ホワイトハウス<ワシントンD.C. 〜アメリカ>
世界の政治経済の中心地

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アメリカの首都ワシントンD.C.に堂々と佇むホワイトハウスは、アメリカの政治・経済を担う場所であり、言わずと知れた世界政治の中心地。それだけにホワイトハウスはこれまで数多くの映画に登場し、その主である大統領のさまざまな姿が描かれていますが、本作では1950年代後半から80年代にかけて7人の大統領に仕えた執事・セシルの目を通して、ホワイトハウスや大統領たちの意外な姿を見ることができます。
アメリカ大統領の住居であり仕事場であるホワイトハウスが着工されたのは、初代大統領ジョージ・ワシントン時代の1792年のこと。重厚なフェデラル様式の大統領府は1800年に竣工されたものの、その前年にワシントンが没したため、第2代大統領であるジョン・アダムスが最初の主となりました。以降焼失による再建や増築を経て現在の第44代大統領バラク・オバマに至るまで、200年以上の間アメリカの心臓として機能しています。
ホワイトハウスは、大統領の公邸である地上3階・地下3階のエグゼクティヴ・レジデンスをはじめ、ウエストウイング、イーストウイング、アイゼンハワー行政府ビルの4つの建物と4つの庭で構成されています。映画によるとホワイトハウスでは6人の執事、16人のメイドのほか料理人、ドアマン、大工、塗装工など約90人のスタッフが大統領の身の回りの世話やホワイトハウスの維持管理にあたっており、ウエストウイングのオーヴァルオフィス(大統領執務室)ではセシルが大統領にお茶を給仕する場面がたびたび見られます。ちなみにこのオーヴァルオフィスは、大統領が変わるたびに模様替えがされており、就任式が行われている2時間の間に新大統領の調度品に変更するのだとか。各大統領の個性あふれるインテリアを垣間見られるのもこの映画ならではの楽しみです。
キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争などアメリカの激動の歴史と公民権運動に揺れる家族の絆、ホワイトハウスの執事にまで登りつめたセシルのサクセスストーリーと描かれる3つの濃厚なドラマは、アメリカの近代史を知る格好の教科書と言えるでしょう。
映画『プレシャス』でアカデミー賞に輝いたリー・ダニエルズ監督が、1950年代から1980年代にかけて8期の大統領の元に仕えた人物の実話をベースにして描いた感動のヒューマンドラマ。主人公である執事、セシル・ゲインズを演じるのは、アカデミー賞主演男優賞受賞の名優フォレスト・ウィテカー。セシルを支える妻グロリアには、アメリカを代表する名司会者のオプラ・ウィンフリーが選ばれた。そのほか、ジョン・キューザック、アラン・リックマン、ロビン・ウィリアムズなどアカデミー賞常連の俳優陣が集結した。
■Story黒人差別が日常で行われていた時代のアメリカ南部。セシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)は、幼い頃にある事件で親を失い、家働きの下男として雇われていた。努力の末に、高級ホテルのボーイになったセシルはその仕事ぶりが認められ、ついにはホワイトハウスの執事となる。ホワイトハウスの執事として求められるもの、それは“空気になる”事だった。国を揺るがす重要な会議に立ち会えば、存在を消して仕事をこなし、大統領から質問をされれば、「求められる回答」で答える。そんな大統領の執事でありながら、夫であり父であったセシルは、家族と共にその歴史に翻弄されていく。