アレクサンドラ・アンド・アインスワース(イギリス〜ロンドン)
住人たちに愛されるブルータリズム建築の名作

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表の顔は高級テイラーの仕立屋、しかしその実態は世界最強スパイ機関のエージェント。コリン・ファース演じるクールな英国紳士が、人類抹殺をたくらむ敵に挑む『キングスマン』は、往年のスパイ映画へのオマージュを散りばめつつ、マシュー・ヴォーン監督らしいユニークな演出で楽しませてくれるスタイリッシュな映画です。
ハリー(コリン・ファース)が見いだしたスパイ候補の新人エグジー(タロン・エガートン)の住まいとして登場するのが、ロンドン北西部、かの有名なアビー・ロードの近くにある集合住宅、アレクサンドラ・アンド・アインスワース。1968年、カムデン・ロンドン自治区の建築課に所属していた二ーヴ・ブラウンにより、カウンシルフラット(低所得者向けの公営住宅)として設計されましたが、国内の経済停滞の影響で大幅に工事が遅れ、10年後の1978年にようやく完成となりました。およそ520戸の住居が横にずらりと並んだ姿は実に壮観。劇中では、階段状になったフラットをエグジーが華麗にジャンプしながら駆け降りています。ブルータリズム建築の特徴であるコンクリート造りの外観は一見、無機質に見えますが、各戸の大きなテラスに飾られた住人たちの観葉植物が温かな雰囲気を醸し出す役目も。また、2つの棟のテラスと玄関が道路を挟んで向かい合わせになるよう配置することで、住人たちが自然とコミュニケーションを図れるように工夫されています。1994年には住人たちの働き掛けにより、リスティッド・ビルディング(保護対象として認定された建築物)に指定。さらに2018年には設計者のニーヴ・ブラウンへ、建築界で最も栄誉のある賞の一つ、王立英国建築家協会から優れた建築家へ与えられる「ロイヤル・ゴールド・メダル」が授与されました。40年あまりを経た今、改めてこの住宅の価値が見直されています。
表の顔は高級テーラー。
しかしその実体は世界最強のスパイ機関!
『英国王のスピーチ』でアカデミー賞を受賞したコリン・ファースが主演を務め、『キック・アス』のマシュー・ヴォーン監督がメガホンを取った、スパイアクション。普段は高級テーラー「キングスマン」の仕立職人でありながら、実は国際諜報(ちょうほう)機関のスパイである主人公の男をコリン・ファースが演じ、若きスパイ候補生にタロン・エガートンが扮(ふん)する。その他、マイケル・ケイン、マーク・ストロング、サミュエル・L・ジャクソンら実力派俳優陣が共演に名を連ねる。
■Story17年前に父を亡くし、ロンドンで母と暮らしていたエグジー(タロン・エガートン)は無職のまま荒れた生活を送っていた。ある日エグジーの前に、ブリティッシュ・スーツに身を包んだハリーと名乗る紳士(コリン・ファース)が現れる。ハリーはサヴィル・ロウにある高級テーラーの仕立職人だが、実はどの国にも属さず秘密裏に活動する国際諜報(ちょうほう)機関「キングスマン」のエリートスパイだった。エグジーの優れた身体能力に目を付けたハリーは、彼を「キングスマン」の新人候補としてスカウトする。エグジーがライバルたちと新スパイの座を懸けた競争を繰り広げる一方、ハリーは世界規模の人類抹殺計画を企てるIT富豪・ヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)を追っていた。