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Monthly FACE 〜極める人々〜

奥村仁幸さん(アクセサリーデザイナー)

Profile

1985年生まれ、和歌山県出身。アクセサリーブランド「Nico(ニコ)」デザイナー。専門学校ヒコ・みずのジュエリーカレッジ アートジュエリーコースを卒業した翌2008年、同ブランドを立ち上げる。アクリルの中に花やパールなどを入れたアクセサリーのほかに、コーヒー豆などをモチーフにした独創的なアクセサリーを発表している。

Nico オフィシャルサイト

「自然を感じられる」作品を

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「自然を感じるアクセサリー」をテーマに、オリジナル性あふれる作品づくりを行なっている奥村さん。2008年に立ち上げたブランド「Nico(ニコ)」では、バラなどの花やパール、黒コショウ、パセリなど自然由来のものをアクリル(樹脂)で包み込んだアクセサリーが代表作として知られており、都内のデパートやセレクトショップなどで販売されています。また、最近は水原希子さんや平子理沙さんらをはじめとする著名人が、雑誌やテレビ番組で「Nico」のアクセサリーを身に付けるなど、徐々に露出が増加。今後の活躍を期待される若手デザイナーとして、注目を集めています。

イメージ 「現代では、忙しい毎日を過ごす人が多く、ちょっと立ち止まって花を見たり、空を見上げたりという、昔は当たり前だったことができない時代になっているように思います。僕がアクセサリーをつくる時に自然由来の素材を多く使っているのは、そういう自然と触れ合うことの心地よさや素晴らしさを思い出し、感じてもらいたいから。
たとえば、デスクワークで一日中会社にいる場合などに、僕のアクセサリーを見ることで心を安らげることができればうれしいです。僕自身、世界遺産の熊野古道がある、和歌山県の新宮市という自然に囲まれた町で育ったこともあり、自然との触れ合いを大切にした作品づくりを心掛けています」

「僕、すごい頑固なんですよ」

イメージ 作品をつくる上でこだわっているのは、「ハンドメイド」。工場には出さずに、作品づくりにおけるすべての工程を奥村さん一人で行なっています。

「よく『人に頼めばいいのに』と言われるのですが、最後まで自分でやりたいんです。そこはもう、すごい頑固なんですよ。工場に出した場合、量産する力はすごいと思うんですが、きれいに仕上がり過ぎてしまうというか。たとえば『Nico』の指輪をつくる場合は、きれいな真円をつくらずに、あえて凹凸(おうとつ)を付けるなどして、ハンドメイド感を演出しているんです。そのほうが『世界に一つ』という特別感を感じてもらえますし、つくり手の意志も作品に表れると思っています」

 

イメージ ハンドメイドにこだわっていることもあり、一日につくれる作品の数は2〜3つが限度。一つひとつの作品に魂を込めてつくりあげます。「ブランドを大きくする上では足かせとなる部分」と話しながらも、そのこだわりについて次のように話します。

「お気に入りの作品に出会えてお客さまが喜んでくれるのが、一番のやりがい。百貨店などで期間限定の特別ショップを開く時は、僕自身が接客することもあるんですが、自分でつくっているのとそうでないのとでは、お客さまとの触れ合いの中で感じることや、伝えたいことがちがってくると思うんです。 あとは、技術的な問題ですね。アクリルを使ったアクセサリーの場合、中に入れるものによっては素材が浮いてきてしまうこともあるので、3層に分けてつくっているんです。1回目は下の部分、2回目は真ん中、3回目は上、という具合に。作品によって、一つひとつの素材のレイアウトも変わってくるので、バランスを見ながらやっています。そこを妥協してしまうと、身に付けた時の美しさが全然ちがってしまうんです。そういう自分だけの感覚もあるので、なおさら人には任せたくないというか。頑固ですよね(笑)」

世界中に作品を届けたい

イメージ「日経MJ」などの全国メディアに紹介され、一躍注目を集めたアクリルシリーズですが、新作への挑戦は常に忘れません。新たな素材と向き合い、試行錯誤を重ねる日々。その生みの苦労を話します。

「2010年からは、アクリル以外にシルバーなどの金属や石を使った作品を発表し始めましたが、新しいものをつくる時は失敗がつきもの。一回で思い描いたものができたことはありません。今年に入って完成したアクリルシリーズの最新作では、口紅やマニキュアなどの化粧品を中に入れる素材として使いましたが、何度も何度も失敗して……。それでもあきらめずに挑戦し続けたのは、『いいものができる』と信じていたから。直感的な部分が強いので言葉にするのは難しいですが、確信めいたものが頭の中にあるんです」

今年の4月には山梨からアトリエを移転する「Nico」。日本ファッションの最先端である東京で、自らの道を切り開いていきます。

イメージ 「将来的には、『Nico』を世界に通用するようなブランドにしていきたい。そのためにも、まずは東京に拠点を移して活動していこう、という思いです。自分がつくったもので人が喜んでくれたり、人に認めてもらえるのはとても幸せ。日本に留まらずに、世界中の人にその輪を広げていきたいです」

量産品があふれる時代に、ハンドメイドにこだわる奥村さん。時代の流れとは逆行したその姿勢が作品への注目を集め、世界中に広がろうとしています。

(取材・文/石川裕二)


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