ふざけが大好きな父ヴィンフリート(ペーター・ジモニシェック)と、コンサルタント会社で働く娘イネス(ザンドラ・ヒュラー)。正反対な性格の2人の関係はあまりうまくいっていない。たまに会っても、仕事の電話ばかりしている娘を心配したヴィンフリートは、愛犬の死をきっかけに、彼女が働くブカレストへ。父の突然の訪問に驚くイネス。何とか数日間を一緒に過ごし、父はドイツに帰っていった。しかし、ホッとしたのもつかの間、彼女の元に<トニ・エルドマン>と名乗り別人になった父が現れる。職場、レストラン、パーティー会場─。神出鬼没のトニ・エルドマンの行動にイネスのイライラは募るばかりだが…。

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