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アーキテクト・イン・シネマ 〜映画に観る建築・住まい・家族〜

キングスマン
  • キングスマン
  • 『キングスマン』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売・販売元:(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
  • ■価格:Blu-ray ¥1,800+税
  • 監督:マシュー・ヴォーン
  • 出演:コリン・ファース マイケル・ケイン タロン・エガートン
    サミュエル・L・ジャクソン マーク・ストロング
    ソフィア・ブテラ ソフィー・クックソン マーク・ハミル 他
 

(C) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC. All rights reserved.

アレクサンドラ・アンド・アインスワース(イギリス〜ロンドン)

住人たちに愛されるブルータリズム建築の名作


アレクサンドラ・アンド・アインスワース(イギリス〜ロンドン)

(C)shutterstock

表の顔は高級テイラーの仕立屋、しかしその実態は世界最強スパイ機関のエージェント。コリン・ファース演じるクールな英国紳士が、人類抹殺をたくらむ敵に挑む『キングスマン』は、往年のスパイ映画へのオマージュを散りばめつつ、マシュー・ヴォーン監督らしいユニークな演出で楽しませてくれるスタイリッシュな映画です。

ハリー(コリン・ファース)が見いだしたスパイ候補の新人エグジー(タロン・エガートン)の住まいとして登場するのが、ロンドン北西部、かの有名なアビー・ロードの近くにある集合住宅、アレクサンドラ・アンド・アインスワース。1968年、カムデン・ロンドン自治区の建築課に所属していた二ーヴ・ブラウンにより、カウンシルフラット(低所得者向けの公営住宅)として設計されましたが、国内の経済停滞の影響で大幅に工事が遅れ、10年後の1978年にようやく完成となりました。およそ520戸の住居が横にずらりと並んだ姿は実に壮観。劇中では、階段状になったフラットをエグジーが華麗にジャンプしながら駆け降りています。ブルータリズム建築の特徴であるコンクリート造りの外観は一見、無機質に見えますが、各戸の大きなテラスに飾られた住人たちの観葉植物が温かな雰囲気を醸し出す役目も。また、2つの棟のテラスと玄関が道路を挟んで向かい合わせになるよう配置することで、住人たちが自然とコミュニケーションを図れるように工夫されています。1994年には住人たちの働き掛けにより、リスティッド・ビルディング(保護対象として認定された建築物)に指定。さらに2018年には設計者のニーヴ・ブラウンへ、建築界で最も栄誉のある賞の一つ、王立英国建築家協会から優れた建築家へ与えられる「ロイヤル・ゴールド・メダル」が授与されました。40年あまりを経た今、改めてこの住宅の価値が見直されています。

表の顔は高級テーラー。
しかしその実体は世界最強のスパイ機関!

■Introduction

『英国王のスピーチ』でアカデミー賞を受賞したコリン・ファースが主演を務め、『キック・アス』のマシュー・ヴォーン監督がメガホンを取った、スパイアクション。普段は高級テーラー「キングスマン」の仕立職人でありながら、実は国際諜報(ちょうほう)機関のスパイである主人公の男をコリン・ファースが演じ、若きスパイ候補生にタロン・エガートンが扮(ふん)する。その他、マイケル・ケイン、マーク・ストロング、サミュエル・L・ジャクソンら実力派俳優陣が共演に名を連ねる。

■Story

17年前に父を亡くし、ロンドンで母と暮らしていたエグジー(タロン・エガートン)は無職のまま荒れた生活を送っていた。ある日エグジーの前に、ブリティッシュ・スーツに身を包んだハリーと名乗る紳士(コリン・ファース)が現れる。ハリーはサヴィル・ロウにある高級テーラーの仕立職人だが、実はどの国にも属さず秘密裏に活動する国際諜報(ちょうほう)機関「キングスマン」のエリートスパイだった。エグジーの優れた身体能力に目を付けたハリーは、彼を「キングスマン」の新人候補としてスカウトする。エグジーがライバルたちと新スパイの座を懸けた競争を繰り広げる一方、ハリーは世界規模の人類抹殺計画を企てるIT富豪・ヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)を追っていた。

