国際ニュースの身近さ気付いて
歴史・経済・政治・文化などの幅広い知識を持ち、人々にわかりやすい丁寧な解説などで支持を集めるジャーナリストの池上彰さん。その池上さんが解説を務めるテレビ番組『池上彰のワールドニュース深読みスペシャル』(BSテレビ局/Dlife)が、4月5日(土)・6日(日)に2夜連続で放送されます。
同番組は、イギリスの公共放送局であるBBC(英国放送協会)が、世界各国に向けて放送している「BBCワールドニュース」から、この1年で報道された海外ニュースをピックアップし、池上さんが解説。ニュースの背景や本質を深く掘り下げることで、これからの未来を見通すというものです。
今回、番組では世界の安全保証、経済問題などの世界情勢を紹介。若い年代には敬遠されがちなテーマではありますが、池上さんは「国際ニュースは一見、遠くて難しい話に思えますが、解きほぐしていくと身近であることがわかるんです」と話します。
「遠い世界の難しい話と思っていることも、きちんとわかりやすく説明していくと、そんなことないんですよ。わかりやすいし、実は身近なものなんです。それを、みなさんに知ってほしい。私はその案内役ですね。私はこの番組で国際ニュースの読み解き方の一つの方法をご提示しました」
“わかりやすい解説”で、テレビ各局から引っ張りだこの池上さん。人に何かを伝える際に意識しているのは、「相手のことを考えること」だと言います。
「“伝える”と“伝わる”は違うんです。みんな、伝えることばかり考えていますけど、“伝わる”とはどういうことなんだろうと考えた時に、たとえば今なら『ウクライナ情勢が大変だよね』と興奮して言っても、相手にはピンとこないわけです。じゃあ、どうやってその人に関心を持ってもらうか。これは番組スタッフとの会話の中でも話題になったんですが『どうしてウクライナには美人が多いのか』と(笑)。真面目な話をしますと、ウクライナという国はそもそも豊かな穀倉地帯なんですね。ウクライナの国旗を調べてみてください。上半分が青で、下半分が黄色なんです。これは、青空の下で育った小麦畑をイメージしているんですね。それくらい、豊かな土地なんです。だから、周りの国々がその土地を欲しがる。
その結果、しばしば侵略されることによって混血が進んだ。そうすることで、結果的に美女が生まれやすいということになってくる。入り口は『美女が多い』という話題でしたけど、豊かな土地だったからこそ侵略を受けてきたという悲しい歴史がある…そういうお話なんですね」
「おもしろい!」を伝えるために
広く、深い知識を持ち合わせる池上さん。新聞は8紙購読し、外出時はさらに2紙を購入。さまざまなニュースを知った上で「このニュースは、背景に何があるんだろう」と、関連書籍などを読んで勉強していると言います。そこで、池上さんが情報をインプットする(取り込む)際には、どんなことをポイントにしているのか聞きました。
「一生懸命勉強していても、『これは何の役に立つんだろう』と思ってしまうと、勉強する気がなくなってしまうでしょう? でも、たとえば私であれば『このことを、おじいちゃん・おばあちゃんにわかるように伝えよう』とか『子供にうまく伝えるには、どうすればいいか』ということを考えながら勉強すると、すっと頭に入ってくるんですよ。つまり、頭の中で整理されているんですね。結局、アウトプット(外に出すこと)があってのインプットだと思うんです」
さらに、池上さんは「これまでわからなかったことがわかると、おもしろい」と続けます。
「今回の番組『池上彰のワールドニュース深読みスペシャル』で言えば、国際問題や経済問題…一見難しそうですが、一生懸命勉強したらわかってくるんです。『あ、やったぁ!』と思うわけです。そうするとね、今度はそれを人に伝えたくなるんです。ただ、『これってこうなんだよ』ではなくて、自分自身が感じた『あ、こういうことか! おもしろい!』っていう感覚を相手に味わってほしい。そのためには、どうやって説明・プレゼンテーションすればいいかなというのを考えるんです。おもしろさを伝えるにはどうすればいいか、ということですね。…だいぶ手の内を明かしてしまいました(笑)」
“わかること”はミステリー小説に似ている
日々、膨大な量の情報と向き合う池上さんのリフレッシュ方法は「寝ること」。通常は、1日5~6時間ほどの睡眠時間を取っているそう。
「あまり寝ないんです。でも、新幹線や飛行機の移動中に寝て、睡眠不足を解消しています。勉強というか、調べものばかりしていてストレスが溜まらないかと言う人もいるんですが、むしろストレス解消になるんです。新しいことが次々に入ってきて『おもしろい!』と思えるんですから。そこからさらに、人に伝えて『へぇ~、そうだったんだ!』なんて言ってくれると、疲れがふっと取れるんです」
そんな池上さんが解説役を務める「池上彰のワールドニュース深読みスペシャル」。その見所について、次のように話します。
「日本のテレビが伝えているニュースというのは、日本の視点しか出てこないんです。国際ニュース自体が非常に少ない。報道があっても『遠い国で何か起きてるらしいよ』という伝え方が多い。でも、BBCであればイギリスから見たヨーロッパの姿…日本のニュースとはまったく違うものが見えてくる。そこで、日本と海外という、複眼的な視点を持つことができると思うんです。 たとえば、パンの価格が上がったとしますよね。何でだろうと調べていくと、海外の人口増加や食生活の欧米化がつながっていたり、とうもろこしなどを原料とした“バイオ燃料”の需要が高まったことで小麦畑がとうもろこし畑になったことが原因だったりと、世界がつながっていることがわかるんです。“わかる”ことってね、質のいいミステリー作品を読んでいるような感覚なんですよ。謎解きというのかな、大変おもしろいと思うんです。同時に、国際ニュースを知ることで、もっと視野を広げてほしい。その一助になれればと思っています」