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Monthly FACE 〜極める人々〜

奥本祥子さん(アクセサリーデザイナー)

Profile

東京都出身。早稲田大学卒業後にジュエリーデザインを学び、企業のジュエリーデザイナー職を経て独立。2006年、ハンドメイドのフェルトアクセサリーのブランドとして「Alchemilla(アルケミラ)」を立ち上げ。その後発表した、本物の花を使ったアクリルアクセサリーで注目を集める。

原点はシロツメクサの花冠

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「花とアクリル」「フェルトと金属」など、異素材同士の融合をコンセプトに掲げるアクセサリーブランド「Alchemilla(アルケミラ)」。デザイナーの奥本祥子さんによるオリジナリティあふれる作品は、これまで数々の雑誌やファッションモデルのブログなどで紹介され、注目を集めてきました。代表作とも言えるのが、本物の押し花やドライフラワーをアクリルなどの樹脂で包み込んだシリーズ。

「儚さの象徴でもある花を樹脂に閉じ込めて、その美しさを半永久的なものにすることに魅力を感じたんです。結婚式などがその代表的な一つですが、女性にとって花を身に付けるというのは、特別で、ぜいたくで、とても幸せを感じられる瞬間。本物のお花を素材にしたアクセサリーをつくることには、以前から興味を持っていました。『Alchemilla』というブランド名も、バラ科の植物『アルケミラ・モーリス(羽衣草)』が由来なんです」

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現在、花の仕入れや押し花への加工など、ほぼすべての作業を一人で行なっている奥本さん。そんなフラワーアクセサリーが生まれた背景には、子どもの頃のある思い出が原風景として存在します。

「小さい頃、シロツメクサを摘んで花冠をつくっていたんです。でも、その花がだんだん枯れていってしまうのを見て、『これがずっと使えたらいいのに』と子どもながらに寂しく感じてしまって。その頃の感情が、無意識に作品のイメージとして浮かび上がってきたのかもしれません」

自分のイメージを形にしたい!

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デザイナーとしての出発点は、大学生の頃でした。「美術史学科」に在籍し、美術の歴史を学んでいた奥本さんが卒業論文のテーマに選んだのは、19世紀から20世紀に掛けて活動していたガラス工芸家・ジュエリーデザイナーのルネ・ラリック。研究のために企画展などに足を運ぶ中で作品の実物を目にし、ジュエリーの魅力に惹かれていきます。当時から、自作のアクセサリーをつくっていたことも手伝い、大学卒業後にはジュエリー・アクセサリーの専門学校へ進学。ハイジュエリーやシルバージュエリーのデザインを基礎から学び、ジュエリー会社に就職します。その後は、会社で求められるものとは異なる「自分自身のデザイン」を形にしようと、独立して「Alchemilla」を立ち上げました。

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「特別な日に付けるジュエリーの魅力もありますが、気軽に毎日身に付け・楽しむことのできるアクセサリーに興味が移っていったんです。それで、アクセサリーを毎日楽しむには軽いものがいいなと思い、フェルトなどを使った作品をつくり始めました。軽い素材のものなら、大きなモチーフでも気軽に身に付けられるじゃないですか。デザインにはもちろんこだわっていますが、ストレスを感じさせないアクセサリーであることが、その女性の魅力をより引き出すための大事なポイントだと思います」

ストレスを感じさせないアクセサリー

「ストレスを感じさせないアクセサリー」。その考えは、奥本さんが今年の3月に新しく発表したシリーズ「コンフォタブル・イヤリング」にも色濃く反映されています。同シリーズは「イヤピア(イヤリング&ピアス)」「ノンホールピアス」とも呼ばれる、ピアスのように見えるイヤリングを奥本さん独自の感性でつくり上げたもの。

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「ピアスによるかぶれや金属アレルギーを起こしてしまう方って、少なくないんです。私自身もそれでイヤリングを付けていたんですが、なかなかいいデザインのものがなかったり、デザインがすてきでも長時間付けていると痛くなってしまったり……。イヤリングはネジやバネなどで耳を挟んで固定しているので、どうしても体に負荷が掛かってしまうんです。

『コンフォタブル・イヤリング』なら、環状のすき間を調節することで固定しているので、バネ式のイヤリングにありがちな耳の痛みを気にせず、オシャレを楽しむことができます。また、ゴールドのメッキは、アレルギーの原因になりやすいとされるニッケルを使わず、金のみでコーティングするなど試行錯誤を重ね、肌への優しさを追求しました」

ストレスフリーなデザインはもちろん、付け替え可能な専用チャームの豊富さなど、幅広い年代の女性から支持を集める同シリーズ。奥本さん自身が売り場に立つと、「『こういうものを探していた』という声を耳にします」。

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「我慢してオシャレをする時代から、心地よさとファッション性の両方を求める時代に変わってきたと思うんです。好きな服を着れば幸せな気分になれるし、気持ちも高まる。そんなオシャレの楽しさを邪魔しないアクセサリーをこれからもつくっていきたい。そうして私のつくった作品が何十年・何百年と経った時にどこかの蚤の市で売られていたり、親から子へ、子が孫へ…という風に、時代を超えて使い続けられる『未来のアンティーク』になれば幸せです」

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