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こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話
  • こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話
  • 『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売・販売元:松竹
  • ■価格:Blu-ray ¥4,700+税
  • 監督:前田 哲
  • 出演:大泉 洋 高畑充希 三浦春馬
    萩原聖人 渡辺真起子 宇野祥平 韓 英恵
    竜 雷太 綾戸智恵 佐藤浩市 原田美枝子 他
 

(C) 2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

体は不自由でも心は自由。“自分らしさ”を考える

難病である筋ジストロフィーを患う実在した人物・鹿野靖明さんの人生を、大泉洋主演で笑いあり涙ありに描いた本作。11歳で病気を発症した鹿野(大泉洋)は、首と手以外は動かすことができず、24時間、365日、誰かの助けがないと生きていけない。それにもかかわらず彼は病院を飛び出し、ベテランから学生まで大勢のボランティア、通称“鹿野ボラ”を自ら集め、一風変わった自立生活を送っています。

劇中に登場する鹿野の家は、モデルとなった鹿野さん本人が実際に暮らしていたケア付き住宅。北海道・札幌にある山の手団地の1号棟で、全8戸がバリアフリーとなっており、引き戸の玄関や低めの洗面台、広い洗面所など車椅子の生活でも負担がないように造られています。一般的に介護される人は、介護に対する遠慮や恥ずかしさ、疑心暗鬼といったマイナスの感情にとらわれがちですが、彼は正反対。わがままで、ずうずうしくて、おしゃべりで…。時に無謀とも思えるほど自由な言動は、いっそすがすがしく、鹿野ボラ同様、次第に愛着すら覚えてくるはず。

「障害者の世話は家族がするのが常識っていう、この国の常識に俺もささやかながら抵抗しているわけよ」、そう言いながら障害者という枠にとらわれず、どこまでも自由な鹿野の“命懸けのわがまま”は、周囲の人たちの人生をも輝かせていきます。人に素直に助けを求めること、迷惑をかけてもいいと思うこと。彼の真っすぐな生き方は、見る人の背中を押してくれるでしょう。

あなたと過ごした日々は宝物でした― ■Introduction

原作は、第35回大宅壮一ノンフィクション賞と第25回講談社ノンフィクション賞をダブル受賞した渡辺一史の「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」。『ブタがいた教室』の前田哲監督が、車椅子人生を駆け抜けた男の力強い人生を描く。実在した人物・鹿野靖明を演じるのは同じ北海道出身の俳優・大泉洋。10キロの減量で容姿面を似せるだけでなく、人間的な魅力をユーモアたっぷりに体現する。さらに、鹿野に反発しながらも少しずつ心を開いていく新人ボランティア・安堂美咲役を高畑充希が、美咲の恋人で医大生の田中久役を三浦春馬が演じる。

■Story

鹿野靖明(大泉洋)は、幼少の頃から難病“筋ジストロフィー”を患い、34歳の今では首と手しか動かせない状態になっていた。介助なしでは生きられないにもかかわらず、病院を飛び出し、自ら集めた大勢のボランティアたちと札幌で自立生活を送る鹿野。医大生ボランティアの田中(三浦春馬)は、夜中に突然「バナナ食べたい」と言い出すわがままな彼に、日々振り回されていた。さらに、たまたま鹿野宅を訪れた恋人の美咲(高畑充希)に鹿野が一目ぼれしてしまい、代わりに愛の告白まで頼まれる始末。最初は面食らう美咲だが、鹿野やボランティアたちと共に時間を過ごすうちに、自分に素直になることや夢を追うことの大切さを知っていく。そんなある日、鹿野が突然倒れ、命の危機を迎えてしまう…。

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