マチュ・ピチュ<クスコ〜ペルー>
若き革命家が思想を深めた、雲に浮かぶ空中都市

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黒のベレー帽をかぶった肖像でおなじみのチェ・ゲバラ。世界的な革命家の若き日を描いたこのロードムービーは、革命家の原点の記録であるとともに、未知の世界に目を輝かせる23歳の若者の青春映画でもあります。
本でしか知らない南米大陸をその目で見ようと、友人のアルベルトとともに中古のバイク“ポデローサ号”で4カ月をかけて、アルゼンチンから南米大陸の北端ベネズエラのグアヒラ半島を目指す約10,000kmの旅に出た23歳のエルネスト。途中、愛車を失い、持病のぜんそくに苦しみながらも旅を続ける中で、南米の豊かな自然と貧困にあえぐ人々を目の当たりにした2人は次第に現代社会への疑問を抱き始めます。1983年に世界遺産となったペルーのマチュ・ピチュでは、荘厳な景色を前にその思いをさらに強くするエルネストの姿が映し出されます。
標高2,280m、断崖の山を這うように登ると突然現れる“空中都市マチュ・ピチュ”。1911年、アメリカの歴史学者ハイラム・ビンガムによって発見されるまで、インカ帝国が建設したこの都市はスペインの侵略を受けることなく、400年もの間、長い眠りについていました。総面積は5平方km、その約半分の斜面には段々畑が広がり、狭い石畳の道や階段で結ばれた西側の市街区には日時計(インティワタナ)を頂点に、神殿や宮殿、住居が建てられています。曲線が美しい「太陽の神殿」をはじめ、見事な石積みの技術や都市全体に整備された水道設備は、インカ帝国の文明の高さを物語っています。
断崖絶壁のようなこの場所に、何十トンもの巨石をどのようにして運んだのか。今もなお湧水が出るという水路の水源はどこにあるのか。そもそも何のためにマチュ・ピチュは造られたのか。さまざまな解釈はあるものの、文字に残されていないため、詳しいことは謎のまま。雲海にそびえる荘厳な景色は私たちを惹きつけてやみません。
後に親しみをこめて“チェ”と呼ばれ、今もなお世界中から愛され続けているキューバの革命家チェ・ゲバラの知られざる青春の日々を描いた感動のロードムービー。主人公のエルネスト・ゲバラを演じたのは映画『バベル』や『ジュリエットからの手紙』に出演しているガエル・ガルシア・ベルナル。『セントラル・ステーション』のウォルター・サレスがメガホンを取る。カンヌ国際映画祭では、最高賞であるパルムドール にノミネートされた。
■Story1952年。23歳の医学生エルネスト・ゲバラ・デ・ラ・セルナ(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、頑強な肉体を持つ生化学者の友人、アルベルト・グラナード(ロドリゴ・デ・ラ・セルナ)と共にブエノス・アイレスにある自宅を出て、南米大陸を縦断するバイク旅行に出発する。アルゼンチンからパタゴニアへ、6,000メートルのアンデス山脈を抜け、チリの海岸線に沿って進み、アタカミ砂漠を通ってペルーのアマゾン上流から南米大陸の北端へ。金も、泊まるあてもなく、好奇心のままに10,000kmを走破する無鉄砲な旅を続ける2人だったが…。