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Monthly FACE 〜極める人々〜

白石麻衣さん(ドローンレーサー)

Profile

1981年生まれ、熊本県出身。学校を卒業したのち、ゲームやアニメ業界で、3Dのグラフィックデザイナーとして働く。趣味として始めたドローンに夢中になり、2017年にはマイクロドローンコミュニティー「Wednesday Tokyo Whoopers(WTW)」を自ら発足。3Dのグラフィックデザイナーの仕事を続けながらドローンレーサーとしても活動を始め、2018年にはドローン選手権“FAI 1st World Drone Racing Championships in Shenzhen”で日本代表チーム初の女性パイロットに選出される。

初めて手にしたときは感動と驚きでいっぱいだった

ここ数年、映像や災害、農業など、幅広い分野での活用方法に注目が集まっているドローンですが、アメリカやヨーロッパではドローンレースが高い人気を誇っています。日本でも徐々に競技人口を増やしているところですが、数少ない女性ドローンレーサーとして活躍しているのが白石麻衣さん。ドローンの魅力や育児との両立について語っていただきました。

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「以前から興味はありましたが、手にしたのは3年前。世界一周の新婚旅行をドローンで撮影した『ハネムーントラベラー』という方の映像が強烈だったことと、テレビ業界で働いている友達が買ったドローンを実際に見せてもらったのがきっかけでした」

その後、当時まだ交際中だった現在の旦那さんから、おもちゃのドローンをプレゼントされると、思いはさらに強くなり、本格的な機種を購入することに。

「ちょうど旦那さんと旅行する予定があったので、思い切って買いました。初めて使ったときは感動しましたが、何よりも驚いたのは、操作が簡単なこと。ヘリに乗らないと撮れないような映像も、すぐに撮ることができたんです」

もともとゲームやアニメの分野で3Dのグラフィックデザイナーとしてキャリアを積んでいた白石さん。趣味の一環として始めたはずが、どんどんとのめり込んでいき、インターネットやSNSを通じて情報を集めていく中で、ドローンレースの存在を知ることとなります。

「時速150キロを超えるスピードが出るレーシング用が撮影用と大きく違うのは、動きを機敏にするためにセンサーやGPSなどが搭載されていないこと。操作も組み立てもすべて独学でしたが、技術が問われるので、最初はどうしていいのか分かりませんでした」

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それでも、一度やると決めたらすぐ行動に移すのが白石さんの強み。インターネットを駆使して自分で調べたり、ドローンレーサーたちに直接質問して教えてもらったりしていたという。そんな中、2017年11月にマイクロドローンコミュニティー「Wednesday Tokyo Whoopers(WTW)」を設立し、都内でマイクロドローンイベントを定期的に開催することとなります。

「実はちょうどその時期は、妊娠初期でつわりがひどかったので、ドローンの練習ができなくて悩んでいたんです。そんなときに、知り合いのドローンレーサーの方から、『自分でコミュニティーを作ってみたら?』と言われて、すぐに立ち上げました。いろんな方が集まってくださるようになり、すごく勉強になりましたね」

誰もが同じフィールドで楽しめるのがドローンのよさ

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着実に実力を身に付けた白石さんは、ついに2018年11月にはドローンの世界選手権で日本代表チーム初の女性パイロットに選出。韓国と中国といった海外のレースに参加した際には、日本と海外で違いを感じたといいます。

「中国での世界選手権は、40カ国から選手が集まり、5日間スタジアムを貸し切りにするほどの大きな規模でした。私はインターナショナルのチームにも誘っていただいて今年から参加していますが、驚かされたのはチームメイトたちの積極性。彼らは自分たちでスポンサーを見つけようと、会場にいるメーカーに片っ端から自分たちを売り込んでいたんです」

そういった現実を目の当たりにして、白石さんの中に新たな目標が芽生えたと教えてくれました。

「日本の選手たちは技術があっても、自分を表現することが苦手で基本的に受け身。でも、トップ選手こそ、日本の代表としてもっと世界に出ていくべきだと思っています。私は英語が話せるので、彼らを助けられるような存在になれたらいいなと。世界との差を埋めて日本のドローン業界が話題になれば、子供や女性などの幅広い人たちも興味を持ってくれるようになりますよね」

いまはまだ男性が多く、女性のドローンレーサーは白石さんを入れても5名前後だとか。それでも、ドローンの魅力は、誰でも楽しめることだと訴えます。

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「ドローンは、年齢も性別も関係なく、みんなが同じフィールドで楽しめる競技。レースでは私の両脇に70歳のおじいちゃんと9歳の子供が座っていることもあるくらいですよ(笑)。普段だったら出会えないような人と出会えることも、私がドローンを始めてよかったなと思う瞬間です。これまでたくさんの方に支えてもらったので、今度は私が恩返ししたいと思っています」

そんな風に、好きなことに一生懸命の白石さんですが、原動力は応援してくれる家族の存在。仕事と育児の両立を助けてもらっていると話します。

「夫も両親も、最初からドローンをすることには賛成してくれましたし、子供の面倒なども手伝ってくれて本当にありがたいです。なので、ギブアンドテイクのバランスは心掛けています。私のように、女性や主婦の方でも楽しめるというのは、どんどんアピールしていきたいです」

日本ではいろんな規制が厳しいことなど、いまだにドローンにネガティブな印象を持っている人もいるそうですが、メディアに出る機会が多い白石さんだからこそ、ドローンの魅力や楽しさを伝えていきたいといいます。

「一番大きい夢は、ドローンの人口を増やすこと。ドローンレースでは、今まで見たことのない衝撃と新しい体験を味わってほしいですね。あと、危険なものではないので、親子で一緒にドローンを飛ばして楽しむだけでもいいと思います。私個人の夢としては、人を感動させる映像を撮りたいですし、レースで1位も獲りたいです。いずれにしても、ドローン業界をもっと盛り上げていけるように、がんばります!」

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