クラブ・エス ウェブマガジン

アーキテクト・イン・シネマ 〜映画に観る建築・住まい・家族〜

ホテル・ムンバイ
  • ホテル・ムンバイ
  • 『ホテル・ムンバイ』
  • ■発売日:DVD & Blu-ray発売中
  • ■発売元:ギャガ
  • ■販売元:ハピネット・メディアマーケティング
  • ■価格:DVD ¥3,900+税 Blu-ray ¥4,800+税
  • 監督:アンソニー・マラス
  • 出演:デヴ・パテル アーミー・ハマー
    ナザニン・ボニアディ ティルダ・コブハム=ハーヴェイ
    アヌパム・カー ジェイソン・アイザックス 他
 

(C)2018 HOTEL MUMBAI PTY LTD, SCREEN AUSTRALIA, SOUTH AUSTRALIAN FILM CORPORATION,ADELAIDE FILM FESTIVAL AND SCREENWEST INC

チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅(インド〜ムンバイ)

鉄道大国インドを支える世界遺産の駅


チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅(インド〜ムンバイ)

(C)shutterstock

2008年11月26日、インド最大の都市ムンバイでイスラム武装勢力による10件の同時多発テロが発生。11月29日、陸軍部隊が制圧し終結するまでに少なくとも172人が死亡、負傷者は239人に上った―。このむごたらしい事件を映画化した『ホテル・ムンバイ』は、標的となった5つ星ホテル、タージマハル・ホテルで、宿泊客を脱出させようとするホテルマンたちの命懸けの攻防を、臨場感ある映像で描いた作品です。

テロの最初の襲撃場所となったのが、チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅(CST駅)。鉄道大国といわれるインドの中でも最大の駅として人々の生活や物流を支えるこの駅は、イギリスの建築家フレデリック・ウィリアム・スティーヴンスが設計し、10年の歳月をかけ、1888年に完成しました。英国の植民地だった開業当初は、ヴィクトリア女王を冠したヴィクトリア・ターミナス駅という名前でしたが、1996年にインドの英雄だった王の名を取り現在の名前へと改名。宮殿や教会のような壮麗な外観は、ヴィクトリア朝のゴシック・リヴァイヴァル建築とインドの伝統的建築という2つの建築様式が融合したもので、2004年にはムンバイを代表する歴史的な建物として、世界文化遺産に登録されています。

インド鉄道創業時に第1号の列車が出発した駅であり、現在も1日におよそ300万人以上が利用するCST駅は、古い歴史がありながらもまだまだ現役であるという珍しい駅。インドの電車といえば、山手線の通勤ラッシュを上回る混雑で知られていますが、基本的に通勤に使われる近郊電車にはドアがありません。転落事故も多いので、乗車するときはくれぐれもご注意を。

彼らは<信念>だけで、銃に立ち向かった。

■Introduction

2008年、実際に起きたインド・ムンバイの同時多発テロでテロリストに占拠されたタージマハル・ホテルを舞台に、宿泊客を救おうとしたホテルマンたちの実話を映画化。主演は『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』のデヴ・パテル。その他、『君の名前で僕を呼んで』のアーミー・ハマーや、『ハリー・ポッター』シリーズのジェイソン・アイザックスなど、国際色豊かな俳優陣が脇を固める。監督はオーストラリア出身の気鋭アンソニー・マラス。

■Story

インドの巨大都市ムンバイに、出産を控えた妻、幼い娘と共に暮らす青年アルジュン(デヴ・パテル)は、街の象徴でもある五つ星ホテルの従業員であることに誇りを感じていた。ところが、いつも通りの優雅な光景だったホテルが突然、武装したテロリスト集団に占拠され、一瞬にして“楽園”が崩壊する。500人以上の宿泊客と従業員を無慈悲な銃弾が襲う中、特殊部隊が到着するまでには数日かかるという絶望的な知らせが…。アルジュンら従業員はホテルに残り、宿泊客を救う道を選ぶ。一方、赤ん坊を部屋に残してきてしまったアメリカ人建築家デヴィッド(アーミー・ハマー)は、ある命懸けの決断をする。

ページトップ

グリーンブック
  • グリーンブック
  • 『グリーンブック』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売・販売元:ギャガ
  • ■価格:DVD¥3,800+税 Blu-ray ¥4,800+税
  • 監督:ピーター・ファレリー
  • 出演:ヴィゴ・モーテンセン マハーシャラ・アリ
    リンダ・カーデリー二 他
 

(C)2019 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. ALL RIGHTS

人種や立場、環境の異なる2人の男が“壁”を越えるまで

2020年5月25日に起こった白人警察官による黒人男性殺害事件を受け、「Black Lives Matter」を合言葉にした黒人への人種差別に対する抗議運動が全米のみならず全世界へと広がっています。アメリカに根深く残る黒人差別を扱った映画は、彼らが置かれた不当な状況について考える足掛かりとなりますが、2019年のアカデミー賞作品賞に輝いた『グリーンブック』もその一つ。人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人の天才ピアニストと彼の運転手を引き受けたイタリア系アメリカ人の友情が描かれます。

1876年に制定されたジム・クロウ法により黒人は住宅や学校、病院、レストラン、トイレなどの利用においてさまざまな制約がかけられており、黒人が利用可能な施設を記した「グリーンブック」という名の旅行ガイドブックが存在していました。劇中、ホワイトハウスにも招かれたことのある黒人の天才ピアニスト、ドクター・シャーリーと、彼の運転手兼、用心棒として雇われたイタリア系アメリカ人のトニーは、グリーンブックを頼りに2カ月におよぶ南部へのツアーに向かいます。上品で生真面目なシャーリーと粗野で人間味あふれるトニー。対照的な2人が旅を通して心の距離を詰める過程はロードムービーならではの魅力ですが、シャーリーに向けられる理不尽な差別が2人の道中に暗く影を落とします。なぜシャーリーは、差別がある南部へあえてツアーに出るのか。黒人を嫌悪していたトニーは彼への差別を目の当たりにし何を感じるのか。

時代を経てもいまだに黒人への暴力や差別はなくならず、やるせないニュースに心が痛みますが、本作でフォーカスされているのは白人vs黒人の人種差別問題ではなく、“人”と“人”が向き合うことで起こる化学反応。互いの偏見を少しずつ修正し、絆を深めていく2人の姿が現状を照らす一筋の希望となりますように…。なぜなら、この心温まる物語は“実話”がベースなのだから。

行こうぜ、相棒。
あんたにしかできないことがある。
■Introduction

第91回アカデミー作品賞を受賞した、黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の友情物語。人種差別が色濃く残る南部でコンサートツアーを計画するピアニスト、ドクター・シャーリーを『ムーンライト』のマハーシャラ・アリが、用心棒として雇われた運転手のトニー・リップを『イースタン・プロミス』のヴィゴ・モーテンセンが演じる。実話を基に製作・脚本を手掛け、2人の友情を映画化したのは、トニーのモデルとなった実在の人物トニー・バレロンガの息子であるニック・バレロンガ。監督は『メリーに首ったけ』などコメディーに定評のあるファレリー兄弟の兄ピーター・ファレリーが務める。

■Story

1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、がさつで無学だが、腕っ節とハッタリで家族や周囲の人たちから頼りにされていた。ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)。カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーをもくろんでいた。2人は、<黒人用旅行ガイド=グリーンブック>を頼りに、出発する。

ページトップ