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アーキテクト・イン・シネマ 〜映画に観る建築・住まい・家族〜

『ザ・ミスフィッツ』
  • 『ザ・ミスフィッツ』
  • 『ザ・ミスフィッツ』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売元:クロックワークス
  • ■販売元:ハピネット・メディアマーケティング
  • ■価格:Blu-ray+DVD \5,720(税込)
  • 監督:レニー・ハーリン
  • 出演:ピアース・ブロスナン
    マイク・アンジェロ
    ハーマイオニー・コーフィールド
    ジェイミー・チャン
    ティム・ロス
    ニック・キャノン ほか
 

(C) 2020 Film Gate Productions FZ LLC. All Rights Reserved.

彼らに盗めないものはない!

■Introduction

『ダイ・ハード2』『クリフハンガー』などを手掛けたレニー・ハーリンが監督を務めた本作は、正義の犯罪プロ集団と過激派テロリストの世界を股に掛けただまし合いを描くアクションエンターテインメント。主演は、5代目ジェームズ・ボンドのピアース・ブロスナン。そのほか、『レザボア・ドッグス』のティム・ロスや『エンジェル・ウォーズ』のジェイミー・チャン、『スターウォーズ 最後のジェダイ』のハーマイオニー・コーフィールド、『デイ・オブ・ザ・デッド』のニック・キャノンなど豪華キャストが集結。タイ出身の兄弟アイドルデュオ“ゴルフ&マイク”として日本でも活躍していたマイク・アンジェロの出演にも注目。

■Story

“変装のエキスパート”のリンゴ(ニック・キャノン)、“クレイジーボマー”ウィック(マイク・アンジェロ)、“バトルマスター”バイオレット(ジェイミー・チャン)たちは、すご腕の犯罪プロフェッショナル集団「ミスフィッツ」。彼らは、極悪人をだまし大金を盗み出しては、弱者に分け与えてきた。そんな彼らが挑むのは、中東の砂漠に隠された最強セキュリティの私営刑務所に秘蔵された金塊の奪還。しかし、一筋縄ではいかないと悟った彼らは、ある男に目をつける。伝説的な盗みのスペシャリストで一匹おおかみのリチャード・ペイス(ピアース・ブロスナン)だ。ミスフィッツは彼を半ば強引に勧誘し最強のドリームチームを結成、刑務所に潜り込んでいく。

『ザ・ミスフィッツ』
シェイク・ザイード・グランド・モスク(アブダビ〜アラブ首長国連邦)

絢爛(けんらん)華麗な白亜のモスク


                    絢爛(けんらん)華麗な白亜のモスク

『ダイ・ハード2』のレニー・ハーリン監督が、『007』シリーズのピアース・ブロスナンを主演に迎えたクライム・アクション。悪人から大金を盗み弱者に与える義賊集団「ミスフィッツ」。彼らはテロリストの資金源となっている金塊を強奪するために、最強セキュリティを誇る私営刑務所の潜入を企てます。アラブ首長国連邦(以下、UAE)のエキゾチックな街並みを背景に、爆発シーンや高級車でのカーチェイス、迫力満点のアクションなど娯楽要素がたっぷり。首都アブダビを代表する建物シェイク・ザイード・グランド・モスクは、その美しさで映画に華を添えます。

UAEの初代大統領シェイク・ザーイド・ビン・スルターン・アール・ナヒヤーンの名前を冠したシェイク・ザイード・グランド・モスクは、1996年に着工し、2007年に完成しました。総工費約550億円をかけて造られたモスクは、礼拝堂の3つの大ドーム、中庭の四隅のミナレット、回廊各所のドームと柱で構成され、その規模は世界最大級を誇っています。「unites the world(世界をひとつに)」をテーマに、職人と建築資材をイタリアやモロッコ、中国、ギリシャなど世界各国から調達。約40,000人を収容する広さを持つモスクは、伝統的なイスラム建築の様式をベースにしながらも、柱の文様など現代的な手法も取り入れられています。

花と植物を組み合わせた手彫りの柱の装飾や、ひとつひとつ手縫いで作られた世界最大のペルシャじゅうたん、24金でできたスワロフスキーのシャンデリアなど、ぜいを尽くした内装は絢爛(けんらん)豪華でため息が出るほどの美しさです。通常モスク内部は異教徒には公開されていませんが、こちらは観光客も見学は可能。ただし、厳格なドレスコードがあるので見学の際はご注意ください。

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『ドリームプラン』
  • 『茜色に焼かれる』
  • ■発売日:DVD&Blu-ray発売中
  • ■発売元:朝日新聞社、RIKIプロジェクト
  • ■販売元:ハピネット・メディアマーケティング
  • ■価格:Blu-ray \5,280(税込) DVD ¥4,290(税込)
  • 監督:石井裕也
  • 出演: 尾野真千子
    和田庵
    片山友希
    オダギリジョー
    永瀬正敏 ほか
 

©2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ

悪い冗談みたいなことばかり起きるこの世界で
母ちゃんも、僕も、生きて、生きる。

■Introduction

『舟を編む』で、日本アカデミー賞最優秀作品賞や最優秀監督賞、芸術選奨新人賞(映画部門)など国内の映画賞を受賞した石井裕也監督が、コロナ禍で社会的弱者になった一組の母子を描く。主人公の田中良子役には尾野真千子、良子の息子役には『ミックス。』「隣の家族は青く見える」の和田庵、交通事故で命を落とす夫役にはオダギリジョー、良子の同僚役にドラマ「セトウツミ」で注目を集めた片山友希、そして良子が働く風俗店の店長役には永瀬正敏、と演技派俳優が顔をそろえる。尾野は、本作で第95回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞、第76回毎日映画コンクール女優主演賞、第43回ヨコハマ映画祭主演女優賞など主要映画賞を多数受賞した。

■Story

7年前、理不尽な交通事故で夫を亡くした田中良子(尾野真千子)。彼女は夫への賠償金は受け取らず、施設に入院している義父の面倒、さらに夫が浮気相手に生ませた子の養育費まで払っている。ただでさえ、苦しい家計だったが新型コロナウイルスがさらに追い打ちをかけ、良子が切り盛りしていたカフェの経営が破綻し、花屋のパートタイムだけでは生活が成り立たず、風俗店で働くことを余儀なくされる。良子は、生きづらい世の中の逆風にさらされながらも、13歳になる息子・純平(和田庵)の前では胸に秘めた哀しみや怒りを見せずに気丈に振る舞っていた。しかし、息子は息子で学校でいじめに遭っていて…そんな過酷な現状でも、良子と純平が最後まで絶対に手放さなかったものとは?

『茜色に焼かれる』

格差社会でもがく母の秘めた情熱と生きざま

厚生労働省の調査によると、母子世帯数は約123万2000世帯(父子世帯数は18万7000世帯)※1で、彼女たちの年間平均収入は約231万円※2。パートなど非正規雇用のため、なかなか収入が上がらない中、彼女たちの生活をさらに新型コロナウイルスが追い打ちをかけています。そんな厳しい一人親家庭の現状を尾野真千子主演で真っ向から描いたのが、『舟を編む』などで知られる石井裕也監督の『茜色に焼かれる』です。

理不尽な交通事故で夫を亡くした田中良子(尾野真千子)。彼女は中学生の息子・純平を育てていますが、その生活はなかなかに厳しく、花屋のパートのほかに夜の仕事も掛け持ちしています。2人の生活だけでも精いっぱいなのに、施設に入院する義父の面倒や、夫の養育費の肩代わりもしている状況。どうやっても首が回らないはずなのに、良子は「まぁ、頑張りましょう」と穏やかにほほ笑みます。2019年に起きた「池袋暴走事故」をほうふつさせる事故で夫を亡くし、コロナで自身が営んでいるカフェも畳まざるをえず、息子の純平は家庭環境をからかわれいじめられ…と出口が見えない状況に、こちらも暗たんとした気持ちになります。しかし、最愛の息子を心のよりどころにし、理不尽な状況に置かれても、自分の信念の下に淡々とやり過ごし前へ進む母と、父が残したさまざまなジャンルの書物を糧に真っすぐに成長していく息子。そんな2人と良子の同僚ケイの姿は、私たちの目を捉えて離しません。

かつて演劇に傾倒していたという田中良子が、胸に秘めている情熱を爆発させる映画のクライマックスは、思わず笑ってしまうほど、ギラギラ輝いていて生命力に満ちています。格差社会の下層で必死にもがく人間たちを照らす夕日の美しさが心に染みる、コロナ禍の“今”見てほしい良作です。

※1 厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」
※2 厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査」2018年度 各種世帯の所得の種類別1世帯当たり平均所得金額及び構成割合