『キャッシュトラック』ホリホックハウス(アメリカ〜ロサンゼルス)
フランク・ロイド・ライトがLAで手掛けた最初の作品

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『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のガイ・リッチー監督が、ジェイソン・ステイサムを主演に迎えたクライム・アクション。1億8,000万ドルの大金を狙う強盗を相手に現金輸送専門の警備会社に雇われた“H”ことパトリック・ヒルの戦いを描いた本作は、2004年のフランス映画『ブルー・レクイエム』のリメイク版ですが、オリジナル版の主人公がさえない中年男だったのに対し、ガイ・リッチー版では凄腕のタフガイとなり、これぞジェイソン・ステイサム!な華麗なアクションを見せてくれます。
劇中では、人気のない道路や警備会社の中など、特徴的なランドマークは映らなかったものの、舞台となったLAにはもちろん有名な建築物が多くあります。強盗の襲撃を受けたオールド・チャイナタウンから車で15分ほどの距離にある「ホリホックハウス」もその一つ。イースト・ハリウッドの小高い丘の公園バーンズドール・アートパークに建つここは、モダニズム建築の巨匠フランク・ロイド・ライトがロサンゼルスで最初に手掛けた作品で、1919年から1921年、石油資産家の娘、アリーン・バーンズドールの私邸として建設されました。“ホリホック”とは、施主が好きなホリホック(立葵)の花のことで、ライトは外観や内部の窓、家具など至る所にこのモチーフを使用しています。
自然との調和を目指したライト建築の特徴である有機的建築は、このホリホックハウスにも生かされています。外部に面した窓は強い陽ざしを考慮して数は少なく、反面、涼しく緑豊かな中庭に面する部屋には大きなガラスのドアを多用したほか、ライト建築に欠かせない暖炉の前には水を張った堀を作るという遊び心も。2019年には、このホリホックハウスをはじめグッゲンハイム美術館、落水荘など8つの建物がフランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群として世界遺産に登録されました。ロサンゼルスには、エニス邸やミラード邸などライトがデザインした邸宅がほかにもありますが、見学が可能なのはこのホリホックハウスだけ。訪れた際には彼の細部にいたるこだわりをご鑑賞ください。