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アーキテクト・イン・シネマ 〜映画に観る建築・住まい・家族〜

インセプション
  • インセプション
  • 『インセプション』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売・販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
  • ■価格:DVD ¥3,740+税
  • 監督:クリストファー・ノーラン
  • 出演:レオナルド・ディカプリオ 渡辺 謙
    ジョセフ・ゴードン=レヴィット マリオン・コティヤー
    エレン・ペイジ 他
 

(C)2014 Warner Bros. Entertainment Inc.

UCSDガイゼル図書館(サンディエゴ〜アメリカ)

サンディエゴに浮かぶ“知”の宇宙船


UCSDガイゼル図書館(サンディエゴ〜アメリカ)

(C)shutterstock

『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督が、レオナルド・ディカプリオほか豪華キャストを迎え、オリジナル脚本で描いた『インセプション』は、他人の夢の中に侵入し、その人物のアイデアを盗む産業スパイたちの死闘を描いた作品。脳内での情報戦という斬新な設定と、それを形成する複雑なルールがスタイリッシュな映像で描かれ、ノーラン監督らしい唯一無二の世界観を作り上げています。夢の階層ごとに世界がガラリと変わるなか、第3階層の雪山の病院として登場したのがアメリカ・サンディエゴにある「UCSDガイゼル図書館」。図書館とは思えない近未来的な外観が、映画の雰囲気にとても合っています。

UCSDガイゼル図書館は、カリフォルニア大学サンディエゴ校内に10館ある図書館の一つで、「グリンチ」で知られる絵本作家ドクター・スース(セオドア・スース・ガイゼル)と彼の妻オードリーに敬意を表して建てられ、彼らの名前にちなんで命名されました。本の山を両手で持ち上げているような奇抜な形は、学生たちから「宇宙船(space ship)」と呼ばれ、大学のシンボルとして親しまれています。1970年、サンフランシスコのトランスアメリカ・ピラミッドを手掛けた建築家ウィリアム・ペレイラの設計による地下2階、地上6階の建物で、独特のフォルムは約700万冊ある蔵書を収蔵するのに最適な球体からヒントを得たもの。コンクリートを主体としたブルータリズム建築のなかでも、多面的に配置したガラス張りの部屋が建物全体に躍動感を生み出しています。夜になると暗闇に浮かび上がる姿は、なんとも幻想的。映画のように異世界に迷い込んだような不思議な気分を味わえることでしょう。

お前の頭へ侵入する。

■Introduction

『ダークナイト』などの鬼才クリストファー・ノーラン監督が、レオナルド・ディカプリオを主演に迎え、見る者を夢の中へといざなうSFアクション大作。人の夢の世界に入り込み、他人のアイデアを盗むという高度な技術を持つ男をディカプリオが演じ、自らの人生をやり直すため仲間と共に危険なミッションに臨む姿をスタイリッシュな映像で描く。その他、渡辺謙、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、マリオン・コティヤール、エレン・ペイジなど、国際色豊かな実力派俳優陣が脇を固める。

■Story

夢を見ている間に潜在意識から貴重な秘密を盗み出す、すご腕の産業スパイ、ドム・コブ(レオナルド・ディカプリオ)の元に、ある日“サイトー”と名乗る男(渡辺謙)から依頼が舞い込む。それは「インセプション」と呼ばれる、アイデアを相手の心に“植え付ける”もの。ほぼ不可能とされる危険な任務だが、国際指名手配犯のコブは失ったものを取り戻すために、相棒のアーサー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)と共にメンバーを探す。しかし、いかに綿密に計画し、さまざまな特殊能力があったとしても、相手に行動をすべて読まれていたら太刀打ちできない。そんな強敵が現れる予感を、コブだけが感じ取っていた―。

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リップヴァンウィンクルの花嫁
  • リップヴァンウィンクルの花嫁
  • 『リップヴァンウィンクルの花嫁』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売・販売元:ポニーキャニオン
  • ■価格:DVD ¥4,180+税
  • 監督・脚本:岩井俊二
  • 出演:黒木 華
    綾野 剛 Cocco 他
 

(C)RVWフィルムパートナーズ

虚構の城で過ごしたひとときの夢

ふとしたことから“普通の人生”を踏み外してしまった女性の心の成長を『Love Letter』『花とアリス』の岩井俊二監督がみずみずしい映像で描いたドラマ。黒木華演じるヒロインの七海は、自らを強く主張することなく、周りの期待に添うように生きている女性。どこか危なっかしい彼女は、SNSで知り合った人々の思惑に操られ、どんどん流されていきます。3時間という長尺の中で繰り広げられる物語はふわふわとした寓話(ぐうわ)のようですが、現代社会の闇が混ざりピリリと辛口。霧の中に佇む洋館は、そんな不思議な世界観を象徴するような建物です。

SNSで知り合った「なんでも屋」の男の紹介で、1カ月100万円という破格の値段で掃除、洗濯など家事全般を行うことになった七海。オーナーが海外生活のため空き家となっている壮麗な館は、ハロウィンパーティーのゴミで溢れたパーティールームとキッチン、2階の衣装部屋、クラゲやエイ、サソリなど毒を持つ生き物の水槽が並んだ部屋と、謎に満ちています。もう一人の住み込みのメイドとして現れた型破りで自由なメイド仲間との共同生活を楽しむ七海でしたが、その生活もまた、ある人物の思惑で仕組まれたもので…。

作品のタイトルに引用されている「リップヴァンウィンクル(リップ・ヴァン・ウィンクル)」とは、19世紀の作家ワシントン・アーヴィングが書いた寓話で、森の中で酒盛りをし、ぐっすりと寝てしまった男が目覚めると20年の時間が経過していたという「西洋版・浦島太郎」のような物語。SNSという虚構の世界で結婚相手を見つけ、住む場所を次々と変え、人生のかじ取りを他人に任せる七海が暮らしたお城のような洋館は、この物語でいう森の中。夢のようなひとときを過ごし、目を覚ました彼女がラストに見せるすがすがしい表情が心に残ります。

「この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」 ■Introduction

『Love Letter』『花とアリス』『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の岩井俊二監督が、『小さいおうち』の黒木華を主演に迎えたドラマ。SNSをきっかけに“普通”の生活が崩壊してしまった女性が、さまざまな人々との出会いを通して成長していく姿が描かれる。彼女の人生を狂わす「なんでも屋」の安室役を務めるのは、『日本で一番悪い奴ら』の綾野剛。また、シンガーソングライターのCoccoが自由奔放な女性・真白を好演する。

■Story

派遣教員の皆川七海(黒木華)はSNSで 知り合った鉄也と結婚するが、結婚式の代理出席を「なんでも屋」の安室(綾野剛)に依頼する。新婚早々、鉄也の浮気が発覚すると、義母から逆に浮気の罪をかぶせられ、七海は家を追い出されてしまう。苦境に立たされた七海に安室は月100万円という住み込みのメイドの仕事をあっせん。七海はそこで、里中真白(Cocco)というメイド仲間と出会う。真白の破天荒で自由な姿に好感を持つ七海。一方、真白は体調が優れず、日に日に痩せていくが仕事への情熱と浪費癖は衰えず、ある日真っ白なウエディングドレスを買いたいと言い出す。

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