『アール・デコ建築意匠 朝香宮邸の美と技法』
アール・デコ建築の世界的傑作とされる朝香宮邸。そもそもアール・デコ建築とは、20世紀の近代化する都市をエレガントに彩った装飾様式のことで、朝香宮邸にはその建築意匠がほぼ完全な形で残っています。朝香宮邸の建築を中心となって進めたのは施主の朝香宮夫妻。1922年から3年間にわたりパリに滞在していた夫妻が、1925年のアール・デコ博覧会において、主要パヴィリオンの室内装飾で手腕をふるったフランス人装飾美術家アンリ・ラパンを起用し、パヴィリオンさながらの“アール・デコの館”を東京の自邸として再現させたのです。日仏の至高の技が融合し、建物まるごとが超一級の美術品のような邸宅は、竣工から半世紀後の1983年に東京都庭園美術館として一般公開されました。東京都庭園美術館のオフィシャルガイドとして位置付けられている本書では、朝香宮邸の建築デザインを構成する「フランスのアール・デコ」と「日本のアール・デコ」について、豊富な建築写真と共に厳選された素材のマチエールや特筆すべき技法について明らかにしていきます。また、間取りや竣工時の家具の配置を記した平面図に加え、建築の仕様書など貴重な資料も掲載されています。
『図説 アール・デコ建築 グローバル・モダンの力と誇り』
「アール・デコはインターナショナルでモダンであるけれども、同時にナショナルで伝統的な要素を持つ大衆のものでもあった」と語る著者。本書の副題を「グローバル・モダンの力と誇り」としたゆえんは、「アール・デコ建築には民俗や土地のアイデンティティーの表現も託されており、文化運動的な側面もあったから」だといいます。本書では1930年前後に流行した「アール・デコ」と対蹠的な位置にある、1900年前後に流行した「アール・ヌーヴォー」についても触れ、両者の違いについてなども解説。なめらかで流れるような、非対称で自在な曲線的模様を特徴とするアール・ヌーヴォーに対して、幾何学的で定規やコンパスで描き得るようなジグザグ線、放射線、円弧模様の組み合わせなどを好んで用いるアール・デコ。それぞれの時代背景から、両者が流行した理由についてをひも解きます。また、ヨーロッパをはじめアジア、アフリカなど世界中のアール・デコ建築についても解析し、建物を写真付きで紹介。日本のアール・デコ建築においては、現在も横浜・山下公園に係留されている氷川丸の船内意匠や、1923年の竣工時、人々に衝撃を与えた帝国ホテルなどを取り上げて解説しています。