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今月のオススメの一冊

ル・コルビュジエの世界

『ル・コルビュジエの住宅 3Dパース全集』

ル・コルビュジエの住宅 3Dパース全集 コンクリートや鉄筋によって可能となった新しい建築、モダニズム建築を提唱し、「近代建築の五原則」を主張した、“近代建築の三大巨匠”の一人、ル・コルビュジエ。本書では、彼が設計した住宅26軒を解説し、そのうち22軒については、平面図、断面図、立体図のほか、断面パース(透視図)を掲載しています。断面パースは実物を活写する画法で描かれ、線だけのパースに陰影をつけることで、建築物の空間の奥行きを立体的に読み取ることを可能にしています。さらに、色彩や質感が省かれている分、空間を囲う基本的な形がくっきりと浮かび上がり、全体の階層構造内における空間の相互関係を明らかにしています。また、建築物は年代順に掲載されているため、ル・コルビュジエの住まいに対する建築哲学や技術の変遷をたどることもできます。建築を学ぶ人にとって、三次元の図面で住宅を研究することで、建築物を思い描く能力を発達させ、磨き上げる助けとなるでしょう。

『ル・コルビュジエの住宅 3Dパース全集』 ル・コルビュジエの住宅 3Dパース全集

『ル・コルビュジエは生きている―保存、再生そして世界遺産へ』

ル・コルビュジエは生きている―保存、再生そして世界遺産へスイスで生まれ、主にフランスで活躍したル・コルビュジエが残した建造物の「その後」をドキュメンタリー風に描いたユニークな一冊。築200年の建物が一般家庭で現役として使われているようなフランスでは、建築遺産に対する意識が非常に高いといいます。ル・コルビュジエが設計した建造物も数多く残っていて、その保存と活用の仕方をめぐる議論も活発なのだとか。建造物の構造だけではなく、その建造物そのものが地域にどう受け止められ、受け入れられていったのかを追いかけます。また、本書に大きな説得力を持たせているのは、要所に掲載された多数の現地写真。著者の長い滞在経験を生かし、展覧会やシンポジウム、文献を通じて、現地フランスではどのような取り組みが行われていたのかが詳細に、臨場感たっぷりに描かれています。困難に直面しながらも、今もなお使われ続けている現状や、フランスの「建築文化」とはどのようなものなのか、など、ル・コルビュジエ建築を取り巻く昔と今を追体験できる貴重な作品です。

『ル・コルビュジエは生きている―保存、再生そして世界遺産へ』ル・コルビュジエは生きている―保存、再生そして世界遺産へ
  • ■発行:王国社
  • ■著者:南明日香
  • ■価格:¥1,995(税込)


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