パルテノン神殿(ギリシャ〜アテネ)
約2500年前につくられた「美」の傑作

(C)photolibrary
古代ギリシャ文明の中心地として栄えたギリシャの首都アテネ。その中心に位置するのが、オリンポスの神々を祭った「アテネのアクロポリス」です。「アクロポリス=高い丘の都市」という名が示す通り、ここは海抜約150メートルの岩山の上に築かれた神殿郡で、1987年には文化遺産として世界遺産に登録されました。数ある神殿の中でも、アテネの守護女神アテナを祭る戦勝記念堂として紀元前447年から約15年かけて建設されたパルテノン神殿は、ドーリア式建築の傑作として今もなお多くの人を魅了しています。
「美」を最大限に追及した建築といわれており、『太陽がいっぱい』の原作者として知られるパトリシア・ハイスミスの小説「殺意の迷宮」を映画化した『ギリシャについた嘘』では、観光でギリシャを訪れたアメリカ人夫妻のチェスターとコレットが、この神殿の景観について論じる場面も出てきます。大理石でできた外周の円柱は、東西に8本、南北に17本で、それぞれにはエンタシスと呼ばれる膨らみが付けられています。さらに柱全体は上部に向かうにつれて神殿内部へ少し傾いており、床も中央に向かってわずかに盛り上がるなど、シンプルな構造ながらさまざまな技巧が見られます。これは、柱頭から屋根の重力を受け止めるためや、神殿内の水はけをよくするためなどの実用的な効果だけでなく、直線で造るよりもなめらかで美しく真っすぐに見えるからという、視覚的な効果を狙った工夫です。また、人間が美しいと感じるとされる黄金比(1:1.618)を用いて造られたという説も。劇中、チェスターが「古代ギリシャ人は錯覚の達人」と語っていたように、人間の目の錯覚を利用して美しさを追求した古代ギリシャ人。約2500年前の彼らの素晴らしい知恵と工夫に驚かされます。
罠か、それとも愛か―。
■Introduction『太陽がいっぱい』の原作者パトリシア・ハイスミスによるサスペンス小説「殺意の迷宮」を基に、『ドライブ』の脚本家ホセイン・アミニが脚本、初監督を務めた作品。ギリシャを訪れる米国人紳士に『グリーン・ブック』のヴィゴ・モーテンセン、その妻に『マリー・アントワネット』のキルスティン・ダンスト、紳士のガイド役の青年に『スター・ウォーズ』シリーズのオスカー・アイザックなど豪華俳優陣が共演。
■Story1962年、ギリシャのアテネでツアーガイドをしている米国人の青年ライダル(オスカー・アイザック)は、パルテノン神殿で優雅な米国人紳士・チェスター(ヴィゴ・モーテンセン)と、その妻コレット(キルスティン・ダンスト)に巡り合う。リッチで洗練された夫妻に魅せられたライダルは、彼らのガイドを務めることに。ところがチェスターは大勢の投資家を欺き、大金を奪った詐欺師だった。その夜、チェスターが宿泊する部屋に、詐欺の被害者が雇った私立探偵が現われ、チェスターはその男を殺害してしまう。そして偶然ライダルがその後始末を手助けしたことから3人は共犯者となる。逃亡を図る3人だが、道中でライダルはコレットと親密な関係となり、嫉妬心に駆られたチェスターは平常心を失っていく。