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アーキテクト・イン・シネマ 〜映画に観る建築・住まい・家族〜

大統領の執事の涙
  • 大統領の執事の涙
  • 『大統領の執事の涙』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
  • ■販売元:アスミック・エース(販売協力:KADOKAWA 角川書店)
  • ■価格:¥3,800+税
  • 監督:リー・ダニエルズ
  • 出演:フォレスト・ウィテカー オプラ・ウィンフリー ジョン・キューザック 他
 
 

(C) 2013, BUTLER FILMS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ホワイトハウス<ワシントンD.C. 〜アメリカ>

世界の政治経済の中心地


ホワイトハウス(ワシントンD.C. 〜アメリカ)

(C) Tupungato - Fotolia.com

アメリカの首都ワシントンD.C.に堂々と佇むホワイトハウスは、アメリカの政治・経済を担う場所であり、言わずと知れた世界政治の中心地。それだけにホワイトハウスはこれまで数多くの映画に登場し、その主である大統領のさまざまな姿が描かれていますが、本作では1950年代後半から80年代にかけて7人の大統領に仕えた執事・セシルの目を通して、ホワイトハウスや大統領たちの意外な姿を見ることができます。

アメリカ大統領の住居であり仕事場であるホワイトハウスが着工されたのは、初代大統領ジョージ・ワシントン時代の1792年のこと。重厚なフェデラル様式の大統領府は1800年に竣工されたものの、その前年にワシントンが没したため、第2代大統領であるジョン・アダムスが最初の主となりました。以降焼失による再建や増築を経て現在の第44代大統領バラク・オバマに至るまで、200年以上の間アメリカの心臓として機能しています。

ホワイトハウスは、大統領の公邸である地上3階・地下3階のエグゼクティヴ・レジデンスをはじめ、ウエストウイング、イーストウイング、アイゼンハワー行政府ビルの4つの建物と4つの庭で構成されています。映画によるとホワイトハウスでは6人の執事、16人のメイドのほか料理人、ドアマン、大工、塗装工など約90人のスタッフが大統領の身の回りの世話やホワイトハウスの維持管理にあたっており、ウエストウイングのオーヴァルオフィス(大統領執務室)ではセシルが大統領にお茶を給仕する場面がたびたび見られます。ちなみにこのオーヴァルオフィスは、大統領が変わるたびに模様替えがされており、就任式が行われている2時間の間に新大統領の調度品に変更するのだとか。各大統領の個性あふれるインテリアを垣間見られるのもこの映画ならではの楽しみです。

キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争などアメリカの激動の歴史と公民権運動に揺れる家族の絆、ホワイトハウスの執事にまで登りつめたセシルのサクセスストーリーと描かれる3つの濃厚なドラマは、アメリカの近代史を知る格好の教科書と言えるでしょう。

『彼は、見ていた。』 ■Introduction

映画『プレシャス』でアカデミー賞に輝いたリー・ダニエルズ監督が、1950年代から1980年代にかけて8期の大統領の元に仕えた人物の実話をベースにして描いた感動のヒューマンドラマ。主人公である執事、セシル・ゲインズを演じるのは、アカデミー賞主演男優賞受賞の名優フォレスト・ウィテカー。セシルを支える妻グロリアには、アメリカを代表する名司会者のオプラ・ウィンフリーが選ばれた。そのほか、ジョン・キューザック、アラン・リックマン、ロビン・ウィリアムズなどアカデミー賞常連の俳優陣が集結した。

■Story

黒人差別が日常で行われていた時代のアメリカ南部。セシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)は、幼い頃にある事件で親を失い、家働きの下男として雇われていた。努力の末に、高級ホテルのボーイになったセシルはその仕事ぶりが認められ、ついにはホワイトハウスの執事となる。ホワイトハウスの執事として求められるもの、それは“空気になる”事だった。国を揺るがす重要な会議に立ち会えば、存在を消して仕事をこなし、大統領から質問をされれば、「求められる回答」で答える。そんな大統領の執事でありながら、夫であり父であったセシルは、家族と共にその歴史に翻弄されていく。

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I am Sam アイ・アム・サム
  • I am Sam アイ・アム・サム
  • 『I am Sam アイ・アム・サム』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売・販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
  • ■価格:¥1,429+税
  • 監督:ジェシー・ネルソン
  • 出演:ショーン・ペン ミシェル・ファイファー ダイアン・ウィースト ダコタ・ファニング 他
 
 

(C) 2001 New Line Productions, Inc.

人と人がつながることで変わる世界

名優ショーン・ペンが知的障害者という難役を見事に演じきり、2001年のアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた映画『I am Sam アイ・アム・サム』は、知的障害のある男性サムが児童福祉局により引き離された愛娘ルーシーと再び一緒に暮らすための戦いの記録です。一途に娘を想うサムの純粋な心と、そんな父を慕うルーシーの姿が深い感動を呼ぶ作品ですが、同時に観る人の立場によってさまざまな感じ方ができる作品かもしれません。

親子が一緒に暮らすことは生活の根本ではあるけれども、娘が父の知能を超えていくというサム親子の現実を前に、果たしてそれが正しいのかをこの映画は問いかけます。娘と一緒に暮らしたいと一途に願うサム、虚栄心から彼の弁護を引き受けてしまうヤリ手の弁護士リタ、サムの養育能力を疑う児童福祉局と検事、ルーシーの里親、サムとルーシーを見守る友達たち…。映画に出てくる人々は誰もがルーシーの将来を案じているだけに、サムのおよそ勝ち目のない戦いにはときに胸が締め付けられるような息苦しさを覚えます。

人と人が出会い一つの目的に向かって進むとき、思いもよらぬ化学反応をもたらすことがあります。豪華なホテルのような家に住み仕事もバリバリとこなすリタは、一見すべてを手に入れているようですが、実は家族とうまくいっておらず劣等感にさいなまれている女性。そんな彼女は、駆け引きなしにただまっすぐに娘のことを思うサムと接するうちに、次第に母親としての顔を見せ始め、サムもまた信念の人リタとの話し合いの中で父親としての自覚が芽生えていくのです。

親、子供、そして健常者、障害者、親子を取り巻く社会の一人として。「親子の愛情」をテーマにした本作は、家族や社会との関わり方、生き方などさまざまなことを改めて考えさせてくれるでしょう。彼らはどんな答えを出したのか。ラストシーンで映し出されるそれぞれの顔が印象的です。

『いっしょなら、愛は元気。』 ■Introduction

知的障害のある父親と幼い娘との純粋な愛をビートルズの名曲とともに描いた感動のドラマ。映画『ツリー・オブ・ライフ』のショーン・ペンが主人公のサムを演じ、第74回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。また、娘のルーシー役に抜擢されたダコタ・ファニングは放送映画批評家協会賞、ゴールデン・サテライト賞、ラスベガス映画批評家協会賞、ヤング・アーティスト賞を受賞、映画俳優組合賞の助演女優賞に最年少でノミネートされ、本作でブレイクを果たした。

■Story

知的障害のある中年男性・サム(ショーン・ペン)は、1人で愛娘のルーシー(ダコタ・ファニング)を育てている。ルーシーの母親は彼女を生んですぐに姿を消してしまったが、理解ある人々に囲まれて2人は幸せに暮らしていた。しかし、ルーシーが7歳になる頃、家庭訪問に来たソーシャルワーカーが、サムにはルーシーを養育する能力がないと判断する。このままではルーシーを奪われてしまうと考えたサムは、彼女を取り戻すため敏腕弁護士のリタ(ミシェル・ファイファー)の元を訪ねるが、あっさりと断られてしまう。

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