首相官邸(東京〜日本)
“日本らしさ”にこだわった政治・権力の中枢機関

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菅首相から岸田首相へと変わり、改めて政権の動向が注目を浴びていますが、本作は内閣をサポートする内閣府の若手エリート官僚と女性記者が権力中枢の闇に迫ろうとする姿を描いた作品です。東京新聞の望月衣塑子記者の同名著書を原案に、森友・加計問題など実際の出来事を想起させる問題を織り込みながら、権力の在り方について切り込んでいます。
松坂桃李演じるエリート官僚・杉原が所属する内閣府は、内閣の重要政策に関係した事務のサポートをはじめ、多岐にわたる政策の企画立案や総合調整を行なう機関。その道路を挟んだ向かいに位置しているのが、内閣総理大臣および内閣官房長官が執務を行う首相官邸です。そこでは、日々、閣議をはじめ、国政上重要な会議が開かれています。首相官邸が現在の建物になったのは2002(平成14)年から。フランク・ロイド・ライト風の旧官邸にかわり、地上5階、地下1階建てのモダンな建物として生まれ変わりました。
建築のコンセプトは、日本らしさの追求。切り出したままの自然石と、強くしなやかに伸びた青い竹をシンボルに、木や石、和紙や土壁などがモダンに使用されています。「石」は、大地にしっかりと腰を据えた強さと安定感、「竹」は天に向かって伸びる未来への挑戦の象徴。そして、その考えを最も表している空間が、屋上まで吹き抜け構造になっている中庭です。竹林と花こう岩を組み合わせた日本庭園のようなこの空間は、「内」と「外」の有機的なつながりを意識した構成にもなっています。
この他、ぶら下がり会見などが行われる3階の正面玄関、組閣時に新閣僚が記念撮影を行う2階と3階をつなぐ階段、閣僚が一堂に会す4階の閣僚応接室などはニュースでもおなじみの場所ですが、首相官邸のホームページではあまり見る機会のない部屋も紹介されています。ニュースでよく見る場所だけではなく、内装を含めたデザインのこだわりもぜひチェックしてみてください。
内閣官房vs女性記者―
■Introduction東京新聞記者・望月衣塑子の同名ベストセラーを原案に、若き新聞記者とエリート官僚、相対する二人の葛藤をオリジナルストーリーで描く社会派サスペンス。『怪しい彼女』などで知られる韓国の演技派女優シム・ウンギョンと『孤狼の血』で第36回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した松坂桃李がダブル主演を務める。共演には、本田翼、岡山天音、西田尚美、高橋和也など実力派俳優が名を連ねる。監督を務めるのは、『青の帰り道』『デイアンドナイト』などで知られる藤井道人。
■Story東都新聞の記者・吉岡エリカ(シム・ウンギョン)は、日本人の父と韓国人の母の元、アメリカで育ち、強い思いを秘めて日本の新聞社で働いていた。ある時、彼女のもとに、匿名FAXで大学新設計画に関する極秘情報が届く。真相を究明すべく、吉岡は調査に乗り出す。一方、内閣情報調査室の官僚・杉原(松坂桃李)は、現政権に不都合なニュースをコントロールする任務を命じられ、葛藤していた。そんな中、尊敬するかつての上司・神崎(高橋和也)と久々に再会するが、その数日後、神崎は投身自殺をしてしまう。真実に迫ろうともがく吉岡、政権の暗部に気付き選択を迫られる杉原。2人の人生が交差するとき、ある事実が明らかになる